結成100年記念 白馬会展 明治洋画の新風

 わが国の近代美術を語る上で、1896年に黒田清輝を中心に結成された洋風美術団体「白馬会」は重要な位置をしめている。しかし意外にも、これまで同会の活動の全容が明らかにされたことはなかった。本展は結成100年を記念して、同会が開催した13回の展覧会に出品きれた総計4800点を超える作品のなかから、「白馬会」の作風を特徴づけると思われる代表作を選び、その実像に迫ろうと試みたものである。具体的には、開催館であるブリヂストン美術館、久留米の石橋美術館、そして当館がそれぞれ調査を分担し、とりわけ当時の新聞や雑誌文献に掲載された展評などに基づいてなお不明瞭であった出品作を確定して、それらの現存作品を可能な限り本展に加えることに重点を置いた。その結果、はじめて紹介きれる作家・作品も少なくなく、また出品作確定の成果も、本展図録のなかで「白馬会 全13回の記録」としてまとめられた。本展は、黒田清輝の代表作《湖畔》や《智・感・情》、さらに藤島武二や和田英作、青木繁らの大作が一堂に会するというまたとない機会によって、改めて「白馬会」の存在を強く印象づけたが、同会が本来は在野団体として自由な活動を標榜していたにもかかわらず、東京美術学校の教官や多数の卒業生の参加によって、わが国洋画界のアカデミズムの形成に深くかかわっていたこと。さらには、外光派絵画と近代風景画の問題、そして構想画、風俗画、裸体画、浪漫主義絵画の登場など、わが国明治洋画界における多様な様相をも浮かぴ上がらせる貴重な場となった。本展がこの「白馬会」の活動を4期に分けて紹介したことも、それらの問題点をより鮮明化させる要因となっていたようだ。多数の「白馬会展」出品作品を所蔵する東京芸術大学の特別協力をえたことも、本展の内容の充実に欠かせぬものであった。(山野英嗣)

Starting Anew in the Meiji Period:A Retrospective Exhibition of Paintings from the Hakubakai Group 1896-1911

 Hakubakai (White Horse Society), which was organized in 1896 by Kuroda Seiki and other painter's, a group of painter's of yoga, Western-style paintings. Occupies an important place in modern Japanese art. However, surprisingly, its' activity in its entireSty has never been brought to light. The exhibition was organized to commemorate the centennial anniversary of Hakubakai's founding and tried to show what it was really like by including the most outstanding works that characterize the Hakubakai's tendencies which were selected from over 4,800 paintings exhibited in thirteen exhibitions the Hakubakai had during its existence, The three museums where the exhibition is being held, the Bridgestone Museum of Art, Ishibashi Foundation, Tokyo, Ishibashi Museum of Art, IshibaShi Foundation. Kurume and The National Museum of Modern Art, Kyoto, shared the research, going over the reviews which appeared in newspapers, magazines and documents of the time to authenticate the exhibited works, some of which were hitherto questionable, and tried to exhibit as many newly authenticated paintings as possible. As a result, there were some artists and works which were introduced for the first time. The result of the authentication was included in the accompanying catalogue as "Hakubakai-the Record of 13 Exhibitions. "
 The exhibition succeeded in attracting an interest in the Hakubakai again with a rare showing of Kuroda's outstanding works, Lakeside, and Wisdom, Impression, Emotion, as well as the large scale works by Fujishima Takeji, Wada Eisaku, Aoki Shigeru and others. But although Hakubakai was an organization out of the mainstream which advocated freedom in the members' activities, it was deeply involved with the establishment of academism in the yoga circle in Japan when the teachers and alumni of the Tokyo School of Fine Arts (Tokyo Bijutsu Gakko) began to join it. It also brought various aspects of the yoga circle in the Meiji period to the surface such as the issue of pleinairism and modern landscape painting and the emergence of Kosoga (works that communicate an idea or principle). Genre painting. nudes and Romantic painting. Dividing and showing the activities of Hakubakai in four sections sharpened these issues.
 Special cooperation by the Tokyo National University of Fine Arts and Music, which houses many works by the Hakubakai artists which are exhibited, was invaluable in giving depth to the exhibition. (Hidetsugu Yanano)

共催
東京国立文化財研究所、日本経済新聞社 / BridgeStone Museum of Art, lshibashi Foundation, lshibashi Museum of Art, Ishibashi Foundation, Nihon Keizai Shimbun, Inc.
会期
12月10日(火)〜平成9年1月26日(日) / 10 December 1996-26 January 1997
入場者数
22,960人(1日平均656人) / 22,960 (656 per day)
出品目録
作者名 作品名 制作年 材質・技法・形状 寸法(cm)
黒田清輝 昔語り下絵(10点)  
構図 II 1896 油彩・カンヴァス 41.1×63.3
舞妓 1898 油彩・カンヴァス 94.4×46.8
1896 油彩・カンヴァス 98.3×47.6
男と舞妓 1896 油彩・カンヴァス 78.0×51.5
舞妓 1896 油彩・カンヴァス 93.2×46.0
仲居 1896 油彩・カンヴァス 93.8×47.7
1896 油彩・カンヴァス 78.8×42.3
草刈り娘 1896 油彩・カンヴァス 59.8×44.1
清閑寺景 1896 油彩・カンヴァス 29.7×48.8
清閑寺門 1896 油彩・カンヴァス 35.6×26.4
黒田清輝 昔語り画稿(18点)  
構図 1896 木炭・紙 47.0×.63.0
舞妓半身像 1896 木炭・紙 63.0×47.0
女の顔 1896 木炭・紙 63.0×47.0
1896 木炭・紙 63.0×47.0
1896 木炭・紙 63.0×47.0
男着衣半身像 1896 木炭・紙 63.0×47.0
男裸体半身像 1896 木炭・紙 63.0×47.0
男の脚 1896 木炭・紙 63.0×47.0
仲居全身像 1896 木炭・紘 63.0×47.0
仲居半身像 1896 木炭・紙 63.0×47.0
舞妓全身像 1896 木炭・紙 63.0×47.0
舞妓半身像 1896 木炭・紙 63.0×47.0
黒田清輝 美人散歩(逍遥) 1895 油彩・カンヴァス 57.6×62.7
黒田清輝 大磯鴫立庵 1896 油彩・板 25.0×36.2
黒田清輝 波打ち際の岩 1896 油彩・板 24.3×32.8
黒田清輝 智・感・情 1897-99 油彩・カンヴァス 各180.6×99.8
黒田清輝 自画像(ベレー帽) 1897 油彩・板 36.0×25.3
黒田清輝 魚舟着岸 1897 油彩・板 27.7×38.0
黒田清輝 湖畔 1897 油彩・カンヴァス 69.0×84.7
黒田清輝 母子 1897 油彩・カンヴァス 96.6×29.0
黒田清輝 砂浜乾魚 1897 油彩・カンヴァス 27.3×39.5
黒田清輝 書見 1898 油彩・カンヴァス 59.0×40.5
黒田清輝 樹蔭 1898 油彩・カンヴァス 78.0×93.7
黒田清輝 逗子五景 1898 油彩・板 各23.9×32.3
久米桂一郎 残■下絵 1898 油彩・カンヴァス 35.5×45.5
合田清 日本武将艦(12点)  
新田義興 1897 木口木版 15.0×10.6
児島高穂 1897 木口木版 15.4×11.0
楠正儀 1897 木口木版 15.4×11.0
村上義光 1897 木口木版 15.5×10.9
北条時宗 1897 木口木版 15.1×10.7
弁内侍 1897 木口木版 15.1×10.6
伊賀局 1897 木口木版 15.4×10.6
宇都宮公綱 1897 木口木版 15.5×10.6
藤原藤房 1897 木口木版 15.3×10.7
北畠顕家 1897 木口木版 15.3×10.7
小山田高家 1897 木口木版 15.4×10.7
桜内茲俊 1897 木口木版 15.1×10.6
藤島武二 池畔納涼 1898 油彩・カンヴァス 152.0×194.4
岡田三郎助 むぎわら細工 1896 油彩・カンヴァス 32.8×26.0
和田英作 少女新聞を読む 1897 油彩・カンヴァス 54.8×84.5
和田英作(京都会場不出品) 疲頭の夕日 1897 油彩・カンヴァス 126.×189.3
安藤仲太郎 東寺 1896 油彩・カンヴァス 28.6×45.3
小林万吾 農夫晩帰 1898 油彩・カンヴァス 170.1×109.1
自瀧幾之助 稽古 1897 油彩・カンヴァス 136.5×197.0
湯浅一郎 松林 1897 油彩・カンヴァス 32.7×45.7
湯浅一郎 漁夫晩帰 1898 油彩・カンヴァス 139.2×200.3
長原孝太郎 牛肉屋の二階 1892 水彩、ペン、インク・紙 18.6×24.3
長原孝太郎 焼芋屋 不詳 水彩、インク・紙 23.0×30.6
ロドルフ・ウィッツマン 風景 不詳 油彩・カンヴァス 100.0×80.3
磯野吉雄 田圃の斜陽 1898 油彩・板 23.1×32.7

作者名 作品名 制作年 材質・技法・形状 寸法(cm)
広瀬藤平 1898 油彩・カンヴァス 88.0×121.5
ラファエル・コラン 夏の野 c.l889 油彩・カンヴァス 46.6×55.6
黒田清輝 少女・雪子十一才 1899 油彩・板 33.5×24.24
小代為重 シンガポール 1900 油彩・カンヴァス 21.3×28.0
小代為重 テームズ河畔 1900 油彩・カンヴァス 22.8×31.9
藤島武二 造花 1901 油彩・カンヴァス 136.5×194.0
岡田三郎助 自画像 1899 油彩・カンヴァス 48.0×37.0
両用三郎助 セーヌ上流 1900 油彩・カンヴァス 49.8×60.2
両用三郎助 門づけ 1900 油彩・カンヴァス 157.5×108.1
白瀧幾之助 草刈童 1899 油彩・カンヴァス 91.3×60.7
白瀧幾之助 少女 1900 油彩・カンヴァス 45.7×60.6
湯浅一郎 画室 1901−03 油彩・カンヴァス 159.5×106.5
中沢弘光 少婦 1900 油彩・カンヴァス 88.0×68.4
中沢弘光 非水像 1901 油彩・カンヴァス 46.0×33.5
矢崎千代治 教鵡 1900 油彩・カンヴァス 73.7×58.8
北蓮蔵 御殿山の雪 c1899 油彩・板 23.8×32.9
山本森之助 落葉 1900 油彩・カンヴァス 70.6×99.8
赤松麟作 夜汽車 1901 油彩・カンヴァス 161.0×200.0
田中寅三 山村の夕暮 1900 油彩・カンヴァス 45.4×60.7
小西正太郎 残雪 1898 油彩・板 23.8×32.9
鶴田精三 雲間を洩るる光 1899 油彩・板 23.4×32.5
郡司卯之助 根岸の春 不詳 油彩・カンヴァス 34.6×45.5
内野猛 浜辺の家 不詳 油彩・板 23.5×32.8
宇和川通喩 風景 1900 油彩・板 23.5×32.5
ラファエル・コラン オデオン座天井画下絵 c.1890 油彩・カンヴァス 89.0×33.0
黒田清輝 庭の雪 1905 油彩・板 24.8×26.0
藤島武二 天平の面影 1902 油彩・カンヴァス 197.5×94.0
藤島武二 婦人と朝顔 1904 油彩・カンヴァス 46.0×45.6
藤島武二 夢想 1904 油彩・カンヴァス 46.6×32.3
岡田三郎助 ファルギエール 1899 油彩・カンヴァス 40.9×25.1
岡田三郎助 薔薇の少女 1901 油彩・カンヴァス 119.0×78.8
岡田三郎助 舞子 1903 油彩・カンヴァス 60.6×45.5
和田英作 グレー風景 1902 油彩・カンヴァス 45.5×33.5
和田英作 読書 1902 油彩・カンヴァス 73.6×54.0
和田英作 思郷 1902 油彩・カンヴァス 95.7×66.9
和田英作 塚本靖肖像 1901 油彩・カンヴァス 44.2×36.5
和田英作(京都会場不出品) くものおこなひ(衣通姫) 1905 油彩・カンヴァス 220.0×140.0
白瀧幾之助 さらひ 1903 油彩・カンヴァス 76.0×101.0
湯浅一郎 徒然 1900 油彩・カンヴァス 133.0×68.5
中村勝治郎 洗い場 不詳 油彩・板 23.0×32.5
中沢弘光 冬の山麓 1905 油彩・カンヴァス 118.0×75.0
中丸精十郎 天使像 不詳 ガラスによるモザイク 75.2×32.7
山本森之助 首里の夕月 1902 油彩・カンヴァス 92.5×73.7
三宅克己 雨後のノートルダム 1902 水彩・紙 36.5×25.8
小林鐘吾 1903 油彩・カンヴァス 46.1×60.9
大束昌可 秋景色 不詳 油彩・カンヴァス 60.8×45.4
森川松之助 紅葉 不詳 油彩・カンヴァス 60.8×45.0
塩見競 葱洗い 不詳 油彩・カンヴァス 60.5×45.4
大八木一郎 風景 不詳 水彩・紙 29.5×43.5
和田三造 牧場の晩帰下絵 不詳 油彩・カンヴァス 78.0×67.0
戸田謙二 風景 1901 油彩・カンヴァス 61.0×81.0
時任雕熊 風景 不詳 油彩・カンヴァス 60.8×45.2
渡辺亮輔 水汲み 1902 油彩・カンヴァス 130.0×89.0
青木繁 黄泉比良坂 1903 色鉛筆、パステル、水彩・紙 48.5×33.5

作者名 作品名 制作年 材質・技法・形状 寸法(cm)
青木繁 闇威弥尼 1903 油形・板 14.7×10.3
青木繁 海の幸 1904 油彩・カンヴァス 70.2×182.0
青木繁 海景(布良の海) 1904 油彩・カンヴァス 35.8×72.0
青木繁 大穴牟知命 1905 油彩・カンヴァス 75.5×127.4
平井武雄 鎌倉海岸 1900 油彩・板 23.7×32.8
太田喜二郎 不詳 油彩・カンヴァス 53.6×43.4
関屋敬次 夕の湖 不詳 油彩・カンヴァス 33.8×45.5
小林千古(京都会場不出品) ミルクメイド 1897 油彩・カンヴァス 69.0×50.8
ラファエル・コラン(京都会場不出品) 帽子を持つ婦人 1894 油彩・カンヴァス 194.0×112.0
久米桂一郎 村娘 1894 油彩・カンヴァス 54.5×38.0
久米桂一郎 清水秋景図 1893 油彩・カンヴァス 55.5×46.0
長原孝太郎 自画像 1900 油彩・カンヴァス 45.5×33.5
黒田清輝 森の中 1910 パステル・紙 40.2×15.1
黒田清輝 花野 1907-15 油彩・カンヴァス 126.5×181.2
藤島武ニ ルツェルン 1908 油彩・板 23.5×32.8
藤島武ニ スイス風景 1907 油彩・板 23.6×32.8
中沢弘光(京都会場不出品) 1907 油彩・カンヴァス 188.0×133.0
青山熊治 アイヌ 1909 油彩・カンヴァス 148.1×185.0
山脇信徳 雨の夕 1908 油彩・カンヴァス 33.5×45.5
栗原忠二 月島の月 1909 油彩・カンヴァス 90.5×117.5
山口亮一 秋の月 1909 油彩・カンヴァス 45.2×60.7

新聞雑誌関係記事
●新聞記事
日経:11月6日(植野健造)
朝日:11月14日(夕)(田中三蔵)
日経:12月13日(佐藤豊)
毎日:12月14日(夕)(田原由紀雄)
読売:12月20ロ(夕)(安)
日経:12月22日(宝生正彦)
産経:12月22日(早)
京蔀:平成9年1月18日(山中英之)
●雑誌記事
視る 353号 11月号(西田桐子)
週刊朗日 平成9年1月24日(新藤信)
芸術新潮 2月号

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