キュレトリアル・スタディズ
キュレトリアル・スタディズ17:
日常の二重性―テキスタイルの表現からみる―
2025.12.11 thu. - 03.08 sun.
1963年に開館した京都国立近代美術館では、早い段階からテキスタイルによる作品をとり上げてきました。継続的に取り組むのは、これまで紹介してきた作品が内包する表現の可能性と批評性を、今日的な状況を踏まえた上で再検証するためでもあります。
「テキスタイルの冒険―現代オランダの4人のアーティスト」(1996)において、レオッネ・ヘンドリクセンを紹介してから、30年が経ちます。今回展示する彼女の近作は、コロナ禍で顕在化した不安定な日常を送る人々にとって、必要な連帯を模索した作品です。サークルを描くように配置された半透明の袋状のモジュールは、人々の身体が互いに支え合うことで成り立つコミュニティを表わしています。
本展では、ヘンドリクセンの作品が提起する身体性をキーワードに、具象的な造形やモティーフを用いるのではなく、素材や構造と、織ったり縫ったりする行為そのものが象徴的な意味を持つテキスタイルの方法論について考えます。
布の身体性には、衣服として使用されることから想起される身体と、制作の主体である身体というふたつのアプローチが指摘できます。きものは、一般的に模様が鑑賞対象とされますが、村山順子の作品は、その着用性によって毛皮を纏うイメージを喚起させます。かつてきものだった大麻布を用いたメイ・エンゲルギールの作品や、田中千世子の〈袈裟〉シリーズは、切断し再構成することで新たな文脈をつくります。一方、ひろいのぶこは、織物の工程で通常は隠される糸の結び目を、切って結んだ行為の痕跡として見せ、費やされた時間や労働の価値、もしくは結び直すという象徴的な関係性を示しています。こうした関係性の射程を共同体へと広げ、アリ・バユアジは紡ぎ、染め、織り直すプロセスによって、コミュニティの再編を問うてゆきます。
作品の前で私たちが目にするのは、ただ結び目であり、継ぎ接ぎであり、布の重なりにすぎないのかもしれません。しかし日常的に見慣れた眺めの奥にこそ、私たちを取り巻く社会への想像を広げるためのしぐさが隠されているのではないでしょうか。
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レオッネ・ヘンドリクセン《Silence Fragile》2021年 作家蔵 -

村山順子《ケモノのキモノー白いオオカミ》2017年 作家蔵 -

メイ・エンゲルギール《Unintended #121》2024年 個人蔵 -

田中千世子《〈袈裟〉Sange Lotus, Petals #97-1》1997年 京都国立近代美術館 写真:今村裕司 -

ひろいのぶこ《TRACES 痕跡の布》2013年 京都国立近代美術館 写真:今村裕司 -

アリ・バユアジ《The Ocean is Weaving (L'océan tisse) #2》2023年 作家蔵 撮影:宮島径|© Ari Bayuaji|Courtesy of Mizuma Art Gallery
出品作家 田中千世子、ひろいのぶこ、村山順子、アリ・バユアジ、メイ・エンゲルギール、レオッネ・ヘンドリクセン
会期
2025年12月11日(木)~2026年3月8日(日)
開館時間
午前10時~午後6時
金曜日は午後8時まで開館(12月12日、19日を除く)
入館は閉館の30分前まで
休館日
月曜日(ただし1月12日、2月23日は開館)、12月30日(火)~1月3日(土)、1月13日(火)、2月24日(火)
会場
4F コレクション・ギャラリー内
観覧料
一般 :430円(220円)
大学生:130円(70円)
高校生以下、18歳未満、65歳以上:無料
※心身に障がいのある方とその付添者1名、ひとり親家庭の世帯員の方は無料(入館の際に学生証、年齢の確認ができるもの、障害者手帳等をご提示ください)
※( )内は20名以上の団体
※本料金でコレクション展もご覧いただけます。
※国立美術館キャンパスメンバーズは、学生証または職員証の提示により、無料でご観覧いただけます。
夜間割引
夜間開館日(金曜日)の午後6時以降、夜間割引を実施します。
一般 :430円 → 220円
大学生:130円 → 70円
無料観覧日
12月13日(土)
主催
京都国立近代美術館
広報資料 チラシ(PDF:4.3MB)
