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キュレトリアル・スタディズシリーズ:検証「現代美術の動向展」第1回

シリーズ:検証「現代美術の動向展」第1回

期間
2010年8月25日(金)~10月24日(日)
展示作品
シリーズ:検証「現代美術の動向展」第1回 展示目録

 当館は1963(昭和38)年4月27日に東京の国立近代美術館京都分館として開館し、3年後の2013(平成25)年に開館50周年を迎えます。この歴史の節目に向けて、今一度開館時の理念や活動を振り返ることは、今後の美術館活動のあり方を考えるためにも無駄ではないでしょう。当館の開館記念展は、「二つの展望」をテーマに、「現代日本陶芸の展望」と「現代絵画の動向」の二本立てで行われました。この二つの展覧会に共通する特徴は「セクショニズムの超過」です。前者では、各種工芸展や民芸といった様々な分野の一線で活躍する陶芸家の作品だけではなく新進の前衛陶芸家の作品、さらには古陶磁やバーナード・リーチやミロといった外国作家の手になる作品までもが展示され、後者では洋画や日本画さらには書が、従来の枠を越えて同時に展示されました。このような主旨の展覧会を開催した理由を、「近代」美術館の役割に照らして、初代館長今泉篤男は、「現代という時点を、過去から将来につながる接合点として歴史的な観点から整理し(中略)前向きの方向におし進める」ため、と説明しています。そしてこの考えは、現在でも当館の展覧会活動やコレクション活動の根幹にあると言っても過言ではありません。とりわけ「現代絵画の動向展」は、後に「現代美術の動向展」そして「現代美術の鳥瞰展」とわずかにその名を変えながらも、開館時から1977(昭和52)年にかけて計11回開催され、当館の収集活動に大きな痕跡を残しています。それは、まさに「モダン(近代)」から「ポスト・モダン」への過渡期であり、新たに「現代美術館」が誕生してくる時期と軌を一にしていました。
 コレクション・ギャラリーでは、開館50周年にむけ、この11回の展覧会を順次ご紹介していきます。そうすることで、当館のコレクションが持つ意義を再検証するだけではなく、今後の「近代」美術館が果たすべき役割を考えていきたいと思います。
 第1回となる「現代絵画の動向展」には、60作家の作品が出品されました。うち30点は東京の国立近代美術館の所蔵作品で、そこに関西在住の新進作家の作品30点を加えて、展覧会は構成されています。この展覧会の目的を今泉は目録で、多岐多彩にわたる現代絵画の動向を一応整理し一つの展望を与えることとし、ここでは「具象から抽象への様式の推移を対立としてではなく一種の連鎖の様相としてとりあげてみた」と述べています。そしてその連鎖の様相の背後にあるのは、「(絵画様式の)純粋性と生命力を両立させようとする苦闘」である、と指摘しました。今回ここに展示されている作品は、この「現代絵画の動向展」に実際に出品された作品ないしは同時期に制作された作品です。これらを眺めていると、「具象」と「抽象」だけではなく、「絵画」という表現形式に対する確信と懐疑のせめぎ合いをも感じとることができます。
 なお当館の開館に際しては、前夜祭として国立近代美術館フィルム・センターの協力で、ダリの発案になる映画「アンダルシアの犬」とブレヒト原作の映画「三文オペラ」が上映されました。


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