シビル・ハイネン:テキスタイル・アートの彼方へ


シビル・ハイネン:テキスタイル・アートの彼方へ
シビル・ハイネン
《シュピーゲル劇場のカーテン》 2006年
  京都国立近代美術館はその活動の早い段階から、いわゆる純粋美術だけではなく工芸やデザイン、建築など近・現代の造形活動を幅広く取りあげてきました。テキスタイル・アートもその例外ではなく、早くも1971年には日本の若い染織作家たちの実験的な試みを紹介する展覧会「染織の新世代」を開催しています。1970年代半ばには日本の現代テキスタイル・アートの展開に大きな影響を与えた歴史的に重要な二つの展覧会、「今日の造形〈織〉ヨーロッパと日本」(1976)と「今日の造形〈織〉アメリカと日本」(1977)を開催しました。当館はテキスタイル・アートを現代の造形活動の一つとして、現代美術と同等の敬意と注目を払っていること、テキスタイル・アートの作家たちが他の諸分野で活動する美術家たちと対話が可能な、ジャンルを超えた現代的問題意識を共有することへの期待とを、これらの展覧会を通じて明確に表明してきました。
  シビル・ハイネン(1961年オランダ生)は、1992年に京都で開催された第3回国際テキスタイル・コンペティション’92において優秀賞を受賞し、その斬新な造形と素材の使用とが大きな注目を集めました。また、1996年に当館が開催した展覧会「テキスタイルの冒険―現代オランダの4人のアーティスト」でも、金泊を塗布したゴム・シートの作品で私たちに新鮮な衝撃を与えてくれました。素材に通常の織布を用いない彼女の作品は、しかし確実にテキスタイル・アートの文脈上に位置しており、同時に、その作品はジャンル横断的な現代の造形として彫刻的な力強さに満ちています。
  今回シビル・ハイネンは、京都国立近代美術館で全く新しい作品に挑戦します。1階ロビーから会場へと誘う白い人工芝の素材、床から天井へ流れるように連続するこのユニークな素材の使用により、会場全体が一つの立体作品へと変貌します。白い人工芝は空間を分節するために彫刻的に用いられ、同時に、その素材の平面性と表面の微妙なマチエールが、建築的なこのインスタレーションに強く絵画的な印象を与えます。作品が彫刻的かつ絵画的であるという両義性は彼女の作品に一貫する特徴であり、その作品の印象と解釈は鑑賞者の一人一人によって異なるものとなるでしょう。しかし会場を体験した多くの鑑賞者は、彼女がジャンルや素材の枠組みを曖昧にすることで私たちの日常的な認識のプロセスを揺さぶり、その曖昧で不安定な知覚の境界領域こそが、豊かな想像力の領域であることを伝えようとしていることに気付くことでしょう。
  京都国立近代美術館は、既に確立され評価を得ているテキスタイル・アートの物語を繰り返すのではなく、既成の安定したジャンルや枠組みを無効にする、挑戦的で流動的な美術の実践を紹介しようとしています。2007年にシビル・ハイネンの新作を紹介することは、1970–80年代に大きく開花したテキスタイル・アートの可能性とその批評性とを、今日的な状況を踏まえた上で再検証する上で重要であると考えます。それは、「テキスタイル・アート」として語られる実践に対し、この述語が未だに有効なものであるのかという検証にもなり得るでしょう。


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関連リンク
シビル・ハイネン 公式サイト

会期
平成19年6月19日(火)〜7月16日(月・祝)

休館日
毎週月曜日

主催
京都国立近代美術館

協賛
モンドリアン財団、オランダ総領事館

協力
Ten Cate Thiolon b v , TenCate Grass / PANalytical, The Analytical X-ray Company / Hastex International K.K. / Colandis, The Cleanroom Technology Company / City of Almelo/ De Kok, Accountants and Consultants / 京阪電鉄

観覧料
  個人 団体(20名以上)
一般 420円 210円
大学生 130円 70円
高校生 70円 40円
中学生以下 無料 無料


広報資料
ポスター デザイン案
(2007/06/08)

チラシ  PDF形式(889KB)
(2007/06/08)



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