オーストラリア絵画の200年展

 本展は、ヨーロッパ人がオーストラリアへの入植を開始した1788年から現在までの200年の間に描かれた絵画を通して、オーストラリアの自然と人間生活と芸術の軌跡とを紹介するものである。油彩画85点、水彩画34点の計119点が出品された、オーストラリア絵画の全容を紹介するこれほど質の高い展覧会が本国以外で開催されるのは、日本はもとより世界でも初めてのことである。

 200年にわたるオーストラリアという国の歴史の中で芸術家たちが絶えず関心、をもち続けたもの、それはほとんど原始的とすら言うことのできる圧倒的なオーストラリアの自然そしてその風景であった。一国の風景というものは、その国における人間と自然の間の関係についてのイメージである。それゆえにその風景を主題とした絵画を考察するということは、そこに住む人間さらに言えばオーストラリアという国そのものを考えることにほかならない。本展の副題‘人間・自然・芸術‘が示すとおり、それこそが本展の主旨とするところなのである。

 作品はこのような基本コンセプトに基づき、歴史を追って四つのセクションに分けて展示された。「新世界の自然と人間」と題された第一セクションには、1788年からほほ一世紀間、一般に植民地美術時代と呼ばれる時期の、ヨーロッパ人が対面したオーストラリア大陸の雄大な自然を題材とした作品およびその中で展開されるさまざまな人間の営みを反映した作品が展示きれた。また第二セクション「オーストラリアの印象派」では19世紀末の<ハイデルバーグ派>を中心に、オーストラリア特有の牧歌的風景を表した作品および近代的な都市生活と懐古的な田園生活を描き出した作品が、第三セクション「オーストラリアのモダニズム」では20世紀前半の、伝統的な表現様式の中にヨーロッパからの様々な新しい革新的要素を取り入れつつオーストラリア精神を追及した作品および後期印象派以降の造形要素を受け入れ新しい表現を積極的に追及した作品が展示された。また最後の第四セクションでは、「社会と美術と自然の新たなイメージ」と題して戦後の作品を中心に、都会化されたオーストラリアの現代社会の諸要素を描き出した作品、造形的要素を重視した抽象的傾向を見せる作品そしてアボリジナル・アートの評価と内陸部の風景の発見にかかわる作品が展示された。

 植民地としてのオーストラリアとイギリス文化、オーストラリア・ナショナリズムという地方主義と国際主義、原住民アポリジニとの関係とその芸術に対する評価、オーストラリアは様々な対立項を前に新生国家としてのアイデンティティを探りつづけてきた。四つのセクションに展示きれたこれらの作品は、その探求の過程の顕現であり、またその努力は「マルチカルテュラル(多文化)」という形をとり、国際社会におけるオーストラリアの特性および重要性の基盤となっているのである。1986年の蒙日交流基金の提案に端を発する本展の企画は、シドニーのニューサウスウェールズ州立美術館の全面的な協力のもとに実現したものであり、当館および国立西洋美術館において開催された。

会期
7月14日〜9月6日
入場者数
総数30,895人(一日平均644人)
共催
国立西洋美術舘、蒙日交流基金、日本経済新聞社
出品目録
作家名 作品名 制作年 技法
ジョン・ウイリアム・ルウィン 風景の中の二匹のカンガルー 1819 水彩、紙
ジョン・グラヴァー ウーズ河畔のカウッド 1835 油彩、カンヴァス
ジョン・グラヴァー 孤児院の見えるウェリントン山の風景、タスマニア 1837 油彩、カンヴァス
ジョン・グラヴァー 虹の見えるバターデイルの風景 c.1837 水彩、紙
ジョージ・フレンチ・アンガス ジャンク山の火口 1844 水彩、紙
コンラード・マーテンズ ローズパンク荘からの眺め 1843 油彩、カンヴァス
コンラード・マーテンズ ポートジャクスンの岬の眺め 1853 水彩、グアッシュ、紙
ジョン・スキナー・プルート ホバートの羊歯谷、タスマニア c.1851 水彩、グアッシュ、紙
ジョン・スキナー・プルート 滝とアボリジニーの見えるブッシュ風景、ニューサウルウェールズ c.1860 油彩、カンヴァス
ユージーン・ヴォン・ゲラード タワーヒル 1855 油彩、カンヴァス
ユージーン・ヴォン・ゲラード コジオスコー山北頂からの北東方面の眺め 1863 油彩、カンヴァス
ジョージ・ロウ クウォリーヒルから見たベンディゴー 1857 水彩、紙(カンヴァス裏打)
ニコラス・シェヴアリエ アラピルス山とミッターロック 1863 油彩、カンヴァス
ルイス・ビュヴロット ハイデルバーグ近郊の冬の朝 1866 油彩、カンヴァス
ルイス・ビュヴロット ヤラ川のほとり c.1875 水彩、鉛筆、紙
ウィリアム・チャールズ・ビグニツト 冬の夕暮れ、レイン入江 1888 油彩、カンヴァス
ジェイムズ・A・C・ウィリス カパティー渓谷 1892 水彩、紘
トマス・ウォトリング シドニー北地区の眺望 c.1794 油彩、カンヴァス
オーガスタス・アール ニューサウスウェールズの族長デズモンド c.1825〜27 水彩、紙
オーガスタス・アール ビンロウ樹の森で野営す旅行者たち、夜明け c.1838 油彩、カンヴァス
ジョン・グラヴァー 我が家の収穫 1835 油彩、カンヴァス
ハーデン・S・メルヴィル 入植者の小屋、故郷からの知らせ 1850〜51 油彩、カンヴァス
マーシャル・クラクストン デイキンソン家の人々 1851 油彩、カンヴァス
ヘンリー・クリトン ホバートの眺望 1856 油彩、カンヴァス
ロパート・ダウリング メラング農場のアドルフアス・シールズ夫人とブラック・ジミー 1856 油彩、カンヴァス
ロパート・ダウリング 古き時代のミンジャー農場 1856 油彩、カンヴァス
ユージーン・ヴォン・ゲラード パランビート荘のヴェランダよりの眺め、ピクニックポイントの方角 1858 油彩、カンヴァス
ヘンリー・バーン プリンセスブリッジから見たスウォンストン街 油彩、カンヴァス
サミュエル・トマス・ギル 火山錐のある噴火口 c.1870 水彩、グアッシュ、紙
チャールズ・コンデー 農園、ニューサウスウェールズ州リッチモント 1888 油彩、カンヴァス
アーサー・ストリートン 黄金の夏、イーグルモント 1889 油彩、カンヴァス
アーサー・ストリートン 長い道 1889 油彩、板
アーサー・ストリートン ハイデルバーグ近郊 1890 油彩、カンヴァス
アーサー・ストリートン 測量士のキャンプ 1896 水彩、紙
ウオルター・ウィザーズ 明るい冬の朝 1894 油彩、カンヴァス
アルバート・ヘンリー・フルウッド タスマニアのヒューオンベル 1895 油彩、グアッシュ、紙
ディヴィッド・ディヴィス 夕暮れ、テンプルストゥ 1897 油彩、カンヴァス
クララ・サザン 画家の家 c.1909 油彩、カンヴァス
フレドリック・マッカビン 園丁 c.1909 油彩、カンヴァス
ハンス・ハイセン 夕陽の方へ羊を追って 1914〜21 油彩、カンヴァス
ハンス・ハイセン 陽を浴びるゴムの樹 1923 水彩、紙
ペンリー・ボイド 1919 水彩、紙
トム・ロバーツ アレグロ・コン・ブリオ、バーク街西 c.1886 油彩、カンヴァス
トム・ロバーツ 秋の朝、シドニーのミルソンズポイント 1888 油彩、カンヴァス
トム・ロバーツ クーギー湾の休日のスケッチ 1888 油彩、カンヴァス
トム・ロバーツ 羊毛の刈取り 1888〜90 油彩、カンヴァス(板に張り付け)
トム・ロバーツ モスマン入江 1894 油彩、カンヴァス
トム・ロバーツ 駅馬車強盗 1895〜1927 油彩、カンヴァス
チャールズ・コンダー オリエント号の出航、サーキュラーキー 1888 油彩、カンヴァス
ジロラモ・ネルリ 雨模様の夕暮れ 1888 油彩、カンヴァス

作家名 作品名 制作年 技法
ジューリアン・アシュトン そぞろ歩き 1888 水杉、紙
ジューリアン・アシュトン 金鉱掘り 1889 油彩、カンヴァス
フランク・マホニー 車を引く牛 1891 水彩、紙
アーサー・ストリートン レッドファーン駅 1893 油彩、カンヴァス
ジョージ・W・ランバート 金鉱探し 1911 水彩、グアッシュ、鉛筆、紙
E・フィリップス・フォックス 画学生 1895 油彩、カンヴァス
シドニー・ロング 平原の精 1897 油彩、カンヴァス
ジューリアン・アシュトン 四十年前のタマラマ浜、夏の朝 1990 油彩、カンヴァス
ジョージ・W・ランパート シーア・プロクターの肖像 1903 油彩、カンヴァス
ヒュー・ラムジー 姉妹 1904 油彩、カンヴァス
ジェシー・ジュハスト・ヒルデー 涸れた沼地 1911 水彩、紙
ルパート・バニー ベルセフオネの誘拐 c,1913 油彩、カンヴァス
ブラミア・ヤング 田園交響楽 c.1920 水彩、紙
シーア・プロクター 水浴する女たち c.1925 水彩、鉛筆、紙
ハーバート・バドハム 旅客たち 1933 油彩、カンヴァス
ノーマン・リンジー オリュンポス 1934 水彩、紙
チャールズ・ミーア オーストラリアの海岸模様 1940 油彩、カンヴァス
ローランド・ウェイクリン オレンジ調のシンクロミー 1919 油彩、カードボード
ローランド・ウェイクリン 建設中のハーバーフリッジ c.1928〜29 油彩、カンヴァス(板に張付け)
ロイ・ド・メイストル 船着場 1925 油彩、板
ロイ・ド・メイストル 横たわる人物 1933 油彩、カードボード
エリオス・グルーナー マランビジー川の眺め 1929 油彩、カンヴァス
クラリス・ベケット 雨の日 c.1930 油彩、カンヴァス
グレイス・コッシントン・スミス タラマラのウォンガウォンガ通り c.1930 水彩、紙、厚紙
グレイス・コッシントン・スミス ラッカー・ルーム c.1935 水彩、厚紙(板に張付け)
ロイド・リース マクマホンズポイントから見たシドニー 1932 水彩、インク、紙
シドニー・エア・スミス ハーバーフリッジ 1932 鉛筆、水彩、紙
ウィリアム・フレイター ローンのサー・フランク・ボールペアーの別荘 c.1935 油彩、カンヴァス(板に張付け)
マッタス・メルドラム 室内 1936 油彩、カードボード
アーノルド・ショアー 公園 1941 油彩、板
ノエル・クーニハン 湿った坑道で働く鉱夫たち 19舶 油彩、合板
シドニー・ノーラン 町の子供 1943 アクリル絵画、厚紙(ハードボードの張付け)
シドニー・ノーラン 裁判 1947 エナメル、合板
アルバート・タッカー 現代的邪悪のイメージ、フイツソロイの春 1943〜44 油彩、合板
ウィリアム・ドーベル セメント労働者、シドニー乾ドック 1944 油彩、厚紙
アーサー・ボイド 1944 油彩、カンヴァス(合板に張付け)
アーサー・ボイド 黒い兎のいる室内 c.1973 油彩、カンヴァス
ラッセル・ドライズデイル 買い物の日 1953 油彩、カンヴァス
ジョン・ブラック 自動車 1955 油彩、カンヴァス
ジェフリー・スマート ケイヒル高速道路 1962 油彩、板
チャールズ・ブラックマン 窓の影 1965 油彩、カンヴァス
イーアン・フェアウェザー 西湖、杭州 1941 グアツシュ、紙
イーアン・フェアウェザー ロワ・ソレイユ 1956〜57 グアツシュ、厚紙
フランク・ヒンダー 地下鉄のエスカレーター 1953 テンペラ、油彩、カンヴァス、合板
ゴドフリー・ミラー 裸婦と月 1954〜58  油彩、カンヴァス
ジョン・バスモア シャグ・オン・スクラッチ c.1959 油彩、板
ジョン・オールセン オーストラリアの流れ 1960 木炭、グァッシュ、紙

作家名 作品名 制作年 技法
ジョン・オールセン 美し国オーストラリアの春 1961 油彩、合板
コーリン・ラーンスリー 楽しいファミリー
ピクニック
1961〜62 混合技法、油彩、ハードボード
ロジヤー・ケンプ モザイク c.1970頃 アクリル絵具、ハードボード
ブレット・ホワイトリー 陽のあたる公園 1976 油彩、カンヴァス
ハンス・ハイセン 陰の広がる丘陵 1929 油彩、カンヴァス
ピーター・バーヴィス・スミス 日照り c.1939〜40 グアツシュ、紙
マーガレット・プレストン アポリジナルな風景 1941 油彩、カンヴァス
ケネス・マックィーン エムリン山の耕地 1940 水彩、紙
ラッセル・ドライズデイル ウォールズ・オフ・チャイナ(ゴルゴル) 1945 油彩、カードボード
シドニー・ノーラン デュラック山地 1950 油杉、合板
オットー・パレルールチャ ノーサンテリトリーのマクドネル山地 c.1950 水彩、紙
アルバート・ナマジラ ハーマンズバーグ山 c.1950 水彩、紙
フレッド・ウィリアムズ 曲がった樹のある風景 c.1958〜59 水彩、グァッシュ、インク、紙
フレッド・ウィリアムズ ユーヤングス風景 1963 油彩、テンペラ、合板
ヘンリー・サールカウスカス 風景 1962 水彩、クレヨン、紙
ロイド・リース 永遠の地 1965 油彩、カンヴァス
ジョン・ウルスリー ノーザンンテリトリー、ヘヴィトリー山地のアポリジナル黄土標本 1979 水彩、黄土、紙
ジューディー・カサブ 荒地の形、岩石 1982 グアッシュ、インク、水彩、クレヨン、紙
マワラン・マリカ ワウェラグ姉妹と虹の蛇ユルングル 1959 黄土、ユーカリの樹皮
ジョニー・ワナミリル(ワニミリル) 母なるトーテム c.1981 黄土、ユーカリの樹皮
バディー・ジャパルトジャリ・スチュアート マール・ジュクルパ(カンガルートーテムの夢) 1987 アクリル絵具、カンヴァス
ローヴァー・トマス ワンカル・ジャンクション・ウランクヤ 1968 黄土、ゴム、カンヴァス

新聞雑誌関係記事
日経:6月26日、7月14日、7月14日(夕刊)、7月27日(夕刊)、8月3日(夕刊)
朝日:8月22日(吉村良夫)
読売:8月22日
毎日:8月6日(夕刊)、9月4日
産経:7月27日
京都:7月9日、7月25日
奈良日々:8月8日
神戸:7月27日

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