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展覧会揺らぐ近代 日本画と洋画のはざまに

揺らぐ近代 日本画と洋画のはざまに

揺らぐ近代

田村宗立 《越後海岩図屏風》 1903年 絹本油彩・六曲一隻屏風 京都国立近代美術館蔵

日本の近代絵画にとって、「日本画・洋画とは一体何か」というテーマを、改めて歴史的に問い直す展覧会で、自明であると思われている「日本画・洋画」両者の表現のまさに「はざまに位置する」作品・作家に注目し、近代絵画の再考を目指します。高橋由一と狩野芳崖からはじまる日本画と洋画の並存、この100年以上にわたって続いてきた近代日本に特有の美術状況を見直すことは、「近代」「日本」「美術」を再考することにも通じるでしょう。また萬鐵五郎、岸田劉生、小杉放菴、秦テルヲなど作家個人にとっての日本画・洋画の存在理由を検証し、実制作上の問題にも迫ります。

   「揺らぐ近代 日本画と洋画のはざまに」展をご覧いただくために

   電子メール討論会:「揺らぐ近代 揺らいでいるのはなにか?」(2月20日まで)

※会期中展示替えを行います。前期展示は1月10日から2月4日まで、後期展示は2月6日から2月25日までです。各作品の展示期間については展示目録をご覧下さい。


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関連イベント
記念講演会「日本画と洋画のはざま 関西画壇を中心に」
講師:古田 亮(東京藝術大学大学美術館助教授・東京国立近代美術館特別研究員)
日時:1月20日(土)午後2時~午後3時30分(当日午前11時から整理券配布)
会場:京都国立近代美術館 1階講堂/定員100名、聴講無料

シンポジウム「揺らぐ近代 日本画と洋画のはざまに」
パネリスト:岩城見一(京都国立近代美術館長)
  古田 亮(東京藝術大学大学美術館助教授・東京国立近代美術館特別研究員)
  山野英嗣(京都国立近代美術館主任研究員)
※上記の者による各30分ほどの発表の後、参加者を含めてディスカッションを行いたいと思います。
日時:2月25日(日)午後1時30分~午後4時(当日午前11時から整理券配布)
会場:京都国立近代美術館 1階講堂/定員100名、聴講無料

他館での展覧会
関連開催展「堂本印象の挑戦——日本画ってなんだろう」
会期:1月5日(金)~4月8日(日)
主催・会場:京都府立堂本印象美術館

京都府堂本印象美術館・学校法人立命館 共催イベント
後援:京都新聞社
講演会「揺らぐ近代の美意識」
講師:山野英嗣(京都国立近代美術館主任研究員)
日時:1月28日(日)午後2時~午後3時30分
会場:京都府立堂本印象美術館/先着30名、聴講無料
※ただし、「堂本印象の挑戦——日本画ってなんだろう」の観覧券(半券)が必要

シンポジウム「日本画の変貌 伝統と近代化のはざまで」
基調講演:富山秀男(美術評論家)「日本画の近代」
コーディネーター:神林恒道(立命館大学先端総合学術研究科教授)
パネリスト:古田 亮(東京藝術大学大学美術館助教授)
     島田康寬(立命館大学文学部教授)
     尾崎信一郎(鳥取県立博物館美術振興課長)
日時:2月10日(土)午後2時~午後4時
会場:立命館大学(衣笠キャンパス)創思館/先着100名、聴講無料

会期
平成19年1月10日(水)~2月25日(日)

休館日
毎週月曜日
※ただし、2月12日(月・祝)は開館、翌2月13日(火)は休館

展示作品
揺らぐ近代 日本画と洋画のはざまに 展示目録

主催
京都国立近代美術館、東京国立近代美術館

協力
日本航空、京阪電鉄

助成
財団法人UFJ信託文化財団

観覧料
  当日 前売り 団体(20名以上)
一 般 850 700 600
大学生 450 350 250
高校生 250 150 100
中学生以下 無料 無料 無料
前売券発売所:チケットぴあ・ファミリーマート(Pコード:687-174)
ローソンチケット(Lコード:59217)ほか主要プレイガイド、
コンビニエンスストアなど

「揺らぐ近代 日本画と洋画のはざまに」展をご覧いただくために
このたび東京国立近代美術館の平成18年度特別展「揺らぐ近代 日本画と洋画のはざまに」展が、当館でも開催の運びとなりました。
本展覧会には、わが国近代美術史の第一ページを飾る狩野芳崖・高橋由一をはじめ、川上冬崖、橋本雅邦、竹内栖鳳、浅井忠、黒田清輝、岸田劉生、藤田嗣治から川端龍子、熊谷守一にいたるまで、まさに「近代日本美術」のメインストリームを形成する画家たちが、新たな絵画創造を目指すにあたり、「日本画・洋画」双方のジャンルの「はざま」にまたがる表現をむしろ積極的に取り入れてきたのではないか、という主張が込められています。
もちろん「洋画家」を志した油絵画家たちが、西欧の絵画技法をいかに摂取するか、いかに事物の存在を迫真的(写実的)に描写するか、という切実な問題と向き合っていたことはいうまでもありません。しかし高橋由一が、吉原の遊郭を象徴する典型的な「日本女性」を主題にしたり、浅井忠が日本画を描き、黒田清輝が《湖畔》で日本情緒をたっぷり演出してみせたのは何故でしょうか。一方「日本画」でも、狩野芳崖が西洋からの輸入顔料を用いて鮮やかな色彩効果を試し、横山大観も印象派を意識して、竹内栖鳳がヴェニス風景を描き、「洋画」に接近しようと挑んだかに見えます。
当館では、この展覧会を告知するポスターに、迷うことなく彭城貞徳(さかきていとく)の《和洋合奏之図》(1906年頃、長崎県美術館蔵)の作品を選びました。正装のいでたちでヴァイオリンを弾く女性、そして尺八をふく男性を描いたこの作品には、音楽の世界における「洋楽と邦楽」のコラボレーションが示され、それはまさに「日本画」と「洋画」の交流とも響きあっているでしょう。そして、ヴァイオリンと尺八による耳にしたこともないような合奏を、演奏者にはさまれて、何とも形容しがたい表情でじっと耐えるように聞いている「はざまちゃん」と思わず名づけたくなるような女の子こそ、この展覧会のシンボルといって過言ではありません。
さらに、いわばこうした「日本画と洋画」との異種混合こそ、わが国近代美術の表現様相を端的に示すものであり、その背後には、日本絵画の「形式(かたち)」を成り立たせる「要因」が潜んでいることも見逃せないでしょう。その「要因」とは、日本の伝統的な建築様式を指し、縦長の掛け軸が、そもそも畳敷きの座敷の床の間を飾るものであり、屏風が日本家屋の間仕切りの役目を果たし、「絵馬」もまた見上げるように掲げたりといったことと深く結びついているのです。そして、現代ではすっかり見慣れた「額装された日本画」というスタイルの誕生も、日本画が日本家屋から離れ、洋画と同じように、美術館での展覧会という発表形式や、オフィスなどの空間に飾られることを、はじめから前提としているからにほかなりません。
こうした事柄も理解していただけるように、今回の展覧会では、畳や板敷きの展示空間にも作品を陳列し、和洋折衷のわが国生活文化の「揺らぐ近代」の様相にも思いをはせていただけるような趣向をこらしています。
(主任研究員・山野英嗣)

広報資料
展覧会チラシ(A4)
PDF形式(2,648KB)



巡回先
東京国立近代美術館 平成18年 11月7日(火)~12月24日(日)


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