京都国立近代美術館京都国立近代美術館 京都国立近代美術館 京都国立近代美術館

MENU
Scroll

開館状況  ─  

展覧会川西英コレクション収蔵記念展
夢二とともに

川西英コレクション収蔵記念展
  夢二とともに


senoo
竹久夢二《セノオ楽譜 no.180
「歌劇 マダムバタフライ 晴れた日の」》
1920年7月18日発行
_
 このたびの展覧会のタイトルは「夢二とともに」。これまでまったく未公開だった竹久夢二の肉筆画の紹介に加え、多数の夢二作品が含まれたこの幻の<川西英コレクション>をとおして、”新たな夢二像”を探ります。
 京都国立近代美術館は、2006年度より、神戸で活躍した版画家・川西英が集め続けた作品・資料の収集を進めてきました。この知られざる1000余点から成り立つ本コレクションの中で、最も注目すべきは、初公開となる作品が含まれる竹久夢二の肉筆画6点をはじめ、《セノオ楽譜》の表紙絵、《どんたく絵本》といったほぼすべての装丁本など、コレクションの三分の一が竹久夢二の作品・資料であることです。
 川西英は創作版画家として、とりわけ活動の地・神戸では、サーカスや港・神戸の風景など鮮やかな色彩と明快なかたちで多くの人々に親しまれています。また川西英の交友は広く、同時代の版画家や画家たちと互いに作品を交換しては、ともに新たな創造世界を育みました。
 川西英が生涯大切に守ってきた本コレクションには、川西英の水彩や素描の作品をはじめ、交流のあった創作版画家たちの代表作、そして富本憲吉やバーナード・リーチら工芸作家の版画、さらに後にわが国の「前衛」表現をリードする美術家たちの貴重な作品が含まれていたのにも驚きでしょう。
tehon
竹久夢二《「夢二画手本 ①」》
1923年1月10-15日発行
 本展覧会は、2011年10月、京都国立近代美術館が<川西英コレクション>のすべてを収蔵することを記念し開催するもので、その全貌を紹介する初めての機会となります。コレクションが川西英という版画家と夢二との交流のなかに育まれていた事実を主軸に、夢二をクローズアップするとともに、これまで枚挙にいとまがないほど開かれてきた「竹久夢二展」でも、ほとんど出品されなかった油彩画や肉筆画などを他のコレクションや所蔵館より加えながら、”新たな夢二像”に迫ります。また、幅広い作品を蔵する<川西英コレクション>の魅力も紹介し、下記の四章によって展覧会を構成いたします。




各章解説
川西英コレクションについて
Ⅰ. 知られざる川西英、そして夢二との出会い
Ⅱ.新しき「竹久夢二像」
Ⅲ.川西英、竹久夢二と「前衛」美術家たちとの交流
Ⅳ.〈川西英コレクション〉のすべて

解説
「前衛」表現を代表する作家たち
芸術家の交遊が生んだ幻の<川西英コレクション>

yumeji3  _
作家略歴
竹久夢二
川西 英

主な出品作品

yumeji1   2 yumeji6

onji1  5 onji1  6 onji1

kawanishi1  8 kawanishi2  9 kawanishi3


1: 《川西英手製「竹久夢二木版貼り交ぜ 千代紙」》 大正~昭和初期
2: 竹久夢二 《セノオ楽譜 no.44「蘭燈」》1917年6月9日発行
3: 竹久夢二 [初公開]《ショールの女(ふらんすの)》 1920年代
4: 竹久夢二 《榛名山賦》 1931年 竹久夢二伊香保記念館
5: 竹久夢二 《青春譜》 1930年 個人蔵
6: 恩地孝四郎 [初公開]《あやめ》 1943年
7: 川西 英《夢二のコマ絵模写2、6》大正期
8: 川西 英 《交響楽》 1910年代
9: 《川西英手製「竹久夢二木版貼り交ぜ 千代紙」》大正~昭和初期

会期
2011年11月11日(金)~ 12月25日(日)

開館時間
午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)

休館日
毎週月曜日

主催
京都国立近代美術館
NHK京都放送局
NHKプラネット近畿
毎日新聞社

協賛
大伸社

観覧料
  当日 前売り 団体(20名以上)
一 般 1,200 1,000 1,000
大学生 800 600 600
高校生 400 200 200
中学生以下 無料 無料 無料

※本料金でコレクション展もご覧いただけます。
※障害者手帳をお持ちの方と付添者(1名)は無料。
 (入館の際に証明できるものをご提示ください)
※前売券の主な取り扱い
 チケットぴあ (Pコード:764-798)
 ローソン   (Lコード:53018)
 ほか主要プレイガイド
 コンビニエンスストアなどで販売予定
 ※前売券は、9月1日から11月10日までの期間限定販売

mooShow
loading

関連イベント
記念講演会
■「竹久夢二―芸術家コロニーの視点から」
海野弘氏(美術評論家)
日時:11月19日(土)午後2時から
会場:京都国立近代美術館1F講堂
定員:100名(聴講無料、当日午前11時から受付にて整理券を配布します)

特別解説会
■「川西英コレクションについて」
山野英嗣(京都国立近代美術館学芸課長)
日時:12月3日(土)午後2時から
会場:京都国立近代美術館1F講堂
定員:100名(聴講無料、当日午前11時から受付にて整理券を配布します)

記念コンサート
■「川西英コレクション収蔵記念展 夢二とともに」
日時:12月17日(土)午後2時~3時
会場:京都国立近代美術館1Fロビー
※観賞無料、先着100席

詳細は<詳細はこちら>



―「前衛」表現を代表する作家たち

<川西英コレクション>のもう一つの柱は、いわゆる「前衛」と呼ばれる美術家たちの作品も含まれていることです。カンディンスキーに感化され、わが国の「抽象」表現の先駆者のひとりと目されている恩地孝四郎は、これまで未公開の試し刷り《あやめ》を川西英に送り、版画家としてより高い次元から、自らの創作について川西英にも意見をも求めていました。加えて恩地は、中国で撮影した写真作品も川西英に譲っています。さらに、わが国の1920年代「前衛」活動の中心人物であった村山知義の貴重なリノカットによる版画作品が含まれるとともに、後年漫画家・田河水泡として有名になる高見澤路直が初期に制作した、おそらく現存する唯一の作品があるのも驚きです。こうした作品は、川西英の進取の精神に満ちた創造性を物語るものとして、間違いなく本コレクションの見逃せない特色を示しているのです。


― 芸術家の交遊が生んだ幻の<川西英コレクション>

これまで夢二については、代表作《黒船屋》(1919年)をはじめとする長田幹雄氏のコレクションを母体とした竹久夢二伊香保記念館、岡山の夢二の生まれ故郷に松田基氏のコレクションを核に開館した夢二郷土美術館、さらには夢二と親交があった河村幸次郎氏のコレクションや、公立美術館でも天江・島田コレクションを擁する宮城県美術館など、多数の夢二コレクションが知られています。
 京都国立近代美術館の<川西英コレクション>も、こうした夢二コレクションの新たな一角をしめてゆくことは間違いなく、何といっても本コレクションの大きな特色は、他のコレクションとは異なって、川西英と竹久夢二というともに芸術家同士の交流のなかから生まれたものだということでしょう。
 このことを裏づけるように、川西英は夢二から送られてきた手紙をスクラップ帖に大切にはりつけて保管していました。夢二は川西英に「たんねんに集めて下さって嬉しくおもいます」と、手紙に記していました。はじめは夢二のコマ絵を模写するなど、川西英は夢二に夢中になっていましたが、川西英が版画家として立つようになってからは、むしろ交友のあった他の美術家と対等に、川西英は夢二を強く意識するまでになっていたと思われます。こうした手紙からも、ふたりの知られざる友情が伝わってきます。


竹久夢二(1884-1934)

岡山県邑久郡本庄村に酒屋を営む竹久菊蔵の次男として生まれます。本名は茂次郎。神戸中学に入学するも中退、福岡県八幡村に一家で移住します。その後家出して上京し、早稲田実業学校に学びました。『中学世界』に投稿したコマ絵が入選、この時「夢二」の名を用いました。1909年に、最初の画集『夢二画集 春の巻』を刊行し、好評を博します。
 1912年に京都府立図書館で「第一回夢二作品展覧会」を開催。この間に、最初の妻・たまきをモデルに「夢二式」と呼ばれた美人画を発表し、一大ブームを巻き起こしました。
 1930年には、実現にはいたりませんでしたが、「手による産業」の育成を提唱して「榛名山美術研究所建設につき」の宣言文を発表しています。1931年に渡米、翌年にはヨーロッパをまわり、ベルリンではヨハネス・イッテンに主宰する「イッテン・シューレ」で日本画を指導。このときに使用したテキストや墨画は、イッテン家遺族から京都国立近代美術館に寄贈されています。
 1933年に帰国し、晩年はデザインにも関心を示していましたが、翌年、肺結核のため、療養先の信州富士見の高原療養所で亡くなりました。


川西 英(1894-1965)

神戸市に代々続いた回船、穀物商の七男として生まれました。本名は英雄。神戸商業学校を卒業の後、1922年から1960年まで兵庫(後の神戸)東出郵便局長もつとめました。仕事を続けるかたわら、山本鼎の版画に感動して木版画の制作をはじめ、1923年に第五回日本創作版画協会展に初入選。1928年には、第七回国画会展に《曲馬》で初入選しました。また国際展にも出品し、代表作に《神戸百景》《兵庫百景》などがあります。さらに竹久夢二に私淑するとともに、神戸に取材した港風景やサーカスを主題にした異国趣味的な作品も高く評価され、多くの愛好家にも恵まれています。
 川西英の三男として生まれ、<川西英コレクション>を引き継がれた川西祐三郎氏(1923年生まれ、神戸市東灘区在住)も、父・英に師事し、2010年には神戸市立博物館で大規模な個展が開催されました。


広報資料
チラシ  PDF形式(860KB)

 


このページの先頭へ