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キュレトリアル・スタディズシリーズ:検証「現代美術の動向展」第2回

シリーズ:検証「現代美術の動向展」第2回

期間
2010年12月22日(水)~ 2011年2月27日(日)
展示作品
シリーズ:検証「現代美術の動向展」第2回 展示目録

 <シリーズ:検証「現代美術の動向展」>の第2回で採りあげる展覧会「現代絵画の動向-西洋と日本-」は、開館記念展と同じ1963(昭和38)年の7月6日から8月29日にかけて開催されました。この展覧会も開館記念展同様、単独展ではなく「工芸における伝統と現代」展との同時開催で、このような絵画・彫刻に代表される純粋芸術と応用芸術である工芸の展覧会の同時開催が続けて行われた点に、京都という地域の特性を鑑みて「工芸」を中心にした美術館造りを目指した初代館長今泉篤男の強い意志が感じ取られます。
 開館記念展では「セクショニズムの超過」がテーマとなっていましたが、開館記念展第二部ともいうべきこの二つの展覧会では「トランス・ボーダー」、つまり「絵画」における「西洋」と「日本」という地理学的・文化的境界と、「工芸」における「伝統」と「現代」という時間的境界の越境が目指されています。
 「西洋と日本」という副題をもつ「現代絵画の動向」展が開催された背景を、今泉は次のように説明しています。「戦後-といっても、ここ10年ぐらい以前から、日本の画壇はヨーロッパやアメリカの美術界と密接な交渉を持つようになった。日本の画家で、欧米に滞留し、溌剌たる活躍を示している人も少なくないし、また欧米の気鋭の新人で日本に来て作品を発表した画家も少なくない。」本展は、このような「日本と西洋の現代画家の作品が相互に呼応し、語り合っていることを」示そうとするものでした。出品作品は合計62点で、海外からはフォンタナやフォートリエ、タピエス、イブ・クラインなど19名、日本からは菅井汲、斎藤義重、津高和一、吉原治良、オノサト・トシノブら20名の作家の作品が選ばれています。当館では、具体グループの作家を中心に、出品作家のうち12名の作品を収蔵しており、その中には川端実のように後に個展を開催した作家も含まれています。しかし残念ながら、ザオ・ウーキーを除いて本展に参加した海外作家の作品を購入する機会には恵まれませんでした。
 本展の特徴は、日本人作家と海外作家の作品が国籍の区別なく並べて展示されたことにありますが、当時当館の技官(現在の研究員)であった乾由明は両者における共通点を「東洋風の画面処理」であるとし、それらがいかに画家「自身の血肉となって造形的に定着されているか」が感じ取れると言います。その画面処理の特質として、乾は「ひろびろと広がる画面空間」「書道を思わせる筆触」「鋭角的な空間決定」を例として挙げていますが、これは19世紀後半から20世紀初めにかけて欧米で広まったジャポニスムからの影響の特質でもあります。西洋と日本の現代作品をフォルマリスティックに対峙させることで、それを超えて「東洋でも西洋でもない独自の表現」とは何か、を問うのが本展の主旨であったと言えるでしょう。
 開館当時の当館は、1937(昭和12)年に建築された建物を美術館として流用していました。そのため、建物には所蔵品を常設展示するスペースがないだけではなく、充分な作品収蔵スペースすら存在しませんでした。そのことは、1986(昭和61)年に開館以来の念願が適って現在の美術館建物が建設され、収蔵庫が整備されるまで、当館の作品収集活動の大きな障害となっていました。


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