京都国立近代美術館オープンデー「美術のみかた、みせかた、さわりかた」
美術のさわりかたツアー 実施報告

開催日時
8月10日(金) ①10:00~11:30 | ②13:00~14:30
8月11日(土) ③10:00~11:30 | ④13:00~14:30
参加者
① 24名(視覚に障害のある方4名)
② 23名(視覚に障害のある方6名)
③ 21名(視覚に障害のある方11名)
④ 18名(視覚に障害のある方3名)
イベント詳細
美術のさわりかたツアー

 このツアーでは、研究員と一緒に所蔵品をさわって鑑賞することで、質感や大きさ、形、音、重さなどを体感した。

 冒頭、研究員より、普段の作品管理にも作品(主に工芸や立体)の状態を点検する際には、指先や手のひらで表面に触れたり、音を聞いて割れ等がないか確認したり、匂いをかいで材質を調べる等、五感を柔軟に活用していることを紹介した。その後は4グループに分かれ、約1時間かけて作品鑑賞を行った。各グループには研究員が1名ずつ入り、参加者の反応に応じて作家や技法についての解説を行ったり、会話のファシリテート役(交通整理)を務めた。

<主な感想>

1時間半がとても短く感じられるツアー(ワークショップ)でした。いつもはガラス越しに見る作品をじっくりとさわれて、とても充実感がありました。作者はどんな風に作品を作り上げたのだろう?何を表現したかったのだろう?と正解はわかりませんが思いめぐらしながら、他の参加者と言葉をかわしながらのワークショップはとても楽しかったです。ありがとうございました。(50代・女性)

陶器が多い中、ガラスと素材をあっさり答えられた視覚障害の方がいて、見た目ではガラスだとは(黒い部分)思えなかったので驚きました。私は陶器か硬化プラスチックのようなものと思いました。よく見ると光が透けてみえ、やっとガラスと思いました。

実際に目の不自由な方の作品の接し方を見させて頂くのも発見が多かったです。見るのと、触れる、叩く、持ち上げる、なでる、つまむなど、立体作品はいつもぐるりと一周回って観る方なのですが、より、作品に近づいた気分になりました。陶芸作品は、作者の手の大きさ指の大きさ、厚みなども分かってとても嬉しかったです。(40代・男性)

見るだけでは作品の手ざわりは分からないものですし、ふだん、見るだけで作品の事が分かると考えがちなので「さわる」という体けんはよかったと思います。子どもに人気のあるような遊べるてんじ会のようなものはよくありますが、ふつうはさわれないようなてんじをしているとうきをさわれる体けんというだけでみりょくがありました。またこのような体けん会のような物があったらさんかしたいと思います。(9歳以下・女性)

今回は作品の数が多く、参加者はどちらかと言うと素材の質感に注目されたようである。その中でN氏が鈴木治の馬に触れた時の様子が印象的であった。最初は単に直方体の集まりのように思われ「馬といわれたら馬か...(笑)」と納得出来ない様子だったが、ある人が首をひねってると指摘され、それに触発されて、触り直された瞬間、「ひねりを感じるとかわいくなる。」「このひねり気に入った」と発話された。触ることで作品とのつながりの深まった瞬間を目撃出来、よかった。(60代・男性)

普段できない「作品にさわる」という経験をして、自分がどれだけ視覚によって美術鑑賞をしているかを知りました。「さわる」ことで「見る」ことにも変化が生まれそうです。今回「さわった」ことで、目の見えない方も含め、たくさんの方と一緒に作品を見られて楽しかったです。ただ、もうちょっと作品の生まれた背景とか、どういう作家なのかなど、作品の情報も知りたかった気もします。(「さわる」事に集中して欲しかったから、あえて提示されなかったのかと察します)(30代・女性)

いつもだったら素通りしてしまう作品も触ったりお話しながら見ることでじっくり、とても楽しく見ることができた。私には気付かない作品の良さもたくさん気付かせてもらったし、こういう見方があるのかーといっぱい教えてもらった。自分の子どもと美術館にいくと、いつもお話しすぎて注意されてしまうのだが、今日は目一杯話せた。いつもこうだったらいいな。(女性)

生まれてから全く目が見えない状況で生きてきた、わたし自身にとっては、「触るという営み」は、目が見える多くの人たちと比較して、より重要で日常的なものとはなっています。けれども、その「触るという営み」は、その時々に必要な情報を得たり、安全を確認したりするものであって、決してそれ以上でもそれ以下でもないようにさえ感じています。つまり、必要以上に一つ一つのものを丹念に触っているか、触ったものの様子や状態を、丹念に事細かくきちんと把握しているかと言えば、決してそうではないように思うのです。(中略)解説を聴きながら鑑賞することで、普段いかに丹念に物を触っていないかということに気づかされました。そして、丹念に触って発見できる、作品の細かな部分から、作品のより深い部分や背景にアプローチできることがあるのだということを、実感することができたように思います。(50代・男性)

いつも触れてもただ質感や手ざわりを楽しむだけにとどまってしまっていたのですが、今回専門の方と一緒に触ってまわることで、焼きモノの奥深さや、作家の意図、作品のポイントなどをあわせて知ることができ、いつもとはひとあじちがった時間となりました。たださわるだけ、ただ説明をきくだけではできない体験になったと思います。参加できてとてもよかったです。