教育普及「琳派イメージ」展ワークショップ『みんなでハコ★りんパ』 実施報告
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「琳派イメージ」展ワークショップ『みんなでハコ★りんパ』 実施報告
- 日時
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①11月22日(日)午前9時30分~12時
②11月22日(日)午後2時~4時30分 - 会場
- 京都国立近代美術館 1階講堂、3階企画展示室
- 参加人数
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①午前の部:4名
②午後の部:11名 - ナビゲーター
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松山 沙樹(当館特定研究員)
桐月 沙樹(当館研究補佐員)
「琳派イメージ」展の鑑賞を通じて琳派の技法や表現を知り、さらに鑑賞から膨らませたイメージを元に箱をデザインするワークショップを開催しました。展示会場で見つけたモチーフを元にしてオリジナルの「型」を作り、それを用いて紙をデザインした後、組み立てて箱に仕上げます。ひとりひとりが展示と向き合うことで生まれた”琳派イメージ”が、15種類の素敵な箱となって表現されました。
まずは講堂で「琳派イメージ」展についての説明を聞いた後、一日の活動の流れを確認しました。そして、展覧会の作品の中から、箱のデザインに使う型の元となるモチーフを見つけるべく、皆で展示室へと向かいます。
展示室では、型に使うモチーフ探しに取り組みました。
はじめに、ナビゲーターがあらかじめ作成した型のサンプルと実際の作品を見比べながら、モチーフの探し方のコツを確認しました。また、ワークショップの後半で「ステンシル」の技法を使うことから、この技法を使って制作されたマティスの《ジャズ》を皆で鑑賞しました。その後、気になった作品や図像を各自ワークシートにメモしていきました。
続いて講堂に戻り、型づくりに取りかかります。
ワークシートに描きとめたモチーフの上に透明シートを重ねてペンでなぞった後、カッターで形を切り抜いていきます。スケッチの時間が十分に取れなかった人や、思うようにモチーフが探せなかった人も、作品画像の拡大コピーから形を写し取って、オリジナルの型を作ることができました。
出来上がった型は、杜若(かきつばた)や鹿といった琳派におなじみのものから、マティス《ジャズ》の一部や流水紋のシルエットまでさまざま。参加者それぞれの”琳派イメージ”の多様性が垣間見られます。
手作りの型が完成した後は、いよいよ紙をデザインしていきます。
型の上から絵の具を含ませたスポンジで何度か叩く、ステンシルの技法を使って、紙に形を写しました。琳派に特徴的な技法である”金銀の多用”にちなんで、金銀彩フィルムをアイロンで熱圧着して、本物さながらの箔押しにも挑戦。箱の展開図が印刷された紙にデザインしていくため、どの面にどんなデザインが現れるかは、組み立ててのお楽しみです。
紙のデザインにもそれぞれの参加者の個性が光ります。
神坂雪佳《杜若図屏風》を真似て同じモチーフを繰り返し登場させたり、神坂祐吉《月象之図 硯付手箱》のように、箱の上部から側面にかけてモチーフが現れるように配置を工夫したり。清水六兵衞《古希彩弦月壺》のデザインを採用して、銀色の背景に金でススキをあしらったり、屏風に貼られた金銀箔をイメージして、スポンジを使って四角を繰り返し表したり。鑑賞で感じ取った印象に自分なりのアレンジを加えて新たな作品を生み出していく作業は、琳派の作家の制作活動を追体験しているとも言えるものでした。
最後に、いよいよ箱を組み立てます。
あらかじめ付けておいた切り目に沿って紙を切り離し、丁寧に組み立てていきます。思いがけない面にデザインが現れるといった意外性もありましたが、型から手作りしたこともあって、出来上がりの達成感はひとしおです。最後に互いの作品を鑑賞し合い、活動の感想を参加者全員で共有しました。
今回のワークショップは、「どのモチーフを型にしよう」「どんな風なデザインが素敵だろうか」と目的をもって作品と向き合い、鑑賞から膨らませたイメージを元に制作することを通じて、琳派をより身近に感じられる機会となりました。「琳派イメージ」展の最終章が「広がる琳派イメージ」となっているように、琳派のデザインは、工芸品、洋服、雑貨、包装紙など、私たちの身の回りにあふれています。参加された皆さんには、身近なものに目を向けた際、今回の経験を振り返りながら「これも琳派の影響かな」と、そのデザインを楽しんでもらえればと思います。
(当館特定研究員 松山沙樹)
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