増殖するイメージ小牧源太郎遺作展

 本展は小牧源太郎(1906〜1989)没後はじめて開催された回顧展であり、初期から最晩年にいたる各時代の代表作を網羅するとともに、未公開作品をも含め、文字通りその画業の全貌をふりかえるにふさわしい展観となった。
周知のように、小牧源太郎は《夜》(福井県立美術館)や《民族系譜学》(京都市美術館)などの作品によって、わが国シュルレアリスムを代表する画家のひとりと目されている。そして戦前のシュルレアリスムの時代をへて、以後も日本の土俗信仰に根ざした民俗学的モチーフの摂取や独特の宇宙論的世界の探求を試み、「仏画的時代」「民俗学的時代」「宇宙空間的時代」と彼独自の造形思考に基づくまったくユニークな創作活動を展開した。
 小牧源太郎は生涯京都で制作を続けたが、そのゆかりの地で開かれる今回の大規模な遺作展に寄せられた期待も大きく、とりわけ1960年代から最晩年にかけて精力的に生み出された独創的な大作群は、驚くべき緻密な画面処理とともに他に類例のない「日本的感性」の表出と受けとめられ、本展は小牧源太郎再評価の機運を盛り上げる貴重な場となった。
 当館は平成6年度、小牧源太郎のご遺族から戦後の大作を含む9展の作品を寄贈いただいた。本展は、小牧家ご遺族の多大の協力、さらには多数の未公開資料を提供いただいた伊丹市立美術館の好意にも支えられ、一層充実した内容で開催の運びとなった。(山野英嗣)

Retrospective Exhibition of Gentaro Komaki−Propagating Images−

 This was the first retrospective exhibition of Gentaro Komaki (1906-1989) since his death in 1989, covering the entire career of Komaki from his early days to the final years, with the works most renowned in each period of his life, as well as those shown for the first time.
  As is generally known, Komaki is regarded as one of the most reputable Surrealist painters in Japan for his paintings, Night (Fukui Prefectural Museum of Art), Genealogy of a Race (Kyoto Municipal Museum of Art) and others. After his “Surrealist Period” in the prewar years, he ingested folklore motifs based on Japanese local beliefs and conceived his extraordinary cosmic world by developing his distinctive activities like his “Buddhist Period,” “Folklore Period” and “Cosmic Space Period” based on his unique concept of creation.
 This large-scale retrospective exhibition held in Kyoto, the place where Komaki spent his entire life, was welcomed with great anticipation. Especially his unique large-scale paintings which were created energetically from the 1960s to his final years, with their elaborate treatment of pictorial surfaces, which were recognizad as the emergence of the unparalleled “Japanese aesthetic.” The exhibition offered an invaluable opportunity for the reevaluation of the art of Gentaro Komaki.
 The nine works, including a large-scale painting from the postwar period, were donated in 1994 by the family of the artist to The National Museum of Modern Art, Kyoto. The exhibition was realized and enriched by the generous cooperation of the family of the artist, as well as by the support shown by the Itami City Museum of Art who supplied numerous reference materials which had not been released before. (Hidetsugu Yamano)

会期
8月27日(火)〜9月29日(日) / 27 August-29 September
入場者数
15,945 (1日平均532人) / 15,945 (532 per day)
出品目録
作品名 制作年 材質・技法・形状 寸法(cm)
Title Date materials Dimensions
マユ c.1935 油彩・板 15.8×22.7
エビ c.1935 油彩・板 15.8×22.7
鳥たち 1937 油彩・板 33.4×24.2
貝殻景観 1937 油彩・カンヴァス 100.0×117.0
1937 油彩・カンヴァス 112.0×130.5
民族病理学(祈り) 1937 油彩・カンヴァス 162.1×130.3
願望No.1 1938 油彩・カンヴァス 60.6×40.9
生誕譜No.1 1938 油彩・カンヴァス 53.0×72.7
生誕譜No.2 1938 油彩・カンヴァス 72.7×90.9
生誕譜No.3 1938 油彩・カンヴァス 53.0×72.7
この三つのもの(3点1組) 1939 油彩・カンヴァス 72.7×60.6
91.0×41.0
72.7×60.6
フェチッシュな風景 1939 油彩・カンヴァス 60.6×72.7
作品 1939 油彩・カンヴァス 60.6×72.7
入江のほとり 1939 油彩・カンヴァス 72.7×90.9
多義図形 1940 油彩・カンヴァス 130.3×162.1
ラディオラリア 1940 油彩・カンヴァス 130.3×162.1
アムレットNo.1 1940 油彩・カンヴァス 72.7×53.0
アムレットNo.3 1940 油彩・カンヴァス 72.7×60.6
積木と栗鼠 1941 油彩・カンヴァス 74.0×92.0
壁画(十一面観音像) 1943 油彩・カンヴァス 162.1×130.3
宝相華 1946 油彩・カンヴァス 72.7×90.9
散華天人 1946 油彩・カンヴァス 45.5×60.6
迦楼羅炎(B) 1947 油彩・カンヴァス 65.1×53.0
稲荷図No.1 1947 油彩・カンヴァス 72.7×60.6
稲荷図No.3 1948 油彩・カンヴァス 91.0×116.7
狐神図(稲荷図No.4) 1948 油彩・カンヴァス 130.5×162.0
道祖神No.1 1950 油彩・カンヴァス 131.0×162.0
紗鶏 1950 油彩・カンヴァス 130.0×112.0
道祖神No.4 1951 油彩・カンヴァス 162.1×130.3
道祖神No.5 1951 油彩・カンヴァス 130.3×112.1
夏の子No.2 1951 油彩・カンヴァス 90.9×72.7
飛行 1952 油彩・カンヴァス 72.7×90.9
坊さんいけばな 1952 油彩・カンヴァス 162.1×130.3
はなNo.1 1953 油彩・カンヴァス 72.7×9.8
はなNo.2 1953 油彩・カンヴァス 72.7×9.8
はなNo.3 1953 油彩・カンヴァス 72.7×11.2
花・シグナルNo.1 1953 油彩・カンヴァス 72.7×11.2
花・シグナルNo.2 1953 油彩・カンヴァス 162.1×130.3
風神 1953 油彩・カンヴァス 90.9×72.7
千人びなNo.3 1954 油彩・カンヴァス 117.3×91.5
アクヒ鳥(影絵日記No.2) 1956 油彩・カンヴァス 130.3×162.1
磔になった馬神(影絵日記No.3) 1956 油彩・カンヴァス 162.1×130.3
伊呂波仁保辺止 1957 油彩・カンヴァス 162.1×130.3
エスピリト・サントNo.6 1959 油彩・カンヴァス 156.5×194.5
アルマNo.6 1960 油彩・カンヴァス 53.0×45.5
作品No.1 1961 油彩・カンヴァス 162.1×130.3
アルマNo.8 1961 油彩・カンヴァス 196.9×175.7
アルマNo.16 1962 油彩・カンヴァス 197.0×176.0
狗・ク・Ku 1962 油彩、歯型(石膏)・カンヴァスボード 40.9×31.8
叉・サ・Sa 1962 油彩、歯型(石膏)・カンヴァスボード 45.5×37.9

作品名 制作年 材質・技法・形状 寸法(cm)
須・ス・Su 1962 油彩・歯型(石膏)・カンヴァスボード 53.0×45.5
アルマNo.18 1963 油彩・カンヴァス 197.0×176.0
エスピリティズモNo.2 1964 油彩・カンヴァス 90.9×181.8
ダラNo.2 1967 油彩・カンヴァス 60.6×45.5
印相ようちょ 1968 油彩・カンヴァス 197.0×175.8
エスピリティズモNo.8 1968 油彩・カンヴァス 197.0×175.8
妙法掌蔵間人華日輪相呪 1969 油彩・カンヴァス 197.0×175.8
景観No.4 1969 油彩・カンヴァス 116.7×91.0
景観No.10 1970 油彩・カンヴァス 116.7×91.0
忍仙陀羅尼No.1 1971 油彩・カンヴァス 175.8×197.0
印相陀羅尼No.1 1972 油彩・カンヴァス 175.8×197.0
ウンキュウ呪(コウ魚陀羅尼) 1974 油彩・カンヴァス 227.2×181.8
カリファ幻想No.13 1977 油彩・カンヴァス 194.0×167.0
金精倶融尊(外塵密教鈔より) 1978 油彩・カンヴァス 220.0×165.0
チンタムD・我が通底
(わたしの宇宙論No.1)
1980 油彩・カンヴァス 220.0×165.0
景観・我が通底 1981 油彩・カンヴァス 240.0×165.0
パット・パルマ (Patto Paruma)No.1 1982 油彩・カンヴァス 240.0×165.0
パット・パルマNo.2 1983 油彩・カンヴァス 240.0×165.0
パット・パルマNo.8 1984 油彩・カンヴァス 240.0×165.0
エクスーデ(Ekusude)No.1 1985 油彩・カンヴァス 240.0×165.0
大仙院の石庭(盛砂) 1986 油彩・カンヴァス 60.6×72.7
降神盛砂図 1987 油彩・カンヴァス 240.0×165.0
ラブミイ(RABUMii) 1988 油彩・カンヴァス 240.0×165.0
マイミー・MAIMII「若い日の私」 1989 油彩・カンヴァス 240.0×165.0
《この三つのもの》の素描 1939 鉛筆・紙 27.5×21.2
《この三つのもの》の素描 1939 鉛筆・紙 26.0×10.0
鳥紋図形 1941 鉛筆・紙 27.8×35.8
焔(ほのほ)其一 1946 鉛筆・紙 24.0×33.0
《狐神図(稲荷図No.4)》 の素描 1948 鉛筆・紙 26.0×32.2
命題・オシラ神図(2) 1948 鉛筆・紙 25.0×31.0
命題 1949 鉛筆・紙 26.0×32.0
命題・サトリ譚 1950 墨・紙 23.8×18.8
《道祖神図No.1》の初期素描 1950 鉛筆・紙 27.8×35.8
無題 1950 墨・紙 22.4×16.2
道祖神図 c.1950 鉛筆・紙 28.0×25.0
塞の神図 c.1951 墨・紙 16.8×19.4
サンパウロのヘソ(1) 1957 鉛筆、インク・紙 25.0×18.0
サンパウロのヘソ(2) 1957 鉛筆、インク・紙 25.0×18.0

参考資料
東大寺・戒壇院四天王模様(天沼俊一博士復元図の模写) 1945 水彩、鉛筆・紙 19.8×17.0
法隆寺・玉虫厨子模様(天沼俊一博士復元図の模写) 1945 水彩・紙 20.4×17.0
室生寺・如意輪台座反花表面模様(天沼俊一博士復元図の模写) 1945 水彩、鉛筆・紙 16.8×20.0
室生寺・八祖画像ノ内(天沼俊一博士復元図の模写) 1945 水彩、鉛筆・紙 17.0×20.4
天寿国蔓茶羅模様(天沼俊一博士復元図の模写) 1945 水彩・紙 20.0×17.0
法隆寺金堂天井文様 1945 水彩、鉛筆・紙 17.0×20.4
法隆寺講堂・四天王着衣文様 1945 水彩、鉛筆・紙 16.8×20.2
《降神盛砂図》制作のための構想過程図 1987 鉛筆・紙 25.5×18.2他

新聞雑誌関係記事
●新聞記事
毎日:8月1日(夕)(無署名)
新美術新聞:9月1日(無署名)
産経:9月1日(M)
京都:9月14日(太田恒実)
神戸:9月21日(山本忠勝)
赤旗:9月21日(山口泰二)
●雑誌記事
視る 350号8月号(山本新太郎、山野英嗣)
月間美術9月号(前田常作)

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