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展覧会モランディ展

モランディ展

 本展はイタリアの画家モランディ(1890~1964)の初期から最晩年に至るまでの画業を油彩・水彩・版画99点により紹介した企画である。本展は、モランディを、次のような意味で稀有なそして極めて今日的な作家として紹介した。モランディの生きた20世紀のイタリアは、第1次世界大戦で敗北した後ファシズムに導かれて第2次世界大戦へのめりこんでいくという狂乱と悲惨を経験した。喧騒の中にあって、モランディは当時の政治に参加することなく生まれ故郷ボローニャで美術教師として働くかたわら、制作を続けた。美術の領域では、フランスの19世紀美術以降、様々な主義、美学の交替する前衛ないしは近代絵画運動の盛んな時代であった。イタリアでは、20世紀初頭に「未来派絵画」や「形而上絵画」が誕生し、初期のモランディもこうした絵画を推進する画家達と交流し類似した絵画を制作し彼らの展覧会に出品もした。また、セザンヌやキュビスムというフランス近代絵画も研究した。こうしたいくつかの見た目には異った前衛絵画を研究することで、モランディは、新奇なものや時代の流行を追い求めようとしたのではなく、モランディ自身の絵画の方向性を発見していった。事物相互の意味連関、時間、場といった具体的文脈や意味をとり払って具象的事物を描くことのうちに、様々な視覚的存在を創造しうること、そこに自らの絵画の可能性を見出すのである。びんや壺といった日常の身近なものを繰り返しとりあげながら、色と形、地と形象、構図のヴァリエーションを追求し、常に具象的形を描き出しその様々なあり方と関係性を創造し続けた。こうした「類似の中の差異の追求」は、20世紀に入ってからのモネ(「睡蓮」の連作)、そしてマティス(同一モデルによる肖像連作)、モンドリアン(「木」「格子」の連作)、ピカソ(「ラスメニナス」の連作など)などのとりあげた絵画の在り方と同一のものである。この意味で、モランディは、同時代の絵画に関する認識のひとつを共有するが、他方で「不断の刷新」という信念のもとに「主義」や「運動」の交替史としてつづられこの視点から評価を下していく前衛主義の言説およびこの言説に基づいて現われる時代の主導的運動からはとり残されることとなった。だが、1980年代以降主導的なあるいは際立った美術の主義・運動が姿を消し作家達が極めて私的な事柄に関心を示し現在へと没入することで全体とし分散し個別化している状況が今日の美術界の動向だとすれば、モランディの姿勢は彼の生きた時代に対する明確なひとつの立場表明として浮かびあがり、彼の追求し続けた絵画の在り方は今日の作家達に対して豊かな成果をもたらすひとつの方向性を示すものとしてクローズ・アップされてきた。日本ではほとんど知られていないこのモランディの展覧会は予想外の反響を呼んだが、その理由のひとつはこの点に求められるだろう。

 作品はモランディの様式変遷に従って初期から最晩年まで6つのセクションに分け、展示された。(永井)

会期
4月10日(火)~5月13日(日)
入場者数
総数33,667人(一日平均1,183人)
共催
京都新聞社
出品目録
作品名 制作年 材質・形状
風景 1913 油彩、厚紙
自画像 1914 油彩、カンバス
風景
静物 1915
風景 1916
静物
静物 1918
静物
静物 1919
静物 1924
静物
風景 1927
静物 1928
静物
風景
1929
静物
静物
静物
静物
静物 c.1929
静物 1930
風景 1932
ロッフェノ風景
風景 1934
麦畑 1935
静物 1936
風景
静物 1938
静物
静物 1939
静物 1940
風景
風景
緑の風景
静物 1941
静物
静物
風景
白い道
ヴィア・フォンダッツァの中庭 1941 油彩、カンバス
1942
1943
静物
静物
静物
静物
風景
風景 1944
風景
静物 1945
静物 1946
静物
静物
静物 1947
静物 1948
静物
静物
静物 1949
静物
静物
1950
静物
静物 1951
静物
静物
静物
1952
静物
静物
静物 1954
静物
ヴィア・フォンダッツァの中庭
静物 1955
静物 1957
静物
静物 1957~58
静物 1957~59

作品名 制作年 材質・形状
静物 1959 油彩、カンバス
風景 1960
静物 1962
静物
風景
風景 1963
水浴 1918 水彩、紙
1918
静物 c.1950
静物 c.1956
1958
風景
風景 1959
風景
静物 c.1959
静物 1959
静物
静物 1960
風景 c.1960
風景
風景 水彩、厚紙
静物 1921 鉛筆、紙
静物 1939
静物 c.1941
静物 1944
静物 1948
静物 1949
静物 1952
静物 1956
静物
静物 c.1960
静物 c.1962
風景 1962
風景
風景 1963
静物
サヴェナ河にかかる橋 1912 エッチング
静物 1915
パン籠のある静物 1921
縞模様の花瓶にいけた花 1924
大きなポプラのそびえる風景 1927
ポッジョ風景
左手に布のある静物 1927 エッチング
右端にランプのある大きな静物 1928
果物鉢と細長い瓶、ねじれた瓶のある静物 1928(刷りの年代)
農家 1929
サヴェナ風景
静物 1930
静物
縞模様の花瓶にいけたジャスミンの花 1931~32
白い道 1933
暗い大きな静物 1934
十個の器物がある大きな円形の静物 1942
瓶と三つの器物がある大きな円形の静物 1946
九個の器物がある静物 1954
四個の器物と三つの瓶のある静物 1956

新聞雑誌関係記事
新聞記事
京都/4月9日(吉岡健二郎)、4月16日(上平 貢)、4月17日(吉村 勲)、4月18日(岡田温司)、4月20日(森本博子)、4月21日(柏木隆夫)、(以上、夕刊)5月5日(藤 慶之)
朝日/平成元年12月20日(米倉 守)、平成2年5月15日(夕)(加藤周一)
毎日/1月25日(夕)
読売/3月1日(夕)(熊田 司)
サンケイ/1月25日
雑誌記事
芸術新潮 3月号(1990)(酒井忠康他)
みづゑ’89冬 No.953(峯村敏明)
アート’90夏 131号(中島芳郎)

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