テキスタイルの冒険−現代オランダの4人のアーティスト−展

現在のオランダを含むフランドル地方は、かつては羊毛の一大産地として、その輸出によって栄えたが、染織の分野では美術的な遺品が少ない。一方、隣のベルギーは多くのタピスリーの傑作を生み、また、スカンディナヴィア諸国では力強い織物芸術の伝統が生きている。オランダでは、17、8世紀にヴェネチアから移入されて盛んに作られた白い麻糸によるボビン・レースの製品や今世紀初め以来、白い麻地に緑や黄、ブルーなど明快な色彩のボーダ・チェックを織り込んだテーブル・クロスやナプキンが知られているものの、情念のまつわる織物の世界や、平面に色彩を展開してゆく染めの世界は、殆ど育たなかった。むしろバウハウス・デザインの影響を受けたデザイナーたちが、今世紀のオランダの染織の基礎を築いたといっても過言ではないだろう。この展覧会に出品した4人の作家たちの作品も、その文脈から大きく外れるものではない。 この展覧会では、染織的な素材や技法を用いて造形を試みる4人の作家を紹介したが、マルヤン・へルックとレオッネ・ヘンドリクセンがインスタレーション(正確には、その一部)を、マリアン・バイレンガがウオール・ハンギングを、シビル・ハイネンがタペストリー及び三次元の作品を見せた。僅かにヘンドリクセンが染めの技術を用いているのみで、他の3人は草、紙、ゴム、木材、既製の織物などを用い、壮大な観念の世界を展開していた。バイレンガのみは、生垣や野原に生える植物を用いて、小品の中に独自の抒情的な世界を見せた。
この展覧会は平成8年度の国際交流展として開催されたもので、本館での開催後は、東京の目黒区美術館で開催された。また、本館での会期中、(財)堂本印象記念近代美術振興財団の主催によって、4人の作家によるワークショップが川島テキスタイル・スクールの協力を得て開催された。(加藤類子)

平成8年度京都国立近代美術館国際交流展
会期
9月3日(火)〜9月29日(日)
入場者数
10,849人(1日平均452人)
共催
目黒区美術館
出品目録
絵画
作者名 作品名 制作年 材質・技法・形状 寸法(cm)
マリアン・バイレンガ 無題 1991 馬毛・木綿 95.0×95.0
マリアン・バイレンガ 無題 1991 馬毛・木綿 95.0×95.0
マリアン・バイレンガ ラップ 1991 馬毛・木綿 120.0×270.0
マリアン・バイレンガ 無題 1992 馬毛・木綿 100.0×100.0
マリアン・バイレンガ 無題 1993 馬毛・木綿 180.0×90.0
マリアン・バイレンガ 無題 1993 馬毛・木綿 130.0×130.0
マリアン・バイレンガ 無題 1994 馬毛・木綿 105.0×115.0
マリアン・バイレンガ サンザシとコトリトマラズ 1995 紙(台紙)に植物 60.0×80.0
マルヤン・へルック 基本構想 1989 起毛ウール 280.0×280.0
マルヤン・へルック ヴェルヴェットシティーII 1991 木、ヴェルヴェット 300.0×800.0
マルヤン・へルック グリーン・グラウンド 1993 紙・インク 1500.0×100.0/
155.0×0.05
レオッネ・ヘンドリクセン 儀式用の敷物1,2 1992 アクリル塗料、親水性ガーゼ、顔料(粉末)、石膏の鉢 300.0×300.0
レオッネ・ヘンドリクセン モンゴル(さすらいシリーズI) 1992 アクリル塗料、親水性ガーゼ 137.0×137.0
レオッネ・ヘンドリクセン リヴォリ(さすらいシリーズI) 1992 アクリル塗料、親水性ガーゼ 132.0×132.0
レオッネ・ヘンドリクセン 松林 I (さすらいシリーズ) 1992 アクリル塗料、親水性ガーゼ、顔料(粉末) 130.0×132.0
レオッネ・ヘンドリクセン 松林 II (さすらいシリーズ) 1992 アクリル塗料、親水性ガーゼ、顔料(粉末) 130.0×154.0
レオッネ・ヘンドリクセン 黒い弔鐘(死者の庭シリーズ) 1995 アクリル塗料、親水性ガーゼ、和紙 143.0×97.0
レオッネ・ヘンドリクセン 青いバラ(死者の庭シリーズ) 1995 アクリル塗料、親水性ガーゼ 143.0×96.0
レオッネ・ヘンドリクセン 聖アン(死者の庭シリーズ) 1995 アクリル塗料、親水性ガーゼ、和紙、蝋 95.0×131.0
レオッネ・ヘンドリクセン アネッケ(死者の庭シリーズ) 1995 アクリル塗料、親水性ガーゼ、和紙、蝋 127.0×90.0
レオッネ・ヘンドリクセン 二つの蛹 1996 親水性ガーゼ、和紙、羊の角 80.0×35.0×14.0/
70.0×44.0×14.0
シビル・ハイネン 集合体1 1992 ゴム、アクリル塗料 130.0×130.0×90.0
シビル・ハイネン 重ねる 1993 ゴム、銅 360.0×240.0×20.0
シビル・ハイネン 発見 1995 木綿、蝋、金箔 260.0×220.0×20.0
シビル・ハイネン 赤いライン 1995 ゴム、銅 295.0×75.0×20.0

新聞雑誌等関係記事
新聞記事
産経:9月14日
朝日:9月18日
京都:9月28日(山中英之)
THE DAILY YOMIURI: 9月18日

雑誌記事
染織α1996年12月号(加藤類子)
視る350号8月号(加藤類子)
351号9月号(朝倉美津子/小林尚美)

このページの先頭へ