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キュレトリアル・スタディズ戦後の具象絵画

戦後の具象絵画

期間
平成19年2月27日(火)~ 4月8日(日)

展示作品
戦後の具象絵画 展示目録

7月31日(火)から9月17日(月・祝)にかけて、当館では「没後10年 麻田 浩展」を開催いたします。麻田 浩は、日本画家・麻田辨自を父に、同じく日本画家・麻田鷹司を兄にもち、新制作協会に発表を重ねながら、パリを拠点に長くヨーロッパでも活動を続けました。京都ゆかりの画家としてのみならず、絵画による造形詩というべき静謐な表現世界は、わが国の戦後の具象絵画においても特異な位置を確立し、その画業の全貌をはじめて明らかにすることも、意義深いことと思われます。

そこで今回の「コレクション・ギャラリー小企画」では、洋画・日本画のジャンルを問わず、当館の絵画コレクションによって、あらためてわが国「戦後の具象絵画」の状況をふりかえり、今夏に開催される「麻田 浩展」のプレビューの意味もこめて構成いたしました。

麻田 浩は、主に新制作協会の会員として、同会の展覧会で作品を発表しています。そして同協会の創立会員には、東京美術学校で藤島武二に学び、気品ある女性像の名手として戦前・戦後の具象絵画をリードした小磯良平がいました。また、小磯と美術学校の同期生であった牛島憲之は、主に風景画において、個性豊かな色彩と対象把握で、詩情溢れる造形美を生み出しています。藤田嗣治がパリで使っていたアトリエに住み込んだ岡 鹿之助も、風景や静物を主題に、温雅な作風を確立したことで知られています。

ところで麻田 浩の兄・鷹司は、京都市立美術専門学校(現・京都市立芸術大学)で、小野竹喬や上村松篁らに学びました。麻田の母も、上村松園に師事し「直園」という雅号まで授かったといいますが、この上村松園を慕い、京都での活動も注目すべき画家として、三谷十糸子がいます。三谷は、いかにも神戸生まれらしく、戦前から、モダニズムの気分漂う女性像を追求し、上京して女子美術学校に学んでいたときには、写生を基礎とした「洋画のような日本画」を標榜する、結城素明の影響を受けていました。この「モダン」な感覚に溢れた作画姿勢は、戦後も継続して、彼女独自のスタイルを育んだ創作源となっています。

戦後の日本画には、わが国独自の様式化された表現による風景画など、日本的風土の造形化を試みながら、額装形式の大画面作品が数多く見られます。しかしながら、その一方で、伝統的な屏風という形状を保持しながらも、森田曠平らのダイナミックな作品は、決して洋画では見られない独特の雰囲気を醸し出しているといえるでしょう。

(主任研究員・山野英嗣)

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