写実の系譜II−大正期の細密描写

 日本の近代美術の形成発展とその過程で生じた諸問題を、写実的表現のさまざまな諸相を通して考えようとする「写実の系譜」展シリーズの第2回展である。第1回展「写実の系譜I 洋風表現の導入」では江戸時代中期から明治時代初期に抬頭、発展してきた写実表現を洋風表現の導入という視点から検証し、日本美術における近代の胎動と成立を明らかにしたが、今回の展覧会においては大正時代(1912〜1926)の美術に集中してあらわれてくる特徴的な傾向である細密描写−対象物に即して克明緻密に描く、また克明緻密に描くことによって完成する絵画−細密画にスポットをあて、それらの描写や作品の担って近代美術史上での意味を検証することを目的とした。

 展示にあたっては全体を3つのジャンルに分け、(1)岸田劉生とその周辺、(2)速水御舟とその周辺、(3)京都の日本画で構成した。本展で取り上げた作家たちは洋画では岸田劉生、木村荘八、高須光治、椿貞雄、中島正貴、横堀角次郎の草土社創立同人たち。また河野通勢、三岸好太郎らの人々。日本画では速水御舟をはじめとする小茂田青樹、牛田鶏村、富取風堂、小林古径ら東京画壇の作家たち。京都画壇では国画創作協会に結集した土田麦僊、村上華岳、榊原紫峰、入江波光、小野竹喬および同協会展に応募した画家たち。さらには少し若い世代に属する福田平八郎、徳岡神泉らである。出品作家数30名。作品数133点。

 この展覧会は東京国立近代美術館の昭和61年度特別展として企画されたものである。

会期
12月16日(火)〜昭和62年1月25日(日)
入場者数
総数 15,377人(一日平均 549人)
共催
東京国立近代美術館
出品目録
(1)岸田劉生とその周辺
作者名 作品名 制作年 材質・形状 寸法(cm)
岸田劉生 赤土と草(草と赤土の道) 1915 油彩・麻布 33.5×45.0
道路と土手と塀(切通しの写生) 56.0×53.0
冬の崖上の道 41.0×41.0
冬枯れの道路(原宿附近写生・日の当った赤土と草) 1916 60.2×80.2
油彩・板 37.8×26.7
古屋君の肖像(草持てる男の肖像) 45.5×33.5
壺の上に林檎が載って在る 40.0×29.5
林檎三個 1917 油彩・麻布 31.8×41.0
川幡正光氏之肖像 1918 33.5×33.5
静物(白き花瓶と台皿と林檎四個) 44.5×53.0
静物(手を描き入れし静物) 50.0×61.0
麗子肖像(麗子五歳之像) 45.3×38.0
静物(赤林檎三個、茶碗、ブリキ罐、匙) 1920 36.5×44.0
麗子微笑(青果持テル) 1921 45.5×38.0
竹籠含春(花籠) 1923 36.5×44.0
岸田劉生 蕪図 1925 油彩・麻布 31.0×39.0
清宮 彬 静物 1922 41.0×52.0
木村荘八 壺を持つ女 1915 81.7×60.4
青いガラス瓶 c.1917 24.6×33.4
河野通勢 三人の乞食 1915 65.0×90.5
河柳の樹の下で 1914 油彩・厚紙 45.8×60.0
自画像 1917 油彩・麻布 91.2×65.3
自画像 73.0×51.0
自画像 1918 油彩・厚紙 34.1×26.1
林檎 34.7×42.3
1919 油彩・麻布 60.9×80.4
雑司ケ谷風景 1920 45.5×60.5
中島正貴 静物 1923 37.8×45.5
椿 貞雄 自画像 1915 60.6×45.5
八重子像 33.8×24.5
赤土の山 72.7×72.7
冬枯れの道 1916 36.3×44.0
腕鎮を持てる自画像 1917 60.6×50.0
八重子像(酸漿を持てる少女) 1918
雪国の少女 59.5×48.5
横堀角次郎兄像 1921 39.4×31.8
菊子立像 1922 油彩・板 45.5×33.4
牡丹図 1923 油彩・麻布 63.0×50.0
蕪とくわい c.1916 23.2×26.1
横堀角次郎 斎藤山より大崎望遠 1915 59.5×79.0
崖と道 c.1916 油彩・板 45.4×33.3
切り開かれつつある地 1917 油彩・麻布 44.0×44.0
細き道 油彩・板 30.0×30.4
高須光治 藤原君の肖像 1924 21.0×17.8
三岸好太郎 赤い肩かけの婦人像 油彩・麻布 66.0×51.0

作者名 作品名 制作年 材質・形状 寸法(cm)
大沢鉦一郎 ジンベを着た少女 1920 油彩・麻布 72.8×53.0
眠れる犬 1923 65.3×91.0
宮脇 晴 自画像 1920 81.0×61.0
母六六歳之像 1923 53.0×41.0
松岡正雄 老婆 1916 80.4×60.6
落日の風景 1917 60.6×80.4

(2)速水御舟とその周辺
作者名 作品名 制作年 材質・形状 寸法(cm)
速水御舟 洛北修学院村 1918 絹本彩色・額 131.7×97.0
比叡山 1918 絹本彩色・軸 94.1×131.3
林檎 1920 26.4×23.9
茶碗と果実 1921 26.9×23.8
白磁の皿に柘榴 絹本彩色・額 24.0×27.0
鍋島の皿に柘榴 36.5×49.2
菊花図 紙本彩色・屏風(四曲一双) 各93.7×181.6
1923 紙本彩色・軸 54.2×50.8
甘藷図 55.3×55.5
山椿 絹本彩色・軸 26.9×23.9
平野晴景 1924 絹本彩色・額 61.5×93.0
春昼 絹本彩色・軸 54.8×56.9
素描図巻(虫類) 1925 紙本彩色・巻子 31.0×227.9
素描図巻(魚類) 31.0×221.5
素描図巻(寒牡丹) 1926 31.5×376.7
素描図巻(鳥類) 1927 31.4×220.7
寒鳩寒雀 絹本彩色・軸 58.6×42.3
小茂田青樹 茶の花 1919 37.0×43.0
春の庭 1917 102.1×71.1
椿 c.1919-20 紙本彩色・軸 28.5×28.7
50.0×51.8
外秩父の朝 1920 絹本彩色・軸 66.9×99.6
農村の船着場 紙本彩色・軸 42.8×47.8
松江風景 37.0×59.0
雪景 33.5×47.5
小茂田青樹 出雲江角港 1921 紙本彩色・軸 38.7×59.5
山兎 1920 紙本彩色・額 43.0×51.0
出雲枕木山雪景図 1921 絹本彩色・軸 30.5×42.1
楽山新秋 61.0×55.0
静物(蜜柑に茶碗) 紙本彩色・軸 34.0×32.5
ポンポンダリア 1922 絹本彩色・軸 78.9×56.0
田舎冬景 c.1923 絹本墨画・軸 23.6×32.7
絹本彩色・軸 35.0×42.0
秋果 c.1923-24 23.3×20.5
蔬菜 1924 48.6×55.2
牽牛花 64.6×75.0
手長蝦 31.3×35.5
茶梅 1910s'(?) 紙本彩色・額 23.5×30.1
牛田鶏村 はこねの山 1922 絹本彩色・額 118.2×146.5
富取風堂 1920 178.0×57.0
静物 1921 絹本彩色・軸 25.5×31.0
小林古径 罌粟 165.0×99.6
静物 1922 油彩・麻布 58.0×83.2

(3)京都の日本画
作者名 作品名 制作年 材質・形状 寸法(cm)
村上華岳 山科春景 1919 絹本彩色・軸 131.0×50.2
早春風景 43.0×51.0
早春風景 143.0×50.7
餞暑瓜茄之図 1924 39.2×49.7
41.2×51.4
34.9×50.2
鰈と鰕 38.6×50.2
海産奇好 絹本彩色・額 41.5×51.7
絹本彩色・軸 30.2×42.4
野生清興 絹本彩色・額 40.5×50.7
入江波光 波切の図 1919 絹本彩色・軸 35.0×42.0
波切風景 絹本彩色・額 26.5×24.0
榊原紫峰 枇杷の図 c.1912 絹本彩色・軸 120.5×40.8
夕陽 c.1913 138.2×55.8
奈良の森 1920 絹本彩色・屏風(二曲一双) 188.0×233.0
上田麦僊 蔬菜 1924 紙本彩色・額 49.5×64.3
1926 絹本彩色・軸 54.0×74.8
小野竹喬 波切村 1918 絹本彩色・屏風(四曲一双) 167.5×372.0
海島 1920 絹本彩色・屏風(二曲一双) 各172.0×190.0
春耕 1924 絹本彩色・屏風(二曲一隻) 165.0×161.0
甲斐荘楠音 婦人像 1919 絹本彩色・額 59.5×57.0
青衣の女 絹本彩色・屏風(二曲一隻) 145.0×165.0
c.1910s' 絹本彩色・額 27.3×24.3
榊原始更 c.1926 37.5×47.2
鶏頭・静物 1918 絹・木炭・額 66.0×84.6
燻魚 1929 麻布・彩色・額 39.0×51.0
岡村宇太郎 漁師 1924 絹本彩色・額 52.4×66.0
c.1926 45.0×44.3
杉田勇次郎 人形 1924 絹本彩色・額 40.0×49.0
蔬菜 1925 45.7×52.7
石川晴彦 父像顔 1922 32.0×25.0
母像 35.0×28.8
福田平八郎 立葵 c.1926 絹本彩色・軸 127.3×41.7
徳岡神泉 c.1922 絹本彩色・額 62.0×85.0
狂女 c.1919 96.0×56.5
椿 c.1922 100.0×84.5
上村松篁 花鳥 1924 絹本彩色・軸 82.0×69.0
椿 絹本彩色・額 165.0×186.0

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