坂本繁二郎展

 本展は、ヨーロッパに学びながら、絶えざる思索を通して独自の東洋的油彩画を切り拓いた坂本繁二郎(1882〜1969)の生誕100年にあたり、その芸術の全貌を改めて回顧しようとするものであった。

 坂本繁二郎は福岡県久留米に生まれ、20歳の年上京して不同舎、太平洋画会研究所に学んだ。やがて文展等でしばしば受賞して頭角を現わし、大正3年の二科会創立にあたっては鑑査委員に推されたが、当時、30歳をすぎたばかりの彼はすでに絵画についての確固とした考えを築いていた。あくまでも実証的な現実認識に立ちながら、存在の無限の深さに触れる精神的世界の表現こそ絵画の本道だというのである。その後、大正10年には渡仏して堅固な構成と高雅な色彩の表現を習得したが、彼の抱いていた絵画の根本理念については従来の信念の正しさを再確認したという。大正13年に帰国すると都会の煩わしさを避けて郷里近くの八女に永住の地を求め、以後、放牧馬、柿、馬鈴薯などから砥石、植木鉢など身辺の静物、また能面などのモチーフに取り組んだことは周知のとおりである。昭和31年には文化勲章を受け、その後も求道者にも似た画業三昧の日々は続いた。最晩年の<月>の連作などには、彼の到達した深く清澄な、しかも温か味のある無類の芸術境が披瀝されているが、それはまさに坂本繁二郎の人そのものと等価・等質の芸術であったといえよう。

 本展では、その70余年にわたる画業の中から、油彩画120点、水彩画・素描18点を選んで展示した。東京国立近代美術館、当館、久留米・石橋美術館の三会場を巡回した大回顧展であり、多くの注目を集めた。

会期
5月18日(火)〜7月4日(日)
入場者数
総数 68,941人(1日平均1,641人)
共催
東京国立近代美術館
久留米・石橋美術館
朝日新聞社
出品目録
題名 制作年 材質 寸法(cm) 備考
立石谷 1897 墨・絹 143.4×82.5  
秋の朝日 1899 油彩・紙 26.4×35.2  
大島の一部 1907 油彩・カンバス 116.1×72.8 東京勧業博覧会
北茂安村の一部 1907 油彩・カンバス 143.9×136.5 第1回 文展
新聞 1910 油彩・カンバス 80.5×60.7  
うすれ日 1912 油彩・カンバス 71.4×116.4 第6回 文展
魚を持って来た海女 1913 油彩・カンバス 117.0×80.5 第7回 文展
人参畑 1914 油彩・カンバス 61.0×80.8 国民美術協会 第2回展
1915 油彩・カンバス 56.1×56.2 太平洋画会 第11回展
三月頃の牧場 1915 油彩・カンバス 60.9×80.4 第2回 二科展
国道筋 1916 油彩・カンバス 59.0×78.5 二科展
1916〜41 油彩・カンバス 72.9×117.0  
髪洗 1917 油彩・カンバス 80.0×60.7 第4回 二科展
静物 1918 油彩・カンバス 45.3×60.4 第5回 二科展
1920 油彩・カンバス 71.0×116.5 第7回 二科展
静物 1921 油彩・カンバス 45.7×53.2  
ヴィラ・グルネー 1922 油彩・カンバス 33.3×41.1  
ヴィラ・クラマルト 1922 油彩・カンバス 31.9×41.0  
キャンペレ 1922 油彩・カンバス 33.0×41.0  
ポルテ・シャンチー 1922 油彩・カンバス 31.9×40.9  
静物 1922 油彩・カンバス 65.3×80.5 第12回 二科展
少女 1922 油彩・カンバス 41.2×33.3 第12回 二科展
少女 1922 油彩・カンバス 41.0×33.0  
読書 1922 油彩・カンバス 41.0×31.9  
婦人像 1922〜68 油彩・カンバス 81.0×64.8  
巴里郊外 1923 油彩・カンバス 53.4×65.4  
クロアジック村 1923 油彩・カンバス 31.8×40.9  
ヴァンヌ郊外 1923 油彩・カンバス 33.0×40.8 第12回 二科展
ブルターニュ 1923 油彩・カンバス 45.9×54.8 第12回 二科展
帽子を持てる女 1923 油彩・カンバス 80.6×65.3 第12回二科展 第16回サロン・ドートンヌ日本部
眠れる少女 1923 油彩・カンバス 41.0×33.2 第12回二科展 第16回サロン・ドートンヌ日本部
裸婦習作 1923 油彩・カンバス 53.6×37.6  
老婆 1923 油彩・カンバス 80.2×65.4 第12回 二科展
老婆習作 1923 油彩・板 41.0×32.1  
巴里の乞食 1923 グワッシュ・紙 27.0×19.7  
巴里の乞食 1923〜27 油彩・カンバス 40.0×32.8  
家政婦 1923〜27 油彩・カンバス 80.6×100.2 第14回 二科展
1925 油彩・カンバス 45.8×61.4 第12回 二科展
1926 油彩・カンバス 44.5×52.0  
放水路の雲 1927 油彩・カンバス 38.0×45.5  
母の像 1927 油彩・カンバス 52.9×45.8  
1928 油彩・板 23.5×33.0 第15回 二科展
自画像 1929 油彩・紙 45.5×38.0  
母仔馬 1930 油彩・カンバス 71.2×116.8 第17回 二科展
黄馬 1930 油彩・カンバス 45.5×60.5 第17回 二科展
自像 1930 油彩・カンバス 52.6×45.0  
放牧三馬 1932 油彩・カンバス 80.5×100.0 第19回 二科展
鳶形山 1932 油彩・板 23.1×33.0  
1932 油彩・板 23.8×33.0  
繋馬 1934 油彩・カンバス 91.3×117.0 第21回 二科展
雨中馬 1934 油彩・板 23.8×24.1  
松山 1935 油彩・カンバス 45.7×53.3 清光会第3回展
二仔馬 1935 油彩・カンバス 80.5×100.0 第22回 二科展
耕作白馬 1936 油彩・カンバス 45.0×52.8 博多築港記念大博覧会
放牧二馬 1936 油彩・カンバス 91.0×116.5  
水より上る馬 1937 油彩・カンバス 80.0×116.2 第24回 二科展
厩の白馬 1937 油彩・カンバス 30.9×39.9  
林間馬 1938 油彩・カンバス 50.0×60.0 清光会第5回展
松間馬 1938 油彩・カンバス 90.8×116.8 第25回 二科展
三仔馬 1938 油彩・カンバス 41.0×53.0 銀座三昧堂第五回洋画展
母仔馬 1939 油彩・カンバス 22.2×15.8 半弓会第2回洋画展
柿と栗 1939 油彩・カンバス 31.8×40.9  
窓の馬 1940 油彩・カンバス 31.6×41.2 半弓会第3回洋画展
林檎と馬鈴薯 1940 油彩・カンバス 45.4×53.1 福岡県美術協会第1回展
水上牛馬 1940 油彩・カンバス 31.9×41.2  
1941 油彩・カンバス 32.0×41.0 清光会第8回展
甘藍 1941 油彩・カンバス 80.4×100.1 第28回 二科展
1941 油彩・カンバス 32.0×41.0  
鶏卵 1942 油彩・カンバス 38.2×45.6 清光会第9回展
南瓜 1942 油彩・カンバス 50.2×60.8 第3回 福岡県美術展
烏瓜 1942 油彩・カンバス 32.0×41.2  
砥石 1943 油彩・カンバス 45.6×53.3 清光会第10回展
壁画下図 1943 油彩・カンバス 50.0×60.8 第30回 二科展
1944 油彩・カンバス 38.2×45.5 西部美術協会第1回会員展
1944 油彩・カンバス 45.5×52.9  
煉瓦と瓦 1944〜50 油彩・カンバス 45.5×53.0  
八女風景 1946 油彩・カンバス 32.0×41.4  
能面と謡本 1946 油彩・カンバス 45.5×53.0  
香盒 1947 油彩・カンバス 31.9×41.2 半弓会洋画展
林間馬 1947 油彩・カンバス 45.5×53.0  
本とローソク 1947 油彩・カンバス 30.9×40.0  
1948 油彩・カンバス 38.3×45.4 清光会第13回展
1948 油彩・カンバス 50.2×60.6 清光会第13回展

題名 制作年 材質 寸法(cm) 備考
能面 1948 油彩・カンバス 45.6×53.2 西部美術協会第5回展
1949 油彩・カンバス 41.1×60.8  
炭斗 1949 油彩・カンバス 32.0×41.1  
林檎 1950 油彩・カンバス 32.0×41.0 清光会第15回展
能面 1950 油彩・カンバス 49.2×60.2  
1951 油彩・カンバス 80.5×100.0  
能面と謡本 1951 油彩・カンバス 45.5×53.0  
モーター 1952 油彩・カンバス 61.2×73.0  
水より上る馬 1953 油彩・カンバス 72.0×116.2 第2回 日本国際美術展
暁明の根子嶽 1953 油彩・カンバス 60.8×72.8 国立公園絵画展
1954 油彩・カンバス 68.0×47.9  
能面 1954 油彩・カンバス 38.0×45.5  
能面 1955 油彩・カンバス 33.5×49.5  
雲仙の春・阿蘇の秋 1934〜41〜57 油彩・カンバス (各)104.5×343.0 六曲一双屏風
書籍 1959 油彩・カンバス 38.0×45.2  
痩男と中将面 1959 油彩・カンバス 37.5×45.5 毎日美術賞10年記念展
1959 油彩・カンバス 45.5×53.0  
植木鉢 1959 油彩・カンバス 37.0×44.0  
植木鉢 1959 油彩・カンバス 38.3×45.5  
菊慈童と中将面 1959 油彩・カンバス 32.0×41.3  
母仔馬 1960 油彩・カンバス 38.4×45.7 草人社美術展
1960 油彩・カンバス 38.0×45.7 なにわ会展
植木鉢 1960 油彩・カンバス 38.0×45.6  
毛糸 1960 油彩・カンバス 38.0×45.9  
能面と鼓の胴 1962 油彩・カンバス 45.5×53.2  
鼓胴と能面 1962 油彩・カンバス 37.2×44.8  
1964 油彩・板 33.3×24.2 50人の画家スケッチ展シリーズ完結記念
1964 油彩・カンバス 31.8×40.7  
達磨 1964 油彩・カンバス 45.5×53.1  
1919〜65 油彩・カンバス 60.5×80.3  
1966 油彩・カンバス 60.5×73.0  
1967 油彩・カンバス 50.3×60.4  
櫨の月 1967 油彩・カンバス 38.2×45.5  
馬市行 1967 油彩・カンバス 32.0×40.8  
月光 1968 油彩・カンバス 38.0×45.6  
白い牛 1969 油彩・カンバス 50.0×61.0  
八女の月 1969 油彩・カンバス 41.0×32.0  
幽光 1969 油彩・カンバス 31.7×41.0  
水縄山風景 1898 水彩・紙 56.5×74.5  
風景 1905 水彩・紙 32.8×50.0  
路傍 1916 木炭・紙 36.5×57.1 第4回 国民美術協会展
母子 1916 木炭・紙 35.5×47.0 第3回 二科展
山羊のいる風景 1918 水彩・紙 60.4×45.4  
ヴァンヌ風景 1923頃 水彩・紙 18.0×26.0  
自画像 パステル・紙 27.7×21.9  
自画像 鉛筆、水彩・紙 15.4×11.2  
九重山放牧 1928 水彩・紙 14.7×21.8  
林間馬 1935 水彩・紙 17.4×12.5  
松間馬 1935 水彩・紙 14.0×15.8  
仔馬 1935 水彩・紙 17.0×11.6  
水より上る馬 1935 水彩・紙 14.2×23.1  
1935 水彩・紙 14.0×22.9  
松間馬 1936 水彩・紙 14.2×18.1  
1938 水彩・紙 15.9×23.5  
母仔馬 1939 水彩・紙 14.1×23.0  
1950〜51 水彩・紙 14.1×22.3  
1964 水彩・紙 22.9×15.9  

新聞雑誌関係記事
日経/4月2日(滝 悌三)
毎日/4月6日(夕)、4月6日(夕)(田中幸人)
朝日/4月26日(夕)(東野芳明)、5月17日、18日、19日、20日、22日(夕)(吉村良夫)、6月12日(夕)(増田 洋)
読売/5月29日(夕)、9月2日(夕)(荻原明男)
京都/6月5日(河北倫明)
サンケイ/6月28日(高橋 亨)
赤旗/4月6日、7日(山口泰二)
公明新聞/5月16日
新美術新聞/3月21日(No.292)(岩崎吉一)

このページの先頭へ