現代美術における写真 −1970年代の美術を中心として−

 本展は昭和52年度に開催された「1960年代−現代美術の転換期」に続いて、"写真"というテーマで70年代の現代美術の一側面を照射しようとする試みであった。前者が60年代の日本美術を包括的に紹介したのに対し、本展は写真を通した新しい表現に焦点を当て、同時期の世界の動向と比較するために外国作家をも含めた構成となった。また、70年代の活発な写真表現の応用の背景説明として、写真撮影や写真技法を絵画表現に持ち込んだ英、米のポップ・アートの作品も導入部として用意された。

 60年代の作家が、現実世界の代替物、現実の引用として写真像を多用したのに対し、70年代の作家は根本的に異なる姿勢で写真に取り組んだ。そこにはコンセプチュアル・アート(概念芸術)の影響を色濃く見て取ることができる。芸術の基本的構造を問い直し、視覚と認識の関係性、あるいは作家の行為の記録として様々な形で写真を用いて試みられた作品は、芸術概念の根拠への疑問、作家の概念自体を素材として扱うことにおいて一応の共通性を見出すことができる。彼らは映像それ自体を検討課題としたのではなく、写真を彼らが捉えた問題や概念を示す手段として用いた。したがって、その問題意識は個別的であり包括的に論ずることは困難なことである。しかし70年代美術において写真が特徴的な役割を演じたことは、明確に示されたと言える。一方、問題とされなかった作品としての写真映像の質に、作家のコンセプトやメディア認識の深化の度合が明瞭に反映されている事実も面白い発見であった。

 なお本展は、東京国立近代美術館の昭和53年度特別展として企画されたものである。

会期
12月13日(火)〜昭和59年1月22日(日)
入場者数
6,191人(1日平均213人)
共催
東京国立近代美術館
出品目録
作者名 作品名 制作年 材質・技法等 寸法(cm)
リチャード・ハミルトン 室内 1964〜65 孔版・紙 49.7×63.7
静物 1965 写真・フォトティント・板 89×91
わたしのマリリン 1965 孔版・紙 51.9×63.3
ホワイト・クリスマス 1967 孔版・紙 51.6×76.4
回文 1974 コロタイプ・紙 67.0×52.0
デイヴィッド・ホックニー 私の影のあるグランド・キャニオン峡谷、1982年10月 1982 フォトコラージュ 96.5×158.8
髪を洗うイアン、1983年1月、ロンドン 1983 フォトコラージュ 76.2×83.8
在日英国大使館での昼食会、1983年2月16日 1983 フォトコラージュ 116.8×210.8
ロバート・ラウンシェンバーグ ナイト・グリップ 1966 石版・紙 63.3×45.7
ブースター 1967 石版・孔版・紙 183.3×90.5
ウォーター・ストップ 1968 石版・紙 137.5×80.2
ジェームス・ローゼンクィスト ロッキー大分水嶺から離れて 1973〜74 石版・紙 107.3×200
マリリン 1974 石版・紙 90.5×69.5
アンディ・ウォーホル 電気椅子 1971 孔版・紙 10点組各90×121.6
畦地拓治 CARVING-WAVE 1983 孔版・木、アルミ、銅、アクリル、大理石 3点組各95.5×140
彦坂尚嘉 UprightSea(垂直の海) 1972〜76 ブループリント 24点組各49.5×76
今井祝雄 ポートレート 1976 写真/孔版・ガラス板 21点組各40.7×31.6
デイリーポートレート 1979年5月30日 ポラロイド写真、アクリル箱 5点組(1983年現在)各26.0×11.0×11.8
今井祝雄 タイムコレクション 1981 カラー写真(CPプリント) 連作より2点、各60.6×72.7
柏原えつとむ 方法のモンロー 1972〜75 鉛筆、色鉛筆、写真、孔版、コピー、ブループリント、フロッタージュ、切り抜きほか 連作より54点、基本紙型B3(36.4×51.5)
Mr.Xとは何か? 1968〜69 テキスト、鉛筆、インク、ポスターカラーほか 柏原えつとむ・小泉信夫・前川欣三による共同プロジェクト
片瀬和夫 記号法(事物と痣) 1983 写真 3点組各60×60
河口龍夫 陸と海 1970
木村佳通代 '76-D 1976 カラーインク・写真 72×102
'79-38-A 1979 アクリル絵具・写真 51×72.5
'79-39-A 1979 アクリル絵具・写真 51×72.5
小本 章 Seeing82-1 1982 カラー写真 103×73
Seeing81-11 1981 カラー写真 103×73
郭 徳俊 フォードと郭 1974 写真 150×105
レーガンと郭 1981 写真 150×105
真板雅文 状況1 1973年10月 写真、螢光灯、コード (写真)203×193
流動No.3 1979 写真、鉛、ガラス、木 350×300×50
松本 旻 風景6(Painting) 1975〜83 アクリル絵具・麻布 120×181
風景6-C(銅版) 1975 銅版に酸腐触 45×60.5
風景6-C(銅版画) 1975 エッチング・紙 45×60.5
風景6(Block) 1974〜75 板ガラスにフッ素加工/板ガラス(鏡面)にフッ素加工/銅版に酸腐蝕/亜鉛版に酸腐蝕 120.0×180.5

作者名 作品名 制作年 材質・技法等 寸法(cm)
野村 仁 道路上の日時(通称) 1970 写真 34点組 基本寸法各94×97
'moon'score(月の譜) 1975〜 写真、写真ファイル、ミュージックテープ 連作中より写真パネルを2点各81×100
曲面への接平面群または自発的対称性の破れ 1979 カラー写真、チョーク、水銀 写真の全長520
aspinincurvedair(湾曲した大気中の自転) 1980〜82 カラー写真 4点組各81×103.7
斎藤 智 Untitled81-h 1981 写真、ガラス、鏡、木箱 60×90×6
インスタレーション 1983 カラー写真
Untitled75-b 1975 カラー写真 75×90
植松奎二 測ること−風景I 1976 写真 5点組各61×79
若江漢字 見ることと視えること:大きさについて−'82-1 1982 カラー写真、鉄輪、レンガ
山本圭吾 行為の重量(カット!カット!)No.10 1980 写真 4点組各35×41
山中信夫 ピンホール・ルームI 1973 写真 250×250
ある1つの点−7つの箱による 1982 写真、木箱 240×240
ジョン・バルデッサーリ ボードレール、ポーに出会う 1980 インスタレーション(カラーおよびモノクローム写真)
恐怖を研究しようとした男の物語 1982 写真 213.4×182.4
ブラック・ダイス 1982 カラーエッチング9点 モノクローム写真1点組 版画 各42×50
ベルント&ヒラ・ベッヒャー 給水塔(フランス) 1972〜73 写真 9枚組各50×40
給水塔(ベルギー/フランス/ドイツ) 1972〜80 写真 9枚組各50×40
給水塔(アメリカ) 1974〜80 写真 9枚組各50×40
ヴィクター・バーギン US77 1977 写真、テキスト 12点組各30.5×45.8
ヤン・ディベッツ 遠近法の修正−私のアトリエ1、2:壁の上の対角線のある正方形 1969 写真 110×110
ファン・アベ美術館の最も短い日 1970 カラー写真 177×171
無題 1973 カラー写真、鉛筆・紙 60.5×183.5
ヘル・ファン・エルク ロシア式外交術 1974 アクリル絵具、カラー写真 179×133
さよならII グワッシュ、インク、カラー写真 125×111
ハミッシュ・フルトン 水平線下の太陽、イギリス 写真、テキスト 101×121
ソア山 1976 写真、テキスト 199×103
北フランス/南イギリス 1977 写真、テキスト 2点組各24.5×35.6
ギルバート&ジョージ うすよごれた部屋4 1975 写真 184×154
おまえは怒っているのか、それとも退屈なのか? 1977 写真 240×200
友情 1982 写真 420×450
ハンス・ハーケ あなたも有利なチェイス・マンハッタン銀行を 1976 孔版・アクリル板、テキスト 2点組各122×122
ペイン・ウェバー社ありがとう 1979 カラー写真、テキスト 2点組各107.3×103.2
ジョセフ・コスース ひとつの、そして3つの鏡 1965 インスタレーション(写真、鏡、テキスト)
バーバラ・クルーガー あなたは他人の失敗を喜ぶ 1982 写真、テキスト 127×101.6
あなたが仕事をすれば歴史が作られる 写真、テキスト 176.4×121.9
リチャード・ロング 山頂の石、ボリヴィア 1981 写真、テキスト 2点組各90×125
山村の薪、ボリヴィア 写真、テキスト 88.5×124

新聞雑誌関係記事
毎日/10月26日(夕)(田中幸人)
京都/11月10日(池内 紀)、11月16日、12月17日(藤 慶之)、1月14日
朝日/11月14日(夕)(東野芳明)、12月21日(夕)(吉村良夫)、12月17日
サンケイ/12月16日、1月9日(高橋 亨)
カメラ・マイニチ363号(1983年12月号)(中原佑介)
新美術新聞348号(11月1日号)(千葉成夫)

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