展覧会国吉康雄展
国吉康雄展
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国吉康雄は少年時代に英語の修得を目的に渡米し、画才を認められて画家を志し、研鑽を重ねて、遂にはアメリカを代表する具象画家となった。国吉は1906年に渡米し、53年に亡くなるまでにただ一度帰国し、東京、大阪で個展を開いた。既にアメリカで高評価を受けていた国吉の芸術を、当時の日本の美術界は殆ど問題としなかった。日本の画家達はパリに学ぶのが常であり、また国内で画家となって渡米したのではないという国吉の特殊な事情の故でもあった。またその後の日本での軍国主義の台頭、中国侵略、日本開戦と時代は展開し、国吉は敵国人としてアメリカに暮すという特異な状況を強いられた。アーリィ・アメリカン絵画を採り入れた初期の作品に表れた明快さが示すように、国吉は明朗な性格の人であったが、アメリカの画家でありながら日本人であるという、しかも一般の日系人のように収監されず、市民に混じって生活するという状況は想像以上の精神的苦痛と恐怖を伴うものであった。30年代半ばから国吉の描く女性像は憂いの影を濃くし、40年代には絶望や深い悲しみを表しており、静物画は不安定な構図の内に破壊や生の喪失とも言うべきものを示している。やがて戦争は終るが国吉の画面には明朗さは戻らなかった。晩年、色彩の極度に明るい作品と黒一色の素描が見られるが、それらには人間の深い悲しみと死の世界を暗示するように思える。
本展は国吉の生誕100年を記念するもので、日本国内及びアメリカから代表作を網羅し、初期から晩年に至る絵画・素描118点、版画21点に30点の写真作品を加えた169点により国吉芸術の全貌を示すものとして高く評価された。また本展は当館が幹事館として企画実施し、京都展以前に東京都庭園美術館、岡山県立美術館でも開催された。
- 会期
- 2月20日(火)~4月1日(日)
- 入場者数
- 総数 36,243人(一日平均 1,007人)
- 共催
- 読売テレビ・読売新聞大阪本社
- 出品目録
作品名 | 制作年 | 材質・形状 |
---|---|---|
自画像 | 1918 | 油彩、麻布 |
三世代 | 〃 | 〃 |
ピクニック | 1919 | 〃 |
オガンキットの入江 | 1920 | 〃 |
姉妹 | 〃 | 〃 |
雨乞い | 〃 | 〃 |
鶏小屋 | 1921 | 〃 |
赤ん坊 | 〃 | 〃 |
村落 | 〃 | 〃 |
アダムとイブ(人間の堕落) | 1922 | 油彩、麻布 |
夢 | 〃 | 〃 |
三匹の雌牛と一匹の子牛 | 〃 | ペン・墨、紙 |
暁を告げる雄鶏 | 1923 | 油彩、麻布 |
牛といるリトル・ジョー | 〃 | 〃 |
鶏に餌をやる少年 | 〃 | 〃 |
乳しぼりの娘 | 〃 | 〃 |
二人の赤ん坊 | 〃 | 〃 |
果物を盗む少年 | 〃 | 〃 |
風景 | 1924頃 | 油彩、麻布 |
カメラを持つ自画像 | 1924 | 〃 |
くじらに驚く姉妹 | 〃 | 〃 |
スパーホークから来たウエイトレスたち | 1924-25 | 〃 |
眠れる美女 | 1924 | インク・ペン・筆、紙 |
漁夫 | 〃 | ドライブラシ墨、紙 |
悪夢 | 〃 | ペン・インク、紙 |
レディ・スリッパー | 〃 | インク、紙 |
力持ちの女と子供 | 1925 | 油彩、麻布 |
水難救助員 | 1925 | 〃 |
二人の女 | 〃 | 水彩・ペン・ブラシ・インク・鉛筆、紙 |
静物 | 1926 | 油彩、麻布 |
化粧 | 1927 | 〃 |
ゴルフをする自画像 | 1927頃 | 〃 |
静物 | 1928 | 〃 |
石膏の花瓶と果物 | 〃 | 〃 |
ロバのいる風景 | 〃 | 〃 |
横たわる女 | 1929 | 〃 |
シュミーズの女 | 〃 | 〃 |
煙草を吸う女 | 〃 | 〃 |
秋のたそがれ | 〃 | 〃 |
サーカスの女玉乗り | 1930 | 〃 |
ねじりパン | 〃 | 〃 |
椅子の上のロールパン | 〃 | 〃 |
少女の顔 | 〃 | 鉛筆、紙 |
休んでいるサーカスの女 | 1931 | 油彩、麻布 |
スケート | 〃 | 〃 |
ピンクスリップの少女 | 1932 | 〃 |
張子の虎と物 | 〃 | 〃 |
鏡 | 1933 | 〃 |
ソファーの上の風見など | 〃 | 〃 |
もの思う女 | 1935 | 〃 |
ディリー・ニューズ | 〃 | 〃 |
白い羽根飾りの帽子の女 | 〃 | 〃 |
バーガンディ | 〃 | 〃 |
バンダナを着けた女 | 1936 | 〃 |
カヘェ | 1937 | 〃 |
綱渡りの女 | 〃 | カゼイン、紙 |
待つ | 1938 | 油彩、麻布 |
そう思うわ | 〃 | 〃 |
ひとりぼっち | 〃 | 〃 |
裸婦 | 1938 | 油彩、麻布 |
椅子の上の写真と桃 | 〃 | 〃 |
横たわる人形 | 1937-38 | 〃 |
アコーディオン | 1938 | 〃 |
さびれた煉瓦工場 | 〃 | 〃 |
夏の嵐 | 〃 | 〃 |
何になるの? | 1940 | 〃 |
逆さのテーブルとマスク | 〃 | 〃 |
ミルク・トレイン | 〃 | 〃 |
バレエ・ダンサー | 〃 | チャコール、紙 |
カウ・ガール | 1941 | 油彩・麻布 |
アコーディオンを持つ女 | 〃 | 〃 |
イーグル・レスト | 〃 | カゼイン、紙 |
スペインのソプラノ | 1942 | 油彩・麻布 |
くつろぎ | 〃 | カゼイン、パネル |
二つの世界の間 | 〃 | 油彩、麻布 |
ネヴァダ・ヴィル | 〃 | 〃 |
誰かが私のポスターを破った | 1943 | 〃 |
制作中 | 〃 | カゼイン、パネル |
私のひと | 〃 | カゼイン、板 |
夜明けがくる | 1944 | 油彩、麻布 |
スザンナ | 〃 | 〃 |
春遠からじ(ポーラ) | 〃 | カゼイン、紙 |
110号室 | 〃 | 油彩、麻布 |
壊れたもの | 〃 | 〃 |
先を考える | 1945 | 〃 |
母娘 | 〃 | 〃 |
飛び上がろうとする頭のない馬 | 〃 | 〃 |
海岸の投棄物 | 〃 | 〃 |
母娘 | 〃 | インク、紙 |
一日の終わり | 〃 | ペンブラシ・インク・インクウォッシュ・水彩、紙 |
裏通りの殺人と犬 | 〃 | インク・鉛筆・墨、紙 |
女は廃墟を歩く | 1946 | 油彩、麻布 |
ご覧、飛ぶよ | 1946頃 | 〃 |
村一番の可愛い娘 | 1946 | カゼイン、紙 |
傷ついた子供 | 1946頃 | 油彩、麻布 |
田舎の赤ん坊 | 1946 | カゼイン・テンペラ、ファイバー・ボード |
捨てられた宝物 | 1945-46 | 油彩、麻布 |
恋人たち | 1946 | カゼイン、板 |
少女よお前の命のために走れ | 〃 | カゼイン、紙 |
彼が王様 | 〃 | ドローイング、紙 |
救助 | 1947 | 油彩、麻布 |
祭りは終わった | 〃 | 〃 |
ここは私の遊び場 | 〃 | 〃 |
寡婦 | 1948 | カゼイン、紙 |
安眠を妨げる夢 | 〃 | カゼイン、板 |
夢 | 〃 | カゼイン、パネル |
カーニバル | 1949 | 油彩、麻布 |
出口 | 1950 | 〃 |
舞踏会へ | 〃 | 〃 |
鯉のぼり | 〃 | アクリル・麻布 |
東洋の贈り物 | 1951 | 油彩、麻布 |
通りの向側 | 〃 | カゼイン、紙 |
仮面舞踏会 | 〃 | 油彩、麻布 |
カーニバル | 1951頃 | ペン、インク、紙 |
行者たち | 〃 | 油彩、麻布 |
素晴らしい手品師 | 1952 | 〃 |
ミスター・エース | 1952頃 | 〃 |
手品師No.2 | 1952 | インク・墨・鉛筆、紙 |
夜明けに働く | 1952頃 | インク・ドローイング、紙 |
作品名 | 制作年 | 材質・形状 |
---|---|---|
乳しぼり | 1922 | 亜鉛板リストグラフ |
岩の上に座る水着の女 | 1924 | 〃 |
静物(桃と葡萄) | 1927 | 〃 |
プリッシェル | 〃 | 〃 |
花瓶No.2 | 〃 | 〃 |
夏(木にもたれる娘) | 〃 | 〃 |
三人の踊り子 | 〃 | 〃 |
身支度する女 | 1928 | 石版リトグラフ |
踊り | 〃 | 〃 |
ドアに立つ女 | 〃 | 〃 |
人台のある室内 | 〃 | 〃 |
夜の巡回(パリ) | 〃 | 〃 |
演技の前 | 1932 | 〃 |
彫刻の流し型と葡萄 | 〃 | 〃 |
バーレスクの女王 | 1933 | 〃 |
造花 | 1934 | 〃 |
カフェNo.2 | 1935 | 石版リトグラフ |
海岸の板敷遊歩道にて | 1936 | 〃 |
無料宿泊所 | 1938 | 〃 |
自転車乗り | 1939 | 〃 |
仮面 | 1948 | 〃 |
作品名 | 制作年 | 材質・形状 |
---|---|---|
海岸の板敷遊歩道から | 1936 | ヴィンテージ・ゼラチン・シルバー・プリント |
コニー・アイランドの3人の女性 | 1936頃 | 〃 |
ユージン・スパイカー | 1937 | 〃 |
モデル | 〃 | 〃 |
〃 | 〃 | 〃 |
泳ぐロゼラ | 〃 | 〃 |
パレード | 〃 | 〃 |
メイ・デーのパレード | 〃 | 〃 |
モデルの顔 | 〃 | 〃 |
ジャドスン・スミス | 1937頃 | 〃 |
無題(見捨てられた薪小屋) | 〃 | 〃 |
無題(機械) | 〃 | 〃 |
無題(農機具) | 〃 | 〃 |
無題(見捨てられた納屋) | 〃 | 〃 |
本を読むサラ・クニヨシ | 1938 | 〃 |
イースト・キングストン | 〃 | 〃 |
レスリングをする少年 | 〃 | 〃 |
クラス・ピクニック | 〃 | 〃 |
雪のユニオン・スクウェア | 〃 | 〃 |
クラス・ピクニック | 〃 | 〃 |
コニー・アイランド | 〃 | 〃 |
古い椅子 | 〃 | 〃 |
無題(コニー・アイランド) | 〃 | 〃 |
万国博覧会のパレード | 〃 | 〃 |
無題(泳ぐ人) | 1938頃 | 〃 |
無題(岩上の人々) | 〃 | 〃 |
黒人のカップル | 1939 | 〃 |
万国博覧会のパレード | 〃 | 〃 |
鏡に映る万国博覧会場 | 〃 | 〃 |
木馬 | 制作年不詳 | 〃 |
- 新人雑誌関係記事
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新聞記事
読売/平成元年11月4日、平成2年2月1日(夕)、2月10日、2月20日、2月20日(夕)、2月25日、3月1日(夕)、3月9日(夕)、3月15日(「具象派の苦闘と実験」)、(河本信治)、3月20日、3月24日(夕)
毎日/2月1日(夕)
朝日/2月20日、2月24日(夕)
産経/3月1日(夕)
京都/3月3日
日経/3月26日(夕)
奈良/3月3日
MK/2月7日
雑誌記事
芸術新潮 11月号(1989年)
新美術新聞No.552「国吉康雄回顧展・内面を語る絵画世界」(渡辺圭祐)
岡山県立美術館ニュースNo.8 (1990年1月号)
文化庁月報 No.257
読売テレビ社報 304号
展覧会目録(平成2年度)
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