コレクション展
2020年度 第1回コレクション展
2020.03.04 wed. - 07.19 sun.
生誕130年記念 山口八九子 山口八九子《月夜》1931年
山口八九子(本名直信。別号少遊、三樹洞など)は明治23(1890)年京都市に生まれました。42年京都市立美術工芸学校(美工)絵画科を卒業し、京都市立絵画専門学校本科に進学、45年卒業します。同級に榊原苔山、人見少華、不動立山、森谷南人子(美工のみ)がいました。両校で学んだ円山・四条派風の作画を続ける一方で、美学教師であった子規派の俳人・中川四明(重麗)の影響で句作を始めて俳誌『懸葵』に句と共に挿絵を投稿、大正9(1920)年には『ホトトギス』の表紙絵を担当するなど俳画家として知られるようになります。8年恋人を追って長崎に行き、初めて目にする自然風景に感銘を受けた八九子は、自然の真実相を把握したいと願い、各地を旅し、描くようになります。その成果は早速、10年第3回帝展に《浜木綿》が、同年設立されたばかりの日本南画院展に《雲仙湯煙》が初入選するという形で現れました。11年頃中国文学者の青木正児らと結成した考槃社で富岡鉄斎の講演を聞き、その作品や中国人作家の作品に触れた八九子は以後両展へ、更に南画傾向を深めた独自の作品を出品、後者の同人となるなど活躍し、将来を期待されます。しかし昭和8(1933)年結核のため、42歳の若さで亡くなりました。
今年は八九子生誕から130年にあたります。それを記念し、本特集では、日本南画院で同時に同人となった水越松南。『ホトトギス』の表紙画で知られる小川芋銭、平福百穂。大正12年共に中国を旅した橋本関雪。同時代、京都で俳画家として知られていた冨田溪仙。考槃社で影響を受けた富岡鉄斎、同社で一緒だった近藤浩一路。そして母校の6級下で八九子の画を好み、遺作展を斡旋した福田平八郎。など、八九子と関係の深かった日本画家達の作品と併せて、当館が所蔵する山口八九子の全本画を展示し、その短い画業を振り返ります。
ヨーロッパの工芸 リチャード・スリー《かたむいた角》1987年
企画展の開催にあわせて、当館所蔵作品の中からヨーロッパの工芸作品を紹介いたします。当館では、「現代の陶芸―ヨーロッパと日本」(1970)を企画したほか、これまでに陶芸、ファイバーワーク、ガラス、ジュエリーなど世界の工芸に関する多彩な展覧会を開催してきました。また、これらの展覧会を通じてコレクションの充実を図ってきましたが、こうした日本国外の作品群は、それ自体の魅力はもちろんのこと、日本の工芸のあり方を映し出す鏡としての役割も担っています。
ヨーロッパでは、よく知られているように、日本以上に純粋美術や応用美術という区分が明確であり、その伝統の上でクラフトマンシップの精神を育んできました。一方で、現代の工芸は、同時代の美術やデザインの動向とも無縁ではなく、それらと共通の問題意識を有した作品制作も盛んに行われています。作家の創作思考の自由さは、いわゆる「工芸」の枠を曖昧なものとし、他領域との自由な交換・接続可能性を見せてくれることは、個人の体験や感情、思想に根差した表現、あるいは社会性を伴った表現が多いことからもわかります。こうしたヨーロッパ工芸の状況とは対照的に、近代に西洋の美術・芸術概念を導入した日本では、近代以前の造形的あり方を大きく変え、ジャンル区分を明確化していきました。そして、「工芸」の枠組みは強固なものとなり、それが手わざや素材を重視する日本工芸の独自性にもつながっています。
ここでは、ヨーロッパ工芸のほんの一側面を紹介するだけですが、創作者の様々な視点を通じて工芸の表現的広がりを感じていただけると幸いです。
川勝コレクション 河井寬次郎作品選 河井寬次郎《泣碗》1919年頃
川勝コレクションは、昭和12年(1937)のパリ万国博覧会グランプリ作品を含む、質、量ともに最も充実した河井寬次郎作品のパブリック・コレクションです。
川勝コレクションが当館に寄贈されたのは、昭和43年(1968)のことです。当館への寄贈にあたっては、部屋一面に並べられた膨大な作品群の中から「お好みのものを何点でも」との川勝の申し出に従って415点が選ばれました。それ以前にすでに寄贈されていた3点と、初期作品が不足しているとのことで後に追加となった7点を加えて、計425点に上ります。このコレクションは、中国陶磁を手本とした初期から、民藝運動に参画後の最晩年にいたるまでの河井の代表的な作品を網羅しており、その仕事の全貌を物語る「年代作品字引」となっています。
コレクションを形成した故・川勝堅一氏は、高島屋東京支店の宣伝部長、高島屋の総支配人、横浜高島屋専務取締役などを務め、また、商工省工芸審査委員を歴任するなど、工芸デザイン育成にも尽力しました。
河井と川勝の長年にわたる交友は、大正10年(1921)に高島屋で開催した河井の第1回創作陶磁展の打ち合わせのために上京した河井を川勝が駅まで迎えに行ったことに始まります。そこでたちまち意気投合したことで、川勝は河井作品の蒐集を始めます。コレクションについて川勝は「これは、川勝だけの好きこのみだけでもなく、時として、河井自らが川勝コレクションのために作り、また、選んだものも数多いのである」と回想し、さらに「河井・川勝二人の友情の結晶」だとも述べています。
画中の模様 小出楢重《横たわる裸女(B)》1928年
衣服や日用品、居住空間は様々な模様で飾られていることがあります。模様があることによって生活が華やいだり、落ち着いたものになったりします。人間の姿や生活の環境を描く絵画作品には、当然ながらそうした模様も描き込まれることになりますが、これは意外に厄介なことでもあります。なぜなら絵と模様は、平面上に形と色で表現されるという点では同じようなものであるからです。絵の中に絵があることが、観る者を混乱させる場合があるように、絵の中に模様があることも、観る者を混乱させる場合があり得るのです。西洋のリアリズム絵画では、明暗や遠近を巧みに描くことで、画中の模様から模様本来の力を無効化し、模様を絵に従属させていましたが、やがて20世紀の画家マティスのように、人物や静物と模様とを同じように描いて、むしろ観る者を混乱させるかのような、装飾性を楽しむ表現も出現しました。
日本の絵画ではもともと絵と模様とを分かちがたく表現してきたと言えますが、明治期以降は、西洋絵画のリアリズムに学んで一度は模様と絵画を分けるようになったあと、今度は模様と絵画を近付ける表現をあらためて西洋から学んだ格好になりました。絵画において模様をどのように表現するのか?という問題は、日本絵画における「近代」の性格をよく物語っていると言えそうです。ここでは、当館コレクションの中から、日本の洋画における様々な模様の表現をご覧いただきます。
会期
2020年3月4日(水)~5月10日(日)
2020年3月4日(水)~7月19日(日)
*3月4日(水)~5月25日(月)臨時休館
テーマ
生誕130年記念 山口八九子
ヨーロッパの工芸
川勝コレクション 河井寬次郎作品選
画中の模様
常設屋外彫刻
展示リスト
2020年度 第1回コレクション展 (計101点)(PDF)
音声ガイド
音声ガイドアプリご利用方法(PDF形式)
開館時間
午前9時30分~午後5時
※ただし金、土曜日は午後8時まで開館
※7月中の金、土曜日は午後9時まで開館
※夜間開館は休止しております
※いずれも入館は閉館の30分前まで
※新型コロナウィルス感染拡大防止のため、開館時間は変更となる場合があります。来館前に最新情報をご確認ください。
観覧料
一般 :430円(220円)
大学生:130円(70円)
高校生、18歳未満、65歳以上:無料
※( )内は20名以上の団体
※国立美術館キャンパスメンバーズは、学生証または職員証の提示により、無料でご観覧いただけます。
コレクション展夜間割引
夜間開館日の午後5時以降、コレクション展観覧料の夜間割引を実施します。
一般 :430円 → 220円
大学生:130円 → 70円
※午後5時以降に観覧券をご購入、入場されるお客様に割引を実施します。
※観覧券のご購入、入場は閉館の30分前まで。
※夜間開館は休止しております
同時開催:
2020年3月4日~7月12日
キュレトリアル・スタディズ13: チェコ・ブックデザインの実験場 1920s–1930s
2020年3月17日~7月12日
日本・ポーランド国交樹立100周年記念
ポーランドの映画ポスター
音声ガイド 音声ガイドアプリご利用方法(PDF形式)