生誕100年記念徳岡神泉展

 昭和20年代中頃から30年代末にかけて、徳岡神泉は<鯉>(昭和25年)、<池>(昭和27年)、<柳>(昭和28年)、<流れ>(昭和29年)、<赤松>(昭和31年)、<枯葉>(昭和33年)、<仔鹿>(昭和36年)など、複雑かつ微妙な空間の中に、対象を沈めるように深く凝視した一連の作品を発表している。これらは当時、能の幽玄の世界との共通性を感じ取った批評家やジャーナリズムによって、ユーゲニズムなどと呼ばれた。このような表現は、戦後の欧米の抽象絵画の動向と、その影響を強く受けた日本の美術界の動向と決して無関係ではないが、昭和22年の<赤松>に見られるように、神泉の対象に対する宗教的とさへ言える内観の鋭さは、むしろ、貞観や弘仁といった平安時代初期の仏教美術の中にその源泉を見いだすことのできる体のもので、長年の神泉の真摯な制作の中で培われたものであろう。神泉は京都の日本画が、雑誌『白樺』などによって紹介された西洋の後期印象派の作品などに触発された若手の画家を中心に、新しい動きを示し始める大正初期に、京都市立絵画専門学校を卒業し、その画業を始めているが、極めて成績優秀な学生であった神泉はその事実と新しい表現との蹉跌に苦しみ抜いた。この展覧会では、学生時代の極く初期の作品から、自在洒脱な画境を覗かせる晩年までの95点の作品と、写生、素描など約30点を紹介した。この展覧会は京都展終了後、東京の小田急美術館に於いて平成8年6月12日から6月30日まで開催された。(加藤類子)

Tokuoka Shinsen Exhibition Commemorating the Centennial Anniversary of the Artist's Birth

 From 1950 to 1965, Tokuoka Shinsen created a series of paintings which examined the subject as if it were submerged in a complex yet delicate space, such as Carp (1950), Pond (1952), Willows (1953), Stream(1954), Red Pine Trees (1956), Fallen Leaves (1958), Fawn (1961) and others. These paintings were called “Yugenism” by critics and journalists of the time who found affinity with the profound (yugen) world of Noh. Such expression was not irrelevant to the Abstract Expressionist tendencies in postwar Europe and America or tendencies in the Japanese art world which were greatly influenced by them. But the intensity of Shinsen’s introspection of the subjects of his works, which is almost religious, as seen in Red Pine Trees painted in 1947, finds its root in Buddhist art by Teikan and Kojin in the early Heian Period, which he nurtured over the long years with his diligence and determination.
 Shinsen graduated from the Kyoto Municipal Special School of Painting (Kyoto Shiritsu Kaiga Senmon Gakko) in the early Taisho Period when a new movement of Nihonga Japanese-style painting) was being formed by young painters who were stimulated by the Late-Impressionist works which were introduced by the progressive literary magazine, Shirakaba (White Birch, founded in 1910) and others after the Second World War. He was an excellent student and he agonized over the gap between this fact and the emergence of new expressions. The exhibition introduced 95 paintings, from the earliest works in his student days to his free and unconventional paintings in his final years, as well as 30 sketches and drawings. After the showing in Kyoto, the exhibition traveled to Tokyo and was shown at the Odakyu Art Museum from June 12 to 30, 1996. (Ruiko Kato)

会期
4月16日(火)〜5月26日(日) / Dates 16 April - 26 May
入場者数
31,469人(1日平均874人) / Visitors 31,469 (874 per day)
共催
読売新聞大阪本社/読売テレビ / Co-organizer Yomiuri Shimbun
出品目録
作品名 制作年 材質・技法・形状 寸法(cm)
海老 1911 紙本・彩色、額装 53.7×75.0
水汀(寒汀) 1914 絹本・彩色、軸装 175.0×94.0
晩秋 1916 絹本・彩色、額装 169.8×175.4
筒井筒 1917 絹本・彩色、屏風2曲1隻 166.5×174.6
魚市場 1918 絹本・彩色、屏風6曲1双 (各)165.0×372.0
狂女(白痴の女) c.1919 絹本・彩色、額装 96.5×56.6
椿 c.1922 絹本・彩色、額装 100.0×84.5
c.1922 絹本・彩色、額装 62.0×85.0
芥子 1924 絹本・彩色、額装 67.0×42.5
椿 c.1924 絹本・彩色、額装 43.9×50.5
蓮池 1926 絹本・彩色、屏風4曲1雙 162.9×234.6
後苑雨後 1927 絹本・彩色、額装 193.0×150.0
蕭条 1928 絹本・彩色、額装 190.0×234.5
1929 絹本・彩色、軸装 217.3×180.8
月明 1930 絹本・彩色、額装 246.4×175.6
蓮(紅蓮) 1932 絹本・彩色、屏風2曲1隻 155.6×159.5
罌栗 1933 絹本・彩色、額装 172.3×152.5
鶏頭 1934 絹本・彩色、額装 180.0×155.5
1934 絹本・彩色、額装 128.5×139.5
白梅小禽 c.1935 絹本・彩色、額装 32.0×36.3
鯉(緋鯉) 1937 絹本・彩色、軸装 61.5×72.0
陽春 1937 絹本・彩色、軸装 43.0×51.6
菖蒲 1939 絹本・彩色、額装 137.0×173.5
冬(東京展のみ) c.1939 絹本・彩色、額装 45.7×58.1
c.1942 絹本・彩色、軸装 46.4×49.3
西瓜 1943 紙本・彩色、額装 59.0×89.0
芋図 1943 絹本・彩色、額装 87.5×116.0
伊予蜜柑 1945 絹本・彩色、額装 88.8×119.1
c.1945 紙本・彩色、額装 45.7×68.4
菖蒲 1946 絹本・彩色、軸装 51.2×57.0
干瓢 1947 絹本・彩色、額装 88.5×116.0
赤松 1947 絹本・彩色、額装 89.0×118.0
白牡丹(牡丹) 1947 絹本・彩色、額装 45.3×55.7
c.1947 紙本・彩色、額装 38.5×50.6
c.1947 紙本・彩色、軸装 52.5×63.0
芥子 1948 絹本・彩色、額装 136.5×72.5
紫木蓮 1948 絹本・彩色、額装 50.7×56.8
1950 紙本・彩色、額装 130.0×118.0
1951 紙本・彩色、額装 71.5×47.0
1952 紙本・彩色、額装 129.9×174.8
芍薬 1952 絹本・彩色、額装 42.0×54.0
1953 紙本・彩色、額装 57.2×85.1
水仙 c.1953 紙本・彩色、額装 44.2×25.1
若松(小松) 1954 紙本・彩色、軸装 51.0×71.5
実る豆 1954 紙本・彩色、額装 63.0×52.7
流れ 1954 紙本・彩色、額装 132.0×170.0
菖蒲 1954 紙本・彩色、額装 83.0×65.2
菜の花 1955 紙本・彩色、額装 51.5×64.0
1955 紙本・彩色、額装 172.0×129.0
椿 c.1955 紙本・彩色、額装 39.1×46.1
赤松 1956 紙本・彩色、額装 157.5×139.5

作品名 制作年 材質・技法・形状 寸法(cm)
茄子(加茂茄子) 1956 紙本・彩色、軸装 31.6×44.9
椿 1956 紙本・彩色、額装 65.1×43.0
1957 紙本・彩色、額装 77.8×53.2
1958 紙本・彩色、額装 62.3×45.6
枯葉 1958 紙本・彩色、額装 145.0×114.5
1959 紙本・彩色、額装 42.1×67.9
林檎 1959 紙本・彩色、額装 48.5×39.4
虞美人草 1959 紙本・彩色、額装 68.8×50.9
龍胆 1959 紙本・彩色、額装 41.6×34.8
山つつじ 1960 紙本・彩色、額装 47.5×64.5
刈田 1960 紙本・彩色、額装 141.7×114.5
林檎 c.1960 紙本・彩色、額装 35.0×49.4
仔鹿 1961 紙本・彩色、額装 1358×121.0
1961 紙本・彩色、額装 71.0×55.5
青林檎 1961 紙本・彩色、額装 41.0×60.0
紫陽花 1962 紙本・彩色、額装 62.0×48.5
菖蒲 1962 紙本・彩色、額装 41.3×58.0
鳥(鷹) 1962 紙本・彩色、額装 64.0×48.0
紅椿 1962 紙本・彩色、額装 37.0×45.0
1963 紙本・彩色、額装 69.5×52.0
1963 紙本・彩色、額装 50.0×73.0
静物 1963 紙本・彩色、額装 43.0×62.5
静物 1963 紙本・彩色、額装 33.0×42.5
熊笹 1963 紙本・彩色、額装 57.5×45.5
1964 紙本・彩色、額装 110.7×143.7
朝陽 1964 紙本・彩色、額装 57.6×41.5
橿鳥 1965 紙本・彩色、額装 42.5×61.0
牡丹 1965 紙本・彩色、額装 61.5×51.0
鯉(緋鯉) 1965 紙本・彩色、額装 45.3×58.2
富士山 c.1965 紙本・彩色、額装 139.5×130.5
富士 c.1965 紙本・彩色、額装 162.0×110.0
緋鯉 1966 紙本・彩色、額装 61.5×81.5
緋鯉 1966 紙本・彩色、額装 40.5×57.3
陽春 1966 紙本・彩色、額装 48.6×36.5
1966 紙本・彩色、額装 96.5×140.5
c.1966 紙本・彩色、額装 32.8×45.4
1967 紙本・彩色、額装 32.8×44.0
はしびろ鴨 1967 紙本・彩色、額装 65.0×50.7
1968 紙本・彩色、額装 44.0×64.0
1968 紙本・彩色、額装 43.0×32.5
紫陽花 1969 紙本・彩色、額装 50.1×47.5
c.1969 紙本・彩色、額装 40.4×33.4
閑野 1970 紙本・彩色、額装 39.0×57.0
1971 紙本・彩色、額装 51.5×38.0
青梅 1911 紙・筆・水彩 79.6×56.4
1911 紙・筆・水彩 76.5×53.4
菊 I、II 1911 紙・筆・水彩(各) 80.3×57.0
c.1916 紙・筆・水彩 53.4×76.6
罌栗 昭和初期 紙・鉛筆・水彩 76.7×53.3
c.1932 紙・鉛筆・水彩 37.0×55.4
蓮の巻葉 1941 紙・鉛筆・水彩 38.5×55.5
牡丹 昭和初期 紙・鉛筆・水彩 36.5×54.7
牡丹 昭和初期 紙・鉛筆・額装 36.5×52.8

作品名 制作年 材質・技法・形状 寸法(cm)
牡丹(落花) 昭和初期 紙・鉛筆・水彩・画巻  
鯉 I、II 1950 紙・筆 38.3×66.5 16.5×52.5
魚市場小下絵 1917 紙・鉛筆・淡彩 (各)42.5×87.0
赤松小下絵 c.1956 紙・顔彩 35.9×26.8
慈姑小下絵 c.1957 紙・顔彩 27.4×26.6
罌栗大下絵 1925 紙・鉛筆・コンテ・墨・軸装 175.8×237.5
林檎 c.1961 紙・顔料 30.6×49.8
銀杏 紙・パステル 26.0×35.0
刈田 1960 紙・パステル 43.3×28.0
1965 紙・パステル 32.0×45.0
1965 紙・パステル 40.3×29.0
青林檎 1961 紙・パステル 28.0×43.3
石仏 紙・パステル 45.3×30.2
漢灰陶怪獣俑 I、II 紙・パステル 30.0×43.3
紙・パステル 29.5×43.7
種子 紙・パステル 28.0×43.3
富士小下絵(22枚) c.1965 紙・パステル・鉛筆 12.4×10.0〜16.7×15.7
スケッチブック 1962 紙・鉛筆 28.5×21.0
谷崎潤一郎『新々訳源氏物語・巻五』挿絵(「行幸」「藤袴」「真木柱」「梅枝」 1965 紙・印刷・彩色 (各)17.0×23.0

参考品
作品名 制作年 材質・技法・形状 寸法(cm)
自画像 大正時代 紙・鉛筆淡彩・額装 44.0×43.7

新聞雑誌関係記事
●新聞記事
読売:4月16日(特集)
4月22日、4月26日(夕)(安黒正流)
5月1日、5月19日
京都:5月4日(太田恒実)
産経:4月21日、5月21日(夕)
●雑誌記事
視る 347号5月号(山岸純)

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