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教育普及京都市立高倉小学校出張授業
「和食の盛り付けを学び、おもてなしの工夫をしよう」 実施報告

学習支援活動

京都市立高倉小学校出張授業
「和食の盛り付けを学び、おもてなしの工夫をしよう」 実施報告

日時
2015年6月19日(金)午後1時50分~3時25分(6年1組)
2015年6月23日(火)午前9時35分~11時35分(6年2組)
2015年7月1日 (水) 午後1時50分~3時25分(6年3組)

会場
京都市立高倉小学校

参加人数
6年生112名

 ”器は料理の着物”として器、料理、しつらえなど和食の総合的プロデュースに取り組んだ北大路魯山人を紹介する「北大路魯山人の美 和食の天才」展にちなみ、小学校に出張し、和紙による敷き紙(ランチョンマット)制作と料理の盛り付けを通じて、魯山人のおもてなしの精神を追体験する授業を行いました。小学校からの呼びかけに地域の陶芸家、料理人、和紙屋さんが協力してくださり、図工、家庭科、生活科、食育と、教科の垣根を越えたユニークな学びが実現しました。

 活動は、クラスごとに2時間連続の授業として実施しました。生徒たちは事前に3、4人ずつのグループを作り、1時間目はグループ内を2つに分け、敷き紙制作と調理実習を並行して行いました。敷き紙制作では、紙をちぎって貼り合わせたり絵の具で彩色するなど、各自が工夫を凝らして花火や紫陽花などを表現し、個性豊かな作品が出来上がりました。調理実習を担当した生徒たちは、盛り付けの完成イメージを想像しながら、自分たちでゆでた野菜を工夫して切っていきました。

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 2時間目は、小学校内にある和室のランチルームにクラス全員が集まりました。初めに当館研究員が魯山人の器をスライドで紹介しながら、季節感や見立て、色合いへの配慮は、相手に料理をより楽しんで美味しく食べてもらおうとした魯山人の「おもてなし」の精神であり、私たちの生活の様々な場面でも活かすことができる考え方だと伝えました。続いて陶芸家の方が、今回用いる器について説明を行い、その後生徒たちはグループで相談しながら、選んだ器に料理を盛り付けていきました。敷き紙のデザインが見えるような器の置き方、食材どうしの色合いやバランスへの配慮など、豊かな感性が存分に発揮された思い思いの作品が出来上がりました。

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 最後に、他のグループの敷き紙と盛り付けを鑑賞し、感想を述べ合いました。「空間をあけて盛り付けるときれいに見える」といった気づきや、「船に見立てたような盛り付けですごい」、「器の黒色と玉子の黄色とで、暗い色と明るい色が上手くマッチしていた」、「器の力を最大限に生かした盛り付けだと思った」といったコメントが次々と飛び出し、お互いの作品の良さを認め合うことで、学びがより一段と深まったようでした。また、レクチャーで触れた”見立て”や”色合い”という言葉や”線対称”といった他教科の用語が発言の中に混ざり、これまでの学びの中で培われた力が今回の活動によって総合的に引き出されていることも分かりました。こうした生徒たちの姿から、指導者の側もまた分野横断的な授業の可能性を再認識する機会となりました。

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 美術館は、展示によってメッセージを伝えるだけでなく、展示を見る人に対して、作品との出会いを通じて自分の生き方や価値観を主体的に見直し、考えてもらうきっかけを提供する場所ともなりえます。誰にでも身近なテーマである食文化を魯山人という切り口から紹介し、もてなしの精神を経験的に学び実生活に生かすことを見据えた今回の取り組みは、学習支援活動の立場から、上記のような美術館のあり方についてひとつの可能性を提示する結果となったのではないでしょうか。この授業が生徒たちにとって、器、和紙、料理、美術館など、新たな興味の世界への入口を紹介できたのであれば、大変嬉しく思います。

(当館特定研究員 松山沙樹)



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