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教育普及「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」 ファミリーアワー!美術館でゴッホモーニング 実施報告

学習支援活動

「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」
   ファミリーアワー!美術館でゴッホモーニング 実施報告


日時
2018年2月12日(月・振休)午前8時30分~9時30分

会場
京都国立近代美術館 3階企画展示室

参加人数
166名

ナビゲーター
牧口 千夏(当館主任研究員・本展担当者)
松山 沙樹(当館特定研究員)
多田羅 珠希、森下 晃行(2017年度当館インターン生)

 「ゴッホ展」の開館前の時間帯を活用して、家族向け鑑賞イベントを開催しました。当日は、0歳から15歳までの子どもとその保護者58組が参加しました。

「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」ファミリーアワー!美術館でゴッホモーニング

 幅広い世代に人気の「ゴッホ展」。通常の開館時間中は混雑が予想される一方、明るい色彩のゴッホ作品は子どもにとっても親しみやすいため、「ミュージアム・デビュー」にぜひこの機会を利用してもらいたい――そんな思いから、子育て世代のニーズにも応えるべく、親子でゆったりと作品鑑賞できる機会を設けることにしました。

 こうした取り組みは、昨年度「メアリー・カサット展」で閉館後の夕方に開催した「キッズ・ナイト・ミュージアム」に続き2回目。前回、参加者から”子どもが幼いうちは午前中の方が活動しやすい”という声が寄せられたことなどから、今回は初めての試みとして開館前の朝の時間を活用しました。当日は氷点下まで冷え込む寒さでしたが、子どもたちは元気いっぱいで美術館にやってきてくれました。

「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」ファミリーアワー!美術館でゴッホモーニング

 今回は、(1)美術館での約束事を知ってもらうこと、(2)それぞれが各自のペースで自由に鑑賞してもらうことの2点を重視してプログラムを組み立てました。

 展示室に入ると、まずはナビゲーターから「ゴッホ展について」「美術館での約束事」についてのお話を聞きました。美術館が初めての子も多く、うす暗い空間に少し緊張した面持ち。ナビゲーターは「作品を見て、すごいなあ、不思議だなあと思ったことは、親子でどんどん話してみよう」と、積極的な会話をうながします。大人の方には、対話のヒントを載せたガイドも配布しました。説明を聞いた後は、それぞれ好きな場所から鑑賞を始めました。

「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」ファミリーアワー!美術館でゴッホモーニング

 また会場内には、作品にまつわるクイズを設置。受け身に解説を聞くだけではなく、好きな絵を見つけたりして主体的に作品と向き合ってほしいということで、当館のインターン生が作成したものです。「絵の中に人物は何人いるかな?」と小さな子どもも取り組みやすいものから、「芳名録には何が書いてあるのかな」「男性がまいている種は、何をあらわしているだろう」と思考を促すものまで、全部で10種類。親子で挑戦したり、子どもが問題を読んで大人が考えたりと、家族によって活用の仕方は異なりましたが、広い展示室の中で少し立ち止まって作品をじっくり見る”入口”としての役割も果たしていたようです。

「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」ファミリーアワー!美術館でゴッホモーニング 「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」ファミリーアワー!美術館でゴッホモーニング

 イベントのもう一つの目玉は、ゴッホの生涯を紹介した紙芝居「ぼくは、フィンセント・ファン・ゴッホ」の上演。演者の庄崎さんの迫真の語りに惹きこまれながら、子どもも大人も紙芝居を堪能している様子でした。紙芝居を通して、ゴッホを知らない子どももゴッホを身近に感じられたのではないかと思います。

「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」ファミリーアワー!美術館でゴッホモーニング

 この日参加した保護者からは、「大人だけのときは、ゆっくり自分のペースで観られますが、子どもが一緒だとなかなか込み合っていたり、子どもが迷惑かけないか、また子どももちゃんと観ることができず、お互いがストレスになったりするので 今回とても幸せな時間を過ごせ、子ども達も一生の想い出になったと思います。」(40代/お子さん11歳・7歳)といった声が寄せられました。1時間という短い時間でしたが、大人も子どももリラックスして展覧会の世界を楽しんでいたようです。

 その一方でこうした意見は、小さな子どもとその保護者にとって、美術館がいかに「行きづらい」場所であるかということも示唆しています。今回のイベントでは、基本的なマナーさえ守れば自由に鑑賞してよいことを伝えたりクイズを取り入れたりと、わずかなサポートや雰囲気作りによって、展示室での経験がガラリと変わる、そんな可能性を感じることもできました。さまざまなニーズをもった人たちが共存する美術館という空間の中で、誰もが安心してのびのびと過ごせる環境づくりの大切さを改めて実感する機会にもなりました。

(当館特定研究員 松山沙樹)



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