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展覧会身体と表現展 1920-1980 ポンピドゥー・センター所蔵作品から

身体と表現展 1920-1980 ポンピドゥー・センター所蔵作品から

 本展は、身体とその表現をテーマに、ポンピドゥー所蔵品の中から1920~80年代のフランス作家を中心とする、絵画、彫刻、写真、映像等120点を選別し現代美術を紹介した。19世紀末以後のフランス美術が、作家(主体としての人間)と世界(客体)に関してそれ以前に形成された関係を、安定した普遍的な関係と信じることを止めて、両者の可動的な関係に表現の可能性を発見したとすれば、20世紀美術の端緒は、<身体の世界との安定した関係を前提に視覚によって様々に世界を認識する立場>から、<身体をも世界との流動的な関係の中にあるとして客体化する立場>へと転換が計られた点に求められるだろう。人間が身体によって世界と関わり、関わりを通してその姿を様々に変えている、という自明の事柄がそのまま美術のテーマとしてクローズ・アップしてきたと言えよう。
 この視点に立つと、20世紀美術に於いて身体は、作家の主観的解釈の問題として様々に表現されていくことになるだけではなく、世界や時代という変貌する環境の中でどのような状況に置かれているかを、作家がどう直感し造形感覚を通してどう明らかにしていくか、という問題として浮上してきた、ということになろう。美術における身体表現に眼差しを向けた本展は、世界と調和した快活な身体(マティス、レジェ…)、社会的な困難の中で引き裂かれた身体(ゴンサーレス、ルオー…)、かつては主体として作品に隠れて見えなかったはずだが、運動の痕跡を借りて客体として露出した作家の身体(マチュ-、スーラ-ジュ…)、大量生産と消費社会の中で物に転落した身体(アルマン、セザール…)など、様々な身体表現に現れた、作家たちの環境に対する批判的眼差しや現状認識を明らかにすることとなった。
身体というテーマがえぐり出す問題が高度の批評性を備えており、またエイズ等の難病や脳死、クローン動物、遺伝子組み替えや臓器移植など人間存在に関わる不安や難問が堆積する一方で、肉体や健康のもたらす美しさや幸福感に対する関心が日常的にエスカレートする今日、身体は誰にとっても身近なテーマであったためか、本展は、美術批評はもとより一般鑑賞者からも好意的かつ熱心に迎えられた。(永井隆則)

La Dimension du Corps 1920-1980

 The exhibition introduces contemporary art from the 1920s to the 1980s, with 120 paintings, sculptures, photographs and videos by mainly French artists, which are selected on the theme of body and its expression from the collection of the Centre Pompidou.
 If French art since the end of the nineteenth century ceased to believe the relationship formed between the artist (man as the subject) and the world (the object) up to that time as a stable and universal relationship and found the possibility of expression in their mobile relationship, twentieth century art tried to change from the “position of recognizing the world in various ways through vision, with the body’s stable relationship with the world as a premise,” to “the position in which even the body is objectified as existing in a mobile relationship with the world.” The self-evident premise that man is involved with the world through his body and changes his form in various ways through this involvement has been focusd as a theme of art.
 In this regard, not only is the body expressed in various ways in twentieth century art as an issue of the artist’s subjective interpretation, but also it has emerged as an issue of how the artist, with his creative intuition, clarifies the circumstance in which he is placed and instinctively perceives it in the changing environment of the world and the times.
 The exhibition, with the expression of the body in art, clarifies the artists’ critical approaches to and recognition of the present state of the environment which appears in various expressions of the body, such as lively body in harmony with the world (Matisse, Leger, etc.),body torn by social difficulties (Gonzalez, Rouault, etc.), the body of the artist exposed as an object as a result of action which was hitherto hidden (Mathieu, Soulages, etc.), and the body fallen to the level of a mere object in the mass-produced and consumer driven society (Arman, Cesar, etc.).
 As the body is a very familiar theme to everyone today, when people’s interest in the beauty and happiness of a healthy body escalates into everyday concerns regarding the issues of bodily interference with its highly critical aspects and the anxiety of difficult problems concerning human existence, such as AIDS, brain dead issues, cloning of animals, genetic rearrangement and organ transplants, are accumulating, the exhibition was received favorably by both the critics and public in general. (Takanori Nagai)

会期
6月4日(火)~8月18日(日) / June 4-August 18, 1996
入場者数
83,600人(1日平均1,267人) / 83,600 (1,267 per day)
共催
NHK京都放送局・NHKきんきメディアプラン / The National Museum of Modern Art, Tokyo, NHK Kyoto Station, NHK Kinki Media Plan, Inc.
出品目録
作者名 作品名 制作年 材質・技法・形状 寸法(cm)
ボナール、ピエール 赤い服 1925 油彩・麻布 50.0×52.0
レジェ、フェルナン 樹々の下に 1921 油彩・麻布 64.8×45.6
レジェ、フェルナン 室内の女たち 1921 油彩・麻布 64.5×92.0
レジェ、フェルナン サーカスの芸人たち 1943 油彩・麻布 111.7×127.3
ローランス、アンリ フローラ 1939 ブロンズ 25.0×29.5×29.5
ロ-ランス、アンリ 別れ 1941 ブロンズ 73.0×85.0×64.0
ローランス、アンリ 1946 ブロンズ 36.0×25.0×18.0
マティス、アンリ 赤いキュロットのオダリスク 1921 油彩・麻布 65.0×90.0
マティス、アンリ ニースの室内、午睡 1922 油彩・麻布 66.0×54.5
マティス、アンリ 1935 油彩・麻布 81.0×65.0
マティス、アンリ 貝のヴィーナス 1930-51 ブロンズ 34.5×20.6×21.5
ピカソ、パブロ 女の頭部 1921 油彩・麻布 65.0×54.0
ピカソ、パブロ 横たわる女 1932 油彩・麻布 38.0×46.0
ピカソ、パブロ 女性の肖像 1938 油彩・麻布 98.0×77.5
フォートリエ、ジャン 大きなトルソ 1928 ブロンズ 71.0×31.0×24.0
ゴンザレス、フリオ モンセラトの叫ぶマスク c.1938-39 22.0×15.5×12.0
ルオー、ジョルジュ 人間は人間にとって狼である(麻布で裏打ち) 1944-48 油彩・紙 65.0×46.5
スーティン、カイム(シャイム) 1925-26 油彩・板 125.0×80.0
タンギー、イヴ&ブルトン・アンドレ 優美なる屍体 1927 色鉛筆・鉛筆・紙 33.0×250
共同作品 マルセーユでの遊び 1940 墨、インク、色鉛筆・紙 32.5×49.8
ベルメール・ハンス 人形遊び 1937-49 写真、彩色(4枚) 14.0×13.8/14.3×14.0/14.0×14.2/14.2×14.0
ベルメール・ハンス オレイユ街6番地 1952 油彩・インク・グワッシュ・紙(麻布で裏打ち) 41.0×31.0
ベルメール、ハンス 凌辱 1960 木炭・鉛筆・グワッシュ・ピンク色の紙 63.3×47.4
ボワッファール、ジャック=アンドレ 無題 1929 写真 18.5×22.6
ボワッファール、ジャック=アンドレピエール・プレヴェール 仮面の下の 1930 写真 22.4×16.8
デュシャン、マルセル 《警戒の箱》より(男性と女性) 1959-60 オブジェ 28.0×17.9×6.4
エルンスト、マックス 視覚の内側で 1929 油彩・麻布 100.0×81.0
ジャコメッティ、アルベルト 1927 ブロンズ 55.3×33.1×7.8
アンタイ、シモン 絵画 1950 油彩・麻布 87.0×83.0
ラム、ヴィフレド カナイマ 1945 油彩・紙(麻布で裏打ち) 110.5×91.0
マグリット、ルネ 凌辱 1945 油彩・麻布 65.3×50.4
マン・レイ 無題 1930 写真 17.4×23.5
マン・レイ モンパルナスのキキ 1924 写真 22.2×30.0
マッソン・アンドレ 自動的な素描 1925-26 墨・紙 30.3×24.1
マッソン・アンドレ 村人たち 1927 油彩・砂・麻布 80.5×64.5
マッソン・アンドレ 迷宮 1938 油彩・麻布 120.0×61.0
マッソン・アンドレ 田園詩 1943 墨・青い紙 47.5×63.0
マッソン・アンドレ 男と女 1958 油彩・麻布 140.0×110.0
マッタ 賢者の石 1942 鉛筆、その他・紙 58.3×73.6
マッタ 憎悪は忍耐を失わせる 1950 鉛筆、その他・紙 50.0×65.2
マッタ モノクロームの構成 1963 油彩、膠、砂・ジュート 100.0×100.0
ミロ、ジョアン 男の頭部 1935 油彩・厚紙(板で裏打ち) 105.5×75.3
ミロ、ジョアン 頭部 1937 グワッシュ、水彩・コンテ=チョーク・紙(厚紙で裏打ち) 63.9×49.1

作者名 作品名 制作年 材質・技法・形状 寸法(cm)
ミロ、ジョアン 人物 1962 木炭、水彩、色鉛、筆、油彩・紙(厚紙で裏打ち) 75.0×52.6
ピカソ、パブロ 女の頭部 1931 ブロンズ 71.5×41.0×33.0
タンギー、イヴ 遠い日 1937 油彩・麻布 92.0×73.0
プラウネル、ヴィクトール トリオ 1937 油彩・板 18.0×13.6
プラウネル、ヴィクトール 最後の旅 1937 油彩・板 13.9×18.0
ブラウネル、ヴィクトール 浸入の跡 1943 油彩・蜜蝋・板 38.3×29.0×2.0
ブラウネル、ヴィクトール 法悦 1947 油彩・麻布 81.0×65.0
ブラッサイ 落書き 1934 写真 24.0×18.4
アルトー、アントナン 地の身体 1946 鉛筆、色チョーク・ 厚紙 65.4×50.5
ブリエン、カミーユ エペリル 1951 油彩・麻布 146.0×89.0
フォートリエ、ジャン 裸体 不詳 モノタイプ版画、墨と白インクで彩色・紙(紙で裏打ち) 38.5×55.2
フォートリエ、ジャン そういう感じだ 1958 油彩・紙(麻布で裏打ち) 97.5×146.0
フォートリエ、ジャン 大きな悲劇的な頭部 1942 ブロンズ 34.8×17.2×21.1
ミショー、アンリ メスカリン素描 1959 墨・紙 32.0×24.0
ミショー、アンリ 墨の絵画 1961 墨・紙 75.0×108.0
ミショー、アンリ 無題 1949 グワッシュ、水彩・ 紙 38.7×54.0
ミショー、アンリ 無題 1954 墨・紙 74.5×105.0
ヴォルス 構成 1944-45 水彩、インク・紙 17.2×11.3
ヴォルス 構成 1946 水彩、インク・紙 15.9×12.3
ヴォルス 青いざくろ 1946 油彩・麻布 46.0×33.0
デュビュッフェ、ジャン メタフィシス 1950 油彩・麻布 116.0×89.5
デュビュッフェ、ジャン 潜在的なるものの大波 1963 油彩・麻布 220.0×189.0
デュビュッフェ、ジャン アイルランドの踊り 1961 油彩・麻布 113.5×145.5
シェサック、ガストン 緑色のストッキングのマキシム 1961 油彩・合板(イゾレル) 305.0×45.0
シェサック、ガストン 緑、バラ色、白い髪の毛の人物 c.1960-62 コラージュ(パピエパン、インク、クラフト紙) 215.0×64.5
シェサック、ガストン 山羊ひげとバラ色の頭の人物(パピエパン、インク、クラフト紙) c.1960-62 コラージュ 182.5×64.3
シェサック、ガストン 大きな青い眼の人物 1960-62 コラージュ(パピエパン、インク、クラフト紙) 152.0×64.0
エチエンヌ=マルタン 飾り紐III 1949 アッサンブラージュ(さまざまな布、ガラス) 22.0×40.0×34.0
アレシンスキー、ピエール 墨の国で 1959 デトランプ、墨、紙 152.0×240.0
アペル、カレル 女と鳥 1953 油彩・麻布 97.0×130.0
ヨルン、アスガー 10月5日の女 1958 油彩・麻布 63.0×76.0
ドゥブレ、オリヴィエ 人のしるし 1951-52 墨・紙 118.0×79.5
ドゥブレ、オリヴィエ 人のしるし 1953 墨・紙 119.0×78.5
ドゥブレ、オリヴィエ ダッハウの死者 1945 黒鉛、グワッシュ・紙 30.5×45.2
アルトゥング、ハンス 無題 1947 墨、オイル・パステル・紙 44.7×57.9
アルトゥング、ハンス T.54-16 1954 油彩・麻布 130.0×97.0
マチュー、ジョルジュ一世のためにオート=ロレーヌ地方を去る ロタールはオトン 1954 油彩・麻布 97.0×162.0
スーラージュ、ピエール 絵画195×130cm1957年10月9日 1957 油彩・麻布 195.0×130.0
ヴァン・ヴェルデ、ブラム 無題 1947 油彩・麻布 162.0×130.2
エリオン、ジャン さかさまに 1947 油彩・麻布 113.5×146.0
バルチュス 1959-60 カゼイン、テンぺラ・麻布 162.0×130.0
ベーコン、フランシス 自画像 1971 油彩・麻布 35.5×30.5
ベーコン・フランシス イザベル・ロースソーンの肖像習作 1966 油彩・麻布 35.5×30.5
ジャコメッティ、アルベルト ヴェネツィアの女Ⅴ 1956 ブロンズ 110.5×31.3×14.0
ジャコメッティ、アルベルト 矢内原伊作の肖像 1956 油彩・麻布 80.7×64.8

作者名 作品名 制作年 材質・技法・形状 寸法(cm)
ピカソ、パブロ アトリエの画家とそのモデル 1963 油彩・麻布 64.4×91.5
ダド 嬰児虐殺 1958-59 油彩・麻布 194.0×259.5
ダド 無題 1965 インク・紙(麻布で裏打ち) 157.0×126.0
サウラ、アントニオ 磔刑12 1959 油彩・麻布 200.0×250.5
アルマン ホーム・スウィート・ホーム 1960 アッサンブラージュ(ガスマスク ・ 木箱) 160.0×140.5×20.3
セザール テレビ受像機の全体 1962 アッサンブラージュ(金属板、テレビ受像器、ブレキシグラス、ルーレット) 166.0×76.0×50.0
クライン、イヴ アルマンの肖像レリーフ 1962 彩色したブロンズ、合板 175.0×95.0×26.0
工藤哲巳 あなたの肖像-繭のなかのさなぎ 1967 プラスチック加工した綿、ポリエステル樹脂、ブラックライト 161.0×87.0×78.0
ドゥ・サン・ファール、ニキ はりつけ 1963 アッサンブラージュ(彩色したポリエステル樹脂にさまざまなオブジェ) 236.0×147.0×61.5
スペーリ、ダニエル 箱(罠のタブロー) 1961 アッサンブラージュ(板の上に木、金属、工具類、さまざまなオブジェ) 79.4×69.0×41.0
アダムV. D. K レイス、マルシアルの肖像 1962 グリセロフタリック塗料・合板 182.0×131.5
ティンゲリー、ジャン バルバ人 1961-62 アッサンブラージュ(金属、針金、プラスチックのオブジェ、箒、小さい樽モーター) 187.0×56.0×45.0
アバカノヴィッチ、マグダレーナ 大きな黒いアバカン 1967-68 サイザル麻、麻 300.0×125.0×125.0
ボイス、ヨーゼフ 皮膚 1984 フェルト、十字形の布 240.0×152.0×100.0
ボルタンスキー、クリスティアン グロテスクな構成 1981 カラー写真 109.0×193.5×10.0
ライナー、アルヌーフ 十字 1959 油彩・合板 168.5×126.4
ライナー、アルヌーフ デスマスク(アダルベルト・シュティフター) 1978 油彩、墨・写真 48.2×60.6
ライナー、アルヌーフ デスマスク(モルトケ) 1978 油彩、墨・写真 59.5×47.3
ライグル、ジュディット 1967 油彩・麻布 234.5×208.0
タピエス、アントニ 1975 顔料、膠、彩色した木と布・麻布 200.0×300.0
アンタイ、シモン 聖なる衣3 1960 油彩・麻布 293.6×209.5
ジャッカール、クリスティアン 青い箱 1972 木箱、麻紐、亜麻、サイザル麻、ジュート 6.4×48.5×66.0
ルーアン、フランソワ プレネスティア II 1972-73 アクリル絵具・綿布 200.0×170.0
カデレ、アンドレ 6本の木の丸棒 1975 6本の彩色された木の棒 長さ各120cm
ヴィアラ、クロード 無題(第40番) 1968 染料・麻布 280.0×194.0
ヴィアラ、クロード 仕事結び目・つなぎ糸 1969-70 紐、木の棒 15.0×19.0
ヴィアラ、クロード 仕事結び目・つなぎ糸 1969-70 つなぎ、柳の棒 高さ27.0
ガルースト、 古代のオリオン、ジェラールインドのオリオン 1981-82 油彩・麻布 250.0×295.5
レイス、マルシアル 雲の友 1982 アクリル絵具テンペラ・板 80.0×120.0
ルーラン、フランソワ 彼の足、道は……(No.Ⅱ) 1986 油彩・麻布 200.0×180.0
ミロ、ジョアン 1978 墨、インク、オイルチョーク、パステル・クラフト紙 200.0×109.5
レルヒ、カール=ホルツ、クラウス 頭部 1981 ヴィデオによるハルトムート&インスタレーション  

新聞雑誌関係記事
●新聞記事
新美術新聞:3月11日(無署名)
朝日:4月4日(夕)(田中三蔵)
毎日:6月8日(夕)(有本忠浩)
読売:6月12日(無署名)
日経:6月14日(夕)(白木緑)
産経:6月23日(早)
神戸:6月23日(山本忠勝)
公明:6月30日(無署名)
読売:7月20日(夕)(木村未来)
毎日:8月10日(畑祥雄)
京都:8月10日(太田常実)
産経:8月13日(夕)(瀬)
日経:8月28日(栗本智代)
●雑誌記事
現代の眼496号3月号(三浦雅士/前野寿邦/千葉成夫)
視る348号6月号(尾崎信一郎)
349号7月号(中谷至宏)

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