没後50年 鹿子木孟郎展

 本展は洋画家鹿子木孟郎の没後50年を記念した展覧会であるだけでなく、この画家にとって初めてのまとまった回顧展でもあった。

 鹿子木は明治7年(1874)岡山に生まれ、郷里で松原三五郎の天彩学舎に学んだのち、東京に出て小山正太郎の不同舎に入った。その後、三度にわたるヨーロッパ留学を重ね、いずれもフランス最後の歴史画家といわれた老巨匠ジャン=ポール・ローランスに就いてアカデミックな写実技法と画面構成を身につけた。このような画系は、おのずから鹿子木に保守的な立場を取らせ、アカデミックな絵画研究に根ざした日本的な油彩画の創造を主張させることになった。こうしたことから、従来鹿子木は守旧派の中心画家と目されてきたが、近年では、19世紀末から今世紀初頭にかけてパリに留学した画家に共通する、民族主義に根ざした象徴主義と外光表現の併存する折衷様式やボヘミアン的な性格など、鹿子木芸術における多用な性格が指摘されている。本展はこのような近年の研究成果を踏まえて、鹿子木芸術を振り返ろうとするもので、油彩画105点、水彩画・パステル画・素描・版画54点によって構成した。

 鹿子木は明治37年、第一次のヨーロッパ留学から帰国すると、パリで知遇を得た浅井忠の住む京都に居を移し、浅井らと聖護院洋画研究所で指導に当たるとともに、関西美術院の創設に尽力した。そして、明治40年に浅井が没した後はその後継者と目され、関西の洋画壇の重鎮として活躍した。その意味では、鹿子木は京都の近代洋画史を回顧する上で重要な画家のひとりと言わねばならないが、単にそれだけではなく、鹿子木芸術を軸に日本の近代絵画史を再考する契機ともしたいとの考えから企画された展覧会であった。

 なお、本展は当館に先だって三重県立美術館および神奈川県立近代美術館において開催され、当館終了後岡山県立美術館に巡回展示された。

会期
2月26日(火)〜3月24日(日)
入場者数
54,777人(1日平均2,282人)
共催
鹿子木孟郎調査委員会、読売新聞大阪本社、読売テレビ、美術館連絡協議会
出品目録
油彩(A)
作品名 制作年 技法・材質
簪(かんざし)を挿した少女 1893 油彩・紙
自画像 1894
老女
着物の老女 油彩・麻布
日本髪の女
妹尾徳風先生の肖像 1898 油彩・麻布
津の停車場(春子)
日本髪の裸婦 1899
自画像 1902
裸婦半身(横向き) c.1902-03
裸婦(前向き) c.1903
裸婦(後向き) 1903 油彩・麻布
裸婦(後向き)
棒を持つ男の裸体
男の裸体(後向き)
少年裸体像
子どもの肖像
髭の老人 1903
黒い服の男
上を向く男 1903
厨の女 c.1903
白衣の婦人 c.1901-03
白衣の少女
狐のショールをまとえる婦人 c.1903
アングル『泉』模写 c.1901-03
ジョセフ・バイユ『厨女図』模写
クールベ『海』模写
京洛落葉 1904
牛を引く人
琵琶法師 1905
裸体の写生 1906
横向き男性裸像 c.1906
パイプを持つ男 1906
赤い服の西洋婦人
赤い背景の女
ジプシーの女 c.1906-07
ノルマンディーの浜 1907
シルエットの裸婦 1908
農婦と子ども
水遊びの子どものいる風景
風船を持つ園子
少女の写生
新夫人 1909
林泉(天龍寺の庭) 1910
インスピレーション 1911
舞子の浜
水辺の夕暮れ
某未亡人の肖像 1912
風景
加茂の競馬 1913
神馬(習作)
舞妓
比叡山より琵琶湖を望む 1913
山村風景 1914
モデル写生
書斎に於ける平瀬介翁 1915
アブニューオッシュ c.1916-17 油彩・麻布
モンソー公園 油彩・板
巴里リュクサンブール公園
木のある外国風景
水辺の木 c.1916-17 油彩・紙
教会 1917 油彩・麻布
フランス風景 c.1916-17
草を食む牛
海辺の牛 c.1916-17
ブルターニュの少女
雲の習作
雲の習作
雲の習作
雲の習作
奈良の藤
セミの小川 1919
奈良の秋
糺の森
画家の妻 1921
和服の女
園子 1922
巨人
光を求めて
震災スケッチ 油彩・板
震災スケッチ
大正十二年九月一日 1924 油彩・麻布
満州風景 c.1924
蒼い山 油彩・板
黄色の風景 油彩・麻布
大陸の街角
赤い寺
木の幹
潮乃岬
紀州潮ノ岬 1926
豊後風連洞の古話 1927
南都之秋 1928
裸婦
一ツの林檎 1929
裸婦 1930
裸女観瀑
仔犬
大台ケ原渓流
大和吉野川の渓流 1933
浴女 1934
勝浦狼煙(のろし)山 1934 油彩・麻布
白薔薇 1937
海岸
婦人像 1938

水彩・素描・版画(B)
作品名 制作年 技法・材質
野菜図 1888 水彩・紙
萱葺の家 1889
徳島県地福寺の藤 1892
横向きの男 1893 木炭・紙
谷中風景
大森海岸
綾瀬 鉛筆・紙
豊島村渡頭
浅草田圃
府中
人物写生会
画塾
赤羽風景 1894 木炭・紙
根津権現 水彩・紙
社殿
水車小屋 水彩・鉛筆・紙
不忍池の水蓮 c.1893-94 水彩・紙
湖上のボート
裸婦 1901 色鉛筆・紙
裸婦(後向き) 1902 木炭・紙
裸婦
男の裸体
外国の農家 c.1902-03 水彩・紙
ヴェネツィア風景 c.1903
セーヌの桟橋
水汲み
ノルマンディーの浜習作(構図) 1907 コンテ・クレヨン・紙
漁師の女
ノルマンディーの浜 1907 鉛筆・紙
外国風景 パステル・紙
横たわる裸婦 水彩・紙
赤いリボンの少女 c.1907
四季草花図下絵(春) 1914
四季草花図下絵(夏)
四季草花図下絵(秋)

作品名 制作年 技法・材質
四季草花図下絵(冬) 1914 水彩・紙
少年 サンギーヌ・クレヨン・紙
牧場のポプラ c.1916 水彩・コンテ・紙
モンソー公園 c.1916-17 鉛筆・紙
西洋婦人 1917 コンテ・サンギーヌ・紙
ブルターニュの丘 コンテ・クレヨン・サンギーヌ・ペン・紙
ブルターニュ風景 水彩・紙
ブルターニュの港 色鉛筆・クレヨン・ペン・鉛筆・紙
セーヌ河 エッチング・紙
夕暮の河 エッチング・淡彩・紙
外国風景 パステル・紙
加茂川 1918 コンテ・サンギーヌ・クレヨン・紙
森の木立 1919 コンテ・淡彩・紙
糺の森の老樹 1922 水彩・鉛筆・紙
糺の森 コンテ・淡彩・クレヨン・紙
森の古木 コンテ・クレヨン・淡彩・紙
木の幹 コンテ・サンギーヌ・クレヨン・淡彩・紙
奉天入城図下絵 1926 鉛筆・紙
岩山 鉛筆・水彩・紙

新聞雑誌関係記事
新聞記事
読売/2年10月15日(夕)(荒屋鋪透)、平成3年2月9日、2月19日(夕)、2月21日、2月26日、2月26日(夕)、3月11日(夕)(島田康寛)、3月15日
京都/3月16日(藤 慶之)
産経/3月18日
日経/平成2年12月8日
雑誌記事
三彩 1990年11月号No.518「特集・鹿子木孟郎」(島田康寛・荒屋鋪透・山梨絵美子・原田 光)
美術館連絡協議会々報26(荒尾鋪透)

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