教育普及「技を極める―ヴァン クリーフ&アーペル ハイジュエリーと日本の工芸」 「ハイジュエリーが生まれる瞬間」対話とデザイン ワークショップ 実施報告
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「技を極める―ヴァン クリーフ&アーペル ハイジュエリーと日本の工芸」 「ハイジュエリーが生まれる瞬間」対話とデザイン ワークショップ 実施報告
「技を極める―ヴァン クリーフ&アーペル ハイジュエリーと日本の工芸」
「ハイジュエリーが生まれる瞬間」対話とデザイン ワークショップ
実施報告
- 日時
- 2017年7月9日(日)午前10時30分~12時/午後2時~3時30分
- 会場
- 京都国立近代美術館1階講堂
- 参加人数
- 午前の部:17名(見学2名)、午後の部:17名(見学2名)
ヴァン クリーフ&アーペルのデザイナー名和光道さんをお迎えし、ワークショップを開催しました。名和さんからのレクチャーとデモンストレーションの後、参加者はデザイン画をペンや絵の具で彩色し、ジュエリーデザインを体験しました。

レクチャーでは、名和さんが近年デザインされたネックレスについて、誕生秘話や完成までのプロセスをお話しいただきました。ヴァン クリーフ&アーペルのメゾンには宝石鑑定士がおり、彼らが長い年月をかけて石を探してくるのだそうです。たとえば今回のネックレスには、コロンビアで発見された約42カラットの9つの「エメラルド」が使われていますが、同じ色調の石を探すのに数年を費やしたとのこと。
また、デザインのインスピレーションとなったのは、女性服の丸襟や、18世紀末から19世紀初頭にかけて流行した「エンパイアスタイル」の装飾品だったそうです。今回、名和さんが実際に描いたデザイン画が特別に披露されました。光の当たり方によって石の輝きが微妙に変わる様子などが緻密に表現され、少し離れるとまるで本物のジュエリーのように見えることに、参加者からは驚きの声が上がりました。

興味深かったのは、ヴァン クリーフ&アーペルのジュエリー制作においては、デザイナーの主張が常に優先されるわけではないということです。例えば石を支える金具の形や、しなやかな動きを可能にするための仕組みなどについて、職人の意見をデザイン画に落とし込んでいきます。デザイン画が職人の手に渡って制作が始まった後も、職人とデザインの完成イメージを共有しながら作業を進めていくとのことでした。
レクチャーの後は、名和さんによる彩色のデモンストレーションを見学します。裏側から色を載せたり、白色のハイライトで石の輝きを表現するなど、ところどころに専門的な技が光り、参加者は息をのみながら名和さんの手元に注目していました。その後は、「リュートを奏でるインド王」のモチーフを各自が好きな色で彩色し、デザイン画を完成させてました。参加者同士の会話も弾み、和やかな雰囲気の中でワークショップが進みました。


このイベントを通して、ヴァン クリーフ&アーペルのハイジュエリーは、さまざまな職人たちの「技」が結集されているだけでなく、彼らの「対話」の積み重ねの上に成立していることも感じました。参加された皆さんの満足度も高く、作品の裏側に隠された物語に思いをはせることで、ハイジュエリーの見方が一段と深まることを実感できる、またとない機会になったのではないかと思います。
(当館特定研究員 松山沙樹)
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