お知らせ

ギャラリー・ラボ2007——鑑賞空間の合意に向けて
  横田香世「こども+アート+おとな → 新・コミュニケーション」


「美術館」——親子で出かける場所としては、堅苦しそうでちょっと…と敬遠される方もあるでしょう。
でも、子ども達にとって美術館は、新しい出会いの宝箱です。子どもの心の中にどんどんふくらむ想像の世界を、お父さんお母さんもいっしょに楽しんでいただくには、どうすればいいのでしょうか。
作品を介して、親子で・仲間と・その時たまたま一緒に見ていた人と、心がつながるきっかけとなる鑑賞方法を探ります。

詳細

子ども達が美術館で出会うさまざまな作品のうち、なんとなく心惹かれる作品を、各自のペースで「じっと見つめる」「想像する、考える」「言葉にしてみる」「話す、聞く」といった行動を組織する。

それを大人がサポートすることで、子どもにとって満足度の高い鑑賞経験となると考えまる。

そういった鑑賞体験に至る方法を探るラボとして、

を実施します。


(1) アート鑑賞が趣味の大人と一般の小学生の鑑賞会(人数 10組程度)
     「審査員になろう!」



アートが好きで、かつ主体的な美術鑑賞をめざしている大人との出会いによって、作品を見ながら自由にいろいろなことを想像し、考えることができるのだということを子ども達に実感してもらう。
     作品にまつわる知識を得るだけではない「新しい鑑賞態度」を経験することで、今後の美術鑑賞が身近で面白く感じるようになることを期待する。

2007年10月28日(日)13:30〜15:10




13:30 集合(1F 講堂)
オリエンテーションと鑑賞グループを決める
13:50 4F コレクションギャラリーをグループで鑑賞
グループで相談して一番気に入った作品に、賞の名前も含めて『○○賞』を贈る。その作品のまえで写真を撮る
14:40 選んだ作品とその賞の意味について、各グループごとに発表しあう。
15:10 終了


賞のプレート、マジック、メモ帳、鉛筆(大人用)、名札、グループ分けのためのくじ

「審査員になろう!」実施報告

参加者:ガールスカウト京都第1団(年長〜中1まで)15名、リーダー(大人)3名、プラスリラックスアートクラブメンバー 7名、スタッフ 4名

午前中の活動を終え、美術館に到着のガールスカウト達は、まず、お外でお弁当。一方、プラスリラックスアートクラブのメンバーは、小さなお客様をエスコートしようと待ちかまえておりました。

審査員になろう!

くじ引きでグループを決定し、いざ4階のコレクション・ギャラリーへ。
ほとんどの子ども達にとって、初めての美術館でした。

ガールスカウトのひとりごと
審査員になろう!グループで一番気に入った作品に「○○○賞」をつけなくてはいけないんだと思って、ひとつひとつの作品を見て回るのだけれど、なかなか決まらない。どうしよう。
     さっきであったばかりのおじさんやおばさんが、私たちの話すことを聞いては、「あら、ほんとね。」と一緒に作品の裏に回ったり、しゃがんで見たりしてくれた。
     大人は、ふだんは、下から覗いてみることはしないみたい。
プラスリラックスアートクラブメンバーのひとりごと
審査員になろう!「どの作品をお家に持って帰って飾りたい?」と訊いたら「持って帰っても仕方ないよー」との答え。でも、気になる作品のところでは、じっと立ち止まって「〜みたい」と名前を付けたり、「このおへそは、もともとはどこにあったのかというと→」とお話を作ったり、大きな画面であっても、細部に描かれたものだけが、無性に気になったりと、反応が素直。子ども達は、作品の好き・嫌いを意識する以前に、身体が自然に動いていくのかなあ。
ガールスカウトリーダーのひとりごと
審査員になろう!子どもって、見たままを言うのですね。それから、犬でアルファベットや数字になってることに気づいたその瞬間の驚きが印象的でした。

それでは、「審査員」の選んだ作品を一部紹介しましょう。

審査員になろう! 審査員になろう!
「見えそうで賞」     「さらさら賞」

迷うことも少し楽しみながら、「やっぱり、私はこれ!」という確信をもって選んでいました。グループで、ひとつに決まらなかったところは、それぞれに「賞」を決めました。
今度は、お父さんお母さんと美術館に行ってみようか。

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(2) 小学生の子どもと保護者の鑑賞会(人数 10組の親子を公募)
      「親子*特別鑑賞会」



「さあ、よく見てみよう」というだけでは、一般的に親子の会話は弾まない。
     子どもは、自分の見てきたものをどう伝えるか。親は、どう聞き出すか。ということを否応なしにしなければならない状況をつくり、作品からたくさんのことを親子で感じ取る体験をする。
     その体験を通して、お互いの受け止め方の違いや共感するところなどをあらためて認識するとともに、言葉を通して鑑賞する楽しさも感じてもらう。

2007年11月3日(土)10:00〜12:00




10:00 講堂でオリエンテーション
親は、そのまま研修室で待機
10:10 子どもは、4Fコレクションギャラリーに行き、自分の一番気に入った作品を見つける。
子どもは、その作品について1Fの親のところに伝えに行く。伝え方は自由。(ことば、身振り・手振り、メモ、絵を描くなど)
親は、子どもの話等から、どんな作品かを想像して絵に描く。
必要に応じて、子どもは4Fへ確かめに行く。
11:30 作品を4Fに持って上がり、親は子どもの選んだ作品を見つけ、子どもと一緒に双方を鑑賞。
11:50 講堂で、全体のまとめ


メモ帳、鉛筆、画用紙、色鉛筆、クレパス等の画材、名札

「親子*特別鑑賞会」実施報告

参加者:小1〜小5の子ども5人とその保護者、スタッフ 8名

「今日は、とくべつな鑑賞の日なので、子ども達だけで4階のコレクション・ギャラリーに行きます。そして、そこで一番気に入った作品をみつけてきてね。」と子ども達を4階へと送り出しました。

ひとつひとつ順番に、「○○だね」と確認するように作品を見て行く子、展示室全体を見渡してから、「これ」と思った作品だけをゆっくり見る子、全体をさっと見た後、3つ位にしぼって、じっと見る子など、さまざま…

親子*特別鑑賞会  親子*特別鑑賞会

5分くらいで決めて、お母さんのところに話に来た子もあれば、20分位かけて戻ってきた子もあります。でも、どれにしようか迷った訳ではなさそう。どの子も決めた作品には「これがいいんだ」という自信がこもっていました。

さあ、うまくお母さん、お父さんに伝わるかどうか。
細部にわたって、言葉と絵で一生懸命説明します。
「もっと、ななめだよ」「色の順番はねー」

親子*特別鑑賞会  親子*特別鑑賞会
お母さん、お父さんは必死で描きます。
親子*特別鑑賞会 親子*特別鑑賞会

できた作品を持って4階へ。お父さんお母さんには、どこにある作品かは教えません。
でも、みんなすぐにわかりました。「おーっ」、「ああーっ」という言葉にならない感激と一緒に、改めて親子で鑑賞します。いつもと反対で、案内役は、コレクション・ギャラリーでは先輩の子ども達です。

親子*特別鑑賞会 親子*特別鑑賞会

子ども達は、終わってから誰からともなく、余っていた紙に絵を描き始めました。たくさん絵を見て、お母さん達が描いているのを見て、自分も描きたくなったのでしょうか。

親子*特別鑑賞会

「親は子どもを美術館に連れて行き、いろんなことを教える」というのが、一般的な姿でしょう。今回は、その立場を逆転してみました。子どもの方が、一生懸命親に教えるのです。
子どもは、自分の話すことを親が真剣に受け止めてくれることが嬉しくて、ますます細部まで丁寧に説明します。親の方は、子どもが自信たっぷりに説明し、自分が気づかないところまで見ていることを知って、驚きと喜びが湧き上がってきます。
参加されたお父さんが「探検のようで楽しかったです。」とおっしゃっておられましたが、親子で「美術館」を探検、「作品」の中を探検してみると、たくさんの宝物を見つけ出せるかもしれませんね。今日は、ちょっと「とくべつ」な鑑賞会でした。

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横田香世(よこた・かよ)

同志社大学大学院総合政策科学研究科ソーシャル・イノベーション研究コース在籍
『地域における「子ども」の「造形・鑑賞あそび」の場の創出に関する提案』をテーマに手探りで勉強中。
「あそび」という主体的な経験の中で発生した疑問や向上心は、子どもの内側から様々なモチベーションを高めると考える。美術を題材にして、あそびの「場」をどう設定していくのかを実践を通して研究していきたい。(京都府府民労働部 文化芸術室 勤務)


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