写実の系譜III 明治中期の洋画

 本展は東京国立近代美術館の本年度特別展として企画され、当館の特別展と交換展示されたものである。東京国立近代美術館では「写実の系譜」展シリーズとして、昭和60年度に「I 洋風表現の導入−江戸中期から明治初期まで」、昭和61年度に「II 大正期の細密描写」を開催し、日本の近代絵画のもつ諸問題を写実表現のうえから検証してきた。本展は同シリーズの第3弾で、時代的には上記二展覧会で扱った時代の間、すなわち明治20年代から30年代にかけてを対象としている。

 この時代は、明治22年の憲法制定を皮切りに、政治的にも、社会的にも近代的な諸制度が整えられ、近代化へ本格的に歩み始めた時期である。美術の上においても、移植文化人としての油彩画を根づかせるために、アカデミズムという制度の確立を目差そうとしたのであった。また、画家の側からいえば、油彩画という技術の消化の上に立って、表現としての可能性を追求しようとしたといえよう。その結果、写実という手段によりながら、現実を素朴に写し取るだけでなく、そこに自己の内面を投影したのである。この制度と表現という相反する方向を持ちながら揺れ動いたのが、明治中期の洋画であったと考えられるが、この時期の洋画家たちの写実表現をめぐる問題を検証するために、同時代のフランス、ドイツの画家9人を含む25人の画家たちが選ばれ、(1)制度のなかの絵画−歴史画・構想画を中心に(2)同時代の表現−風俗画を中心に(3)個人的観照の成立−風景画・浪漫主義絵画を中心に、という三部構成によって展示された。総出品点数は99点であった。

会期
12月20日(火)〜平成元年2月5日(日)
入場者数
総数 17,776人(一日平均 508人)
出品目録
〔I 制度のなかの絵画−歴史画・構想画を中心に〕
作者名 作品名 制作年 材質・形状等 寸法(cm)
曽山幸彦 弓術之図 1881 コンテ・紙 179×121
武者試鵠図 1890 油彩・麻布 151.8×104.2
原田直次郎 騎龍観音 1890 272×183
素盞鳴尊八岐大蛇退治画稿 c.1895 77.7×53.5
川村清雄 蚊龍天に昇る 1893 90.5×181
かたみの直垂 1899-1911 109.1×172.7
山本芳翠 浦島図 1893 122×168
岡田三郎助 矢調べ 1893 72.5×105
ジャン=ポール・ローランス マルソー将軍の遺体の前のオーストリアの参謀達 1877 210×300
ポルトガルのイザベルの棺を前にしたフランソワ・ド・ボルジアのための習作 46.3×34.5

作者名 作品名 制作年 材質・形状等 寸法(cm)
ジャン=ポール・ローランス 印刷術の歴史のための習作 油彩・麻布 41.2×21.3
耳飾りをつけた女 40.5×32
ガブリエル・フォン・マックス 聖女カタリーナ・エメリックの法悦 1885 84.5×67.6
美術を審判するサルたち 1889 84.5×107.5

〔II 同時代の表現−風俗画を中心に〕
作者名 作品名 制作年 材質・形状等 寸法(cm)
原田直次郎 神父 1885 油彩・麻布 45.5×36.2
靴屋の阿爺 1886 60.3×46.5
エクステル像 49.8×46.5
ドイツの少女 c.1886 33×21
老人 28.6×21.9
ガブリエル・マックス像 c.1884〜86 39.5×30.4
浅井 忠 農夫帰路 1887 135×98
旅順戦後の捜索 1895 135×98
黒田清輝 画室内 1889 40.5×32
針仕事 1890 39.8×30.8
アトリエ 73×60
読書 1891 99×80
摘草 126.3×92.5
洋燈と二児童 100.4×81
プレアの少女 1892 81×54
赤髪の少女 80.6×64.5
舞妓 1893 81.3×64.8
昼寝 1894 49.8×61
逍遙 1895 57.7×63
昔語り下絵(僧) 1896 78.8×42.3
昔語り下絵(仲居) 93.8×47.7
昔語り下絵(男と舞妓) 78×51.5
湖畔 1897 69×84.7
樹蔭 1898 78×93.7
久米桂一郎 林檎拾い 1891 油彩・麻布 115.2×87.8
村娘 1894 54.5×38
藤島武二 逍遙 1897 39.4×50
和田英作 渡頭の夕暮 126.6×189.3
少女新聞を読む 54.8×84.5
小林千古 ミルクメイド 69×50.8
鹿子木孟郎 津の停車場(春子) 1898 57.5×39.7
ジプシーの女 c.1906〜7 91×65
ノルマンディの浜 1907 164×219
ノルマンディの浜習作(足) c.1907 54.5×38
ノルマンディの浜習作(籠) 37.5×53.4
ノルマンディの浜習作(手) 37×53
ノルマンディの浜習作(船) 40×33
ノルマンディの浜習作(構図) 46×37
小林万吾 門づけ 1900 156.5×107.5
満谷国四郎 戦の話 1906 107.4×151.5
かりそめのなやみ 1907 135.5×86.5
中村不折 老漁夫 1906 167×97
ジュール・ブルトン 休息 1862 74×60
落穂を拾う女のための習作 1877 55.5×36.5
仕事の終わり 1887 84×120
ジュリアン・デュプレ 収穫 1882 65.1×80.6
ジャン=シャルル・カザン 野辺の女 1880〜88 60×73.5
ジュール・バスティアン=ルバージュ ロンドンの靴磨き少年 1882 132×89
ラファエル・コラン 自画像 1882 56.5×46
エリーズ嬢の肖像 1885 128×88
花月(フロレアル) 1886 111.5×191
麦わら帽子を持つ婦人 1894 194×112

作者名 作品名 制作年 材質・形状等 寸法(cm)
レオン・レルミット 収穫 1891 油彩・麻布 97.8×77.8
落穂拾い 65.5×81
ユリウス・エクステル 原田直次郎の肖像 1884 170×90
ガブリエル・フォン・マックス キノコをむく少女 1896 98.6×74.8

〔III 個人的観照の成立−風景画・浪漫主義絵画を中心に〕
作者名 作品名 制作年 材質・形状等 寸法(cm)
原田直次郎 風景 1886 油彩・麻布 74×104.5
雪景 油彩・板 33.3×24.5
蓮池 33.3×24.5
風景 1897 油彩・麻布 76×110.5
浅井 忠 藁屋根 c.1887 47×69.5
春畝 1888 56.2×74.8
収穫 1890 69.6×98.2
農家(日傘のある風景) c.1895 25×37.5
グレーの洗濯場 1901 33.1×46.2
グレーの風景 45.5×60.5
グレーの柳 59.5×79.5
黒田清輝 田舎家 1888 42.3×54.3
落葉 1891 76.2×62.1
枯れ野原(グレー) 49.3×65
ブレアの海岸 1892 38.7×64
鉄砲百合 1909 61.5×81
久米桂一郎 ブレア島 1891 41×62
寒林枯葉 44.2×60.4
フランス風景 32.2×41.3
晩秋 1892 73×98
清水秋景図 1893 55×45.8
京都加茂川の景 30×43.5
夏の夕(鎌倉の景) 1894 油彩・麻布 42.3×55.1
秋景 1895 99.2×73
吉田 博 雲叡深秋 c.1898 11.5×69
藤島武二 浜辺の朝 41.9×56.2
岡田三郎助 ムードンの夕暮 1899 54.1×65.1
和田英作 夕暮(グレー) 1902 60.8×45.8
グレー風景 c.1902 33.6×45.8
ラファエル・コラン 荒地 45.6×55.6
黒田清輝 智・感・情 1899 (各)180.6×99.8
小林千古 パッション 1901 145.6×114.3
和田英作 こだま 1902 124×90
藤島武二 天平の面影 198.5×94
青木 繁 大穴牟知命 1905 75×127
日本武尊 1906 70×37
わだつみのいろこの宮 1907 181.5×70
秋声 1908 133.7×100

新聞雑誌関係記事
新聞記事
朝日/11月7日(夕)(米倉 守)、'89年1月19日(らくらく京都)
読売/12月17日
毎日/12月21日、12月15日(マイキョート)、12月22日(夕)
京都/'89年1月21日
日経/'89年1月9日(夕)
サンケイ/12月22日
MK新聞/12月22日
雑誌記事
Vacation 1989、No.24 2月号

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