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展覧会思索する色とかたち 作陶50年 タカエズ・トシコ展 平成7年度国際交流展

思索する色とかたち 作陶50年 タカエズ・トシコ展 平成7年度国際交流展

 第二次世界大戦後、工芸の分野では、工芸の素材や技法に拠りながらも工芸の存在理由ともいうべき機能性を捨てて、絵画や彫塑と同様、美そのものを追求する作品が盛んに作られるようになった。このような工芸界の動向は、現在では世界的な広がりを見せているが、この新動向の先頭に立ったのはアメリカであった。アメリカでは戦後、戦地から復員してきた若い世代が大挙して再び大学に戻ってきたため、大学は一種のラッシュの状況を呈した。そこで、従来はそれぞれ独立した部や科に属して教え、また学んでいた教授や学生が、その枠組みを越えて、由由に交流出来る制度が作られた。例えば、医学部に学ぶ学生が、美術制作の講座に学んだり、絵画を教える教授が建築やデザインの学生を教えたりすることが出来た。この自由な交流は、技術の交流というメリットよりも、むしろ自由な発想の可能性を著しく開発することとなった。タカエズ・トシコは、この1950年代の工芸の変革の時代に、彼女の作家としてのスタートを切っている。戦時中ハワイで量産陶器の工場に勤めた後、ミシガン州のクランナブック・アカデミー・オブ・アートで本格的に陶芸を学んだタカエズは、フィンランド出身の陶芸科の教授マヤ・グローテルの下で研鑽を積み、優秀な成績をあげると同時に、その独特の個性を開花させた。1950年代の中頃、彼女は日本へ来て、浜田庄司、金重陶陽などに作陶の指導を受け、参禅したり、茶の湯を修得したりしている。彼女の作風は、初期から一貫して、多彩な釉薬の展開と、それを十全に支える単純な器形に特色を見せている。釉薬の澄んだ発色を得るために、彼女は主にポースレン(磁鉱石)を用いる。そして単純な器形は、開口部が閉じられた、いわゆる”クローズド・フォーム”で、その膨張しようとする内部と閉じようとする外面の緊張関係が彼女の作品の重要なコンセプトである。この静かな均衡は、彼女が禅から学んだ世界であるが、表面に掛けられた釉薬も日本の微妙な季節の推移を連想させる。近年は作品が大きくなり、施釉もダイナミックで、地球の壮大な風景に想を得たものが作られているが、全体として、その美意識はきわめて東洋的、思索的であると言えるだろう。この展覧会は、1993年の2月から3月にかけて、タカエズ・トシコの出身地ハワイのホノルルにおいて、3会場を使って行われた回顧展の中から、近作を中心に約70点を選んで展示したものである。日本では、本館での展示の後、タカエズ・トシコの父祖の地沖縄・那覇のりゆうぼうホール、富山県高岡市の高岡市立美術館、愛知県の愛知県陶磁資料館を巡回して開催され、それぞれの開催地で大きな反響を呼んだ。アメリカでは既に1960年代初期から、アメリカ中西部を代表する陶芸作家の一人として評価されていたが、日本ではこれまで限られた人々の間での評価に止まって、一般にはその業績はほとんど知られていなかった。就中、被女の出身地の沖縄において、この展覧会が開催されたことは意義深いものがある。(加藤類子)

会期
6月6日(火)~7月9日(日)
入場者数
33,756人(1日平均1,125人)
共催
読売テレビ、読売新聞大阪本社、美術館連絡協議会
出品目録
作品名 制作年 材質・技法・形状 寸法(cm)
1952 磁群、施釉 h1.9×d21.3
1952 ストンウェア、施釉 h4.5×d24.5
1953 ストンウェア、施釉 h5.1×d28.9
1953 ストンウェア、施釉 h3.2×d22.9
1953 ストンウェア、施釉 h5.1×d29.2
双首の壷 1954 ストンウェア、施釉 h24.8×w23.5×d13.3
ティー・セット 1954 ストーンウェア、施釉
ティーポット
カップ
h15.2
w31.1×23.8
h5.1×d12.7
青磁の壷 1954 ストンウェア、青磁 h22.2×d16.2
双首の壷 1956 ストーンウェア、施釉 h29.9×w29.9×d17.5
双首の二つのフォルム 1957 ストーンウェア、施釉 h36.2×w26.7×d20.3
マスク 1958 磁器、施釉 h21.0×w16.5×d16.2
円い壺 1959 ストーンウェア、施釉 h21.0×w20.3×d19.4
閉じられたフォルム 1960 磁器、施釉 h23.2×d20.3
閉じられたフォルム 1960 磁器、施釉 h218.4×w16.5×d14.9
閉じられたフォルム 1960 磁器、施釉 h23.5×w21.3×d20.3
閉じられたフォルム 1960 磁器、施釉 h15.6×w17.1
大皿 1961 ストーンウェア、施釉 h3.1×d40.3
上にボタンのある
閉じられたフォルム
1961 ストーンウェア、施釉 h27.9×w23.2×d21.9
1961 ストーンウェア h35.0×d29.6
壷(閉じられたフオルム) c.1963 ストーンウェア、施釉 h17.0×d15.5
閉じられたフォルム 1966 磁器、施釉 h19.4×d17.1
大きなフォルム 1968 ストーンウェア、施釉 h61.9×d57.2
ガーデン・シート 1969 ストーンウェア、施釉 h53.3×w32.7×d31.1
閉じられたフォルム 1970 ストーンウェア、施釉 h15.9×w17.9×d15.6
火鉢讃 1970 ストーンウェア/磁器、施釉 h51.1×w70.2×d71.4
閉じられたフォルム 1970 ストーンウェア、施釉 h23.5×d26.0
1972 ストーンウェア、施釉 h14.5×d13.5
1974 磁器、施釉 h3.8×d29.8
青のフォルム 1980 磁器、施釉 h18.4×d12.1
青の皿 1980 磁器、施釉 h4.1×d27.6
青のこの閉じられたフォルム 1980 磁器、施釉 h17.1×d12.7
c.1980 ストーンウェア、施釉 h14.5×d13.5
c.1980 ストーンウェア、施釉 h12.5×d16.0
1982 ストーンウェア、施釉 h54.5×d27.0
赤い斑の閉じられたフォルム 1982 磁器、施釉 h23.5×w16.8×d15.9
赤い斑の閉じられたフォルム 1982 磁器、施釉 h19.1×d15.9
赤い斑の閉じられたフォルム 1982 磁器、施釉 h20.3×d11.4
木人の森 1982-87 ストーンウェア、施釉(最長) h244.0×d30.4
ガイア(地母神) 1984-90 ストーンウェア、施釉:木綿網 径(各)71.1
あき 1984 ストーンウェア、施釉 h70.5×d38.1
緑の雨 1985 ストーンウェア、施釉 h64.8×d27.9

作品名 制作年 材質・技法・形状 寸法(cm)
乾いた風 1985 ストーンウェア、施釉 d55.9
マノア 1987 ストーンウェア、施釉 h68.6×d55.9
ピンク・ハート 1987 ストーンウェア、施釉 h55.9×d31.8
コーラウの雨 1987 ストーンウェア、施釉 h50.8×d30.5
背の高いフォルム:ピンク・レディー 1987 磁器、施釉 h57.2×d20.3
いちばん 1987 磁器、施釉 h18.1×d14.6
円いコケモモのフォルム 1988 磁器、施釉 h22.2×d19.7
コケモモの閉じられたフォルム 1988 磁器、施釉 h19.7×d12.1
オマオマオプーワイ(緑のハート) 1988 ストーンウェア、施釉 h82.6×w49.5×d63.5
溶岩原 1988 ストーンウェア、施釉 h152.4×d78.7
1988 ストーンウェア、施釉 h39.4×d27.3
青もの 1988 ストーンウェア、施釉 h50.8×d33.0
オマオマオ 1988 ストーンウェア、施釉 d55.9
タピオカ 1989 ストーンウェア、施釉 d57.6
無題(月) 1989 ストーンウェア、施釉 d58.4
さくら 1989 ストーンウェア、施釉 d54.6
ピンク・レディーⅠ 1989 磁器、施釉 h41.3×d23.5
ピンク・レディーⅡ 1990 磁器、施紬 h76.2×d20.3
無題 1990 磁器、施釉 h50.8×d30.5
もんどⅠ 1990 磁器、施釉 d70.0
1990 磁器、施釉 h19.7×d12.7
オリオール(コウライウグイス) 1990 ストーンウェア、施釉 d55.9
レモン・アイス 1991 ストーンウェア、施釉 d54.6
大地の油 1991 ストーンウェア、施釉 h157.5×d63.5
誕生 1991 ストーンウェア、施釉 h71.1×d38.1
つほみ 1991 ストーンウェア、施釉 h68.6×d28.6
金の玉 1992 ストーンウェア、施釉 (各)d73.7
赤い斑点 1993 磁器、施釉 h19.1×d11.4
背の高いフォルム:海洋のへり 1994 磁器、施釉 h68.6×d25.4
背の高いフォルム:サンド・ピンク 1994 磁器、施釉 h83.8×d33.0
ピンクとブラツク 1994 磁器、施釉 h16.2×d10.5
無題 1994 ストーンウェア、施釉 h18.2×d12.2
海洋のへり 1994 磁器、施釉 h16.8×d13.6
海洋のへり 1994 磁器、施釉 h18.7×d12.5
高くて低い道 1994 磁器、施釉 h23.4×d14.2
孔雀 c.1952-53 ウール、木綿、レーヨン、シルク h320.0×w114.0
海の眺め c.1960 ウール、木綿、レーヨン、シルク h213.4×w114.3
ハレアカラ c.1965 ウール、木絹、レーヨン、シルク h243.8×wl14.3
あおあお c.1970-75 ウール、木鴇、レーヨン、シルク h426.7×w274.3
魔法の円 c.1970-75 ウール、木綿、レーヨン、シルク h213.4×w122.0

新聞雑誌関係記事
●新聞記事
京都:7月1日(太田垣実)
朝日:6月24日(夕)
流球新報:8月2日(加藤類子)
読売:10月4日(北陸版)(加藤類子)
●雑誌記事
文化庁月報No.321 6月号
茶の湯文化学会会報No.6
「クレイワークと茶陶」(中村二柄)
視る 337号 7月号(加藤類子)


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