モーリス・ドニ展

 モーリス・ドニ(1870〜1943)は、グランヴィルに生まれ、1888年パリに出てアカデミー・ジュリアン、エコール・デ・ボザールに学んだ。初期にはナビ派の中心的作家として、反官展、反印象主義の態度を明らかにした。それは古典主義的な完成や都会的洗練に背を向け、人間の内奥にあるものの表出を求めようとするゴーガンらの綜合主義を継承する運動であり、事物の形を整理し、色彩を明快なコントラストにおいて用いる象徴的表現を見せた。一方、彼はカトリックの信仰が篤く、新時代の宗教画・神話画の創造を目ざし、宗教的題材による壁画を諸所に描き、装飾的作風に新生面をひらいた。1908年にアカデミー・ランソンを、1919年には宗教画塾を設立して、後進の指導にもあたった。また1912年には、1890〜1910年の間に執筆した論文を集めて『理論集』を出版するなど、宗教的情操と同時に、知的な探究心の強い画家であった。

 本展は、モーリス・ドニの芸術の全貌を、絵画、素描、版画、挿絵本など計181点の作品によって紹介した。日本と日本美術に関心を示し、また日本の近代美術にも少なからず影響を与えた彼の芸術は、美術における日本とヨーロッパの関係を考察するうえでも重要なものであり、今回の日本における初めてのモーリス・ドニ展の意義もそこにあった。

 なお、本展は国立西洋美術館が昭和56年度の特別展として企画したものである。

会期
10月30日(金)〜12月13日(日)
入場者数
総数 17,850人(一日平均457人)
共催
国立西洋美術館
後援
フランス美術館総局・フランス大使館
出品目録
絵画
題名 制作年 技法 寸法(cm)
自画像 1889 油彩・カンヴァス 33.3×24.9
ヴァレ師の肖像 1889 油彩・カンヴァス 41×32.6
ゴルゴダへの道 1889 油彩・カンヴァス 41.1×32.6
カトリックの玄義 1890 油彩・カンヴァス 51×77.8
ミサ 1890 油彩・カルトン 24×19
テラスの木洩れ陽 1890 油彩・カルトン 23.3×20
孤児たち 1891 油彩・カンヴァス 19×35
十月の宵 1891 油彩・カンヴァス 38.2×61.2
ピアノの前のマルト(マレーヌ姫のメヌエット) 1891 油彩・カンヴァス 95.7×60.1
ランプの下の姉妹 1891 油彩・カンヴァス 36.5×65.1
行列(白い花を持つ少女たち) 1891 テンペラ・インク・カルトン(メゾナイトに貼付け) 30×25.1
ブルターニュの踊り 1891 油彩・カンヴァス(カルトンに貼付け) 38.8×32.8
ペロス=ギレックのレガッタ 1892 油彩・カンヴァス 42×33.5
長い肩掛をまとったブルターニュの婦人 1892 油彩・カンヴァス 35.2×28.2
黄昏の裸婦 1892 油彩・カンヴァス 57.3×69.5
アンドレ・ジッドの肖像 1892 油彩・カルトン 32×23
南ブルターニュの入江 1892 油彩・カンヴァス 29.2×39.3
天使の如き乙女たち 1892 油彩・カンヴァス 32.5×40.5
赤土(署名) 1892 油彩・カンヴァス(カルトンに貼付け) 25×15
屋根直し 1892 油彩・板 66.2×41
眠る乙女 1892 油彩・カンヴァス 38×61
樹下の行列 1892 油彩・カンヴァス 57.3×83
四月 1892 油彩・カンヴァス 38×61.3
食器棚の前のマルト−聖マルタ 1893 油彩・カンヴァス 46.3×38.2
緑の樹のある風景 1893 油彩・カンヴァス 46.3×42.8
マルトとドニの結婚 1893 油彩・カンヴァス 55.7×32.4
復活祭の朝 1893 油彩・カンヴァス 36×28.7
天使と闘うヤコブ 1893 油彩・カンヴァス 48×36
籠をもつ子供の肖像 1893 油彩・カルトン 24×16.2
董の花束のある裸婦 1894 油彩・カンヴァス 54.7×74.3
白い董をつけたマルト 1894 油彩・カンヴァス 33×41.4
御小姓風の娘 1894 油彩・カンヴァス 48×38
夕べ 1894 油彩・カンヴァス 47×55
十字架上のイエスの聖心 1894 油彩・カンヴァス 131×61
キリストの墓を訪う女たち 1894 油彩・カンヴァス 73.5×99.5
ノリ・メ・タンゲレ(ステンドグラスの構想) 1895 油彩・カンヴァス 84.3×35.7
母と子 1895 油彩・カンヴァス 81×65
雪の畑 1895 油彩・カルトン 39.4×27.8
果樹園 1895 油彩・カルトン 57×47
マルトとドニの肖像 油彩・カンヴァス 66×90
庭にて 1896 油彩・カルトン 17.7×25.5
ノエルの歩き始め 1897 油彩・カルトン 26×27
戸口に立つ子供 1897 油彩・カルトン 26×21
旗を立てた行列 1897 油彩・カルトン 40×25
ヴィンチリアータの善きサマリア人 1898 油彩・カルトン 25×64
収穫 1898 油彩・カルトン 100×75
産湯 1899 油彩・カンヴァス 44×49.5
ノエルとサクランボ 1899 油彩・カルトン 41×32
湯浴みする子供たち 1899 油彩・カンヴァス 59.2×49.2
子供の身づくろい 1899 油彩・カンヴァス 65×45
プールデュの浴女たち 1899 油彩・カンヴァス 73×100
ベルナデットと母 1900 油彩・カンヴァス 33.7×39.7
階段にて 1900 油彩・カルトン 41×25
セゼンヌ礼讃 1900 油彩・カンヴァス 180×240
ヴェランダ、マレイユ街 1901 油彩・カンヴァス 47×39
家族の肖像 1902 油彩・カンヴァス 82.2×94
仮縫 1903 油彩・カルトン 58×43
ドガとモデル 1904 油彩・カンヴァス 38×46
東方三博士の礼拝 1904 油彩・カンヴァス 115×162
屏風:鳩のいる庭 1904 油彩・カンヴァス 162×51
踊る女たち 1905 油彩・カンヴァス 147.2×78.2
ペロス=ギレックの港 1906 油彩・カルトン 22×22
セザンヌ訪問 1906 油彩・カンヴァス 51×64
董色の部屋での誕生 1906 油彩・カルトン 88×62.5
董色の部屋(董色の部屋の訪問客) 1907 油彩・カンヴァス 46×55
フィエーゾレのマドレーヌ 1907 油彩・カルトン 39×32
エロスに運ばれるプシュケ 1909 油彩・カンヴァス 32×52
砂浜 1910 油彩・カンヴァス 80×118
ヴァイオリンの稽古 1912 油彩・カルトン 74×50
楽園 1912 油彩・カルトン 50×75
前掛をつけた子供 1912 油彩・カルトン 76.5×50.5
トンケデックのテラス 1913 油彩・カルトン(板に貼付け) 75×50
ラ・クラルテの聖堂 1917 油彩・カルトン 50×37
若い母 1919 油彩・カンヴァス 160×98
行列 1919 油彩・カルトン(板に貼付け) 50×75.4
水浴 1920 油彩・カンヴァス 116×120
字を書く子供 1920 油彩・カンヴァス 37×41
エル・ケーテルの墓地 1921 油彩・カルトン(板に貼付け) 42.8×65.7
コンスタンティーヌ、アルジェリア 1921 油彩・カルトン(板に貼付け) 65.3×43
シエナの聖カテリーナ 1921 油彩・カルトン(板に貼付け) 70.3×47.5
母と子 1923 油彩・カンヴァス 75×81
「羚羊号」上のドミニク 1923 油彩・カルトン 37×25
川面に映える陽の光 1931 油彩・カルトン 60×35
フランス古典主義文化(リセ・クロード・ベルナールの装飾のための習作) 1937 油彩・カルトン 30×62
諸科学(リセ・クロード・ベルナールの装飾のための習作) 1937 油彩・カルトン 29×54

素描、水彩
題名 制作年 技法 寸法(cm)
脆く若い男 1888 パステル・鉛筆 グワッシュ・紙 15.5×9.5
梨のある静物 1888 水彩・紙 17.7×25.5
聖歌隊の子供(「カトリックの玄義」のための習作) 1889 パステル・紙 63×28
ドニの母の肖像 1889 木炭・白チョーク・紙 72.5×48
アイロンをかける女 1889 パステル・紙 25.5×13
子供の髪を結う女 1889 パステル・紙 26×9.5
聖なる会話 1890 木炭・水彩・紙 44×57
象徴主義的な接吻 1980 木炭・グワッシュ・紙 40×30
陶器に絵付けをするマルト 1891 水彩・紙 23×16
婚約の扇(マルトの扇) 1891 水彩・紙 高さ30
リラの花と若い女(マルトの扇) 1892 水彩・絹 高さ33
ブルターニュの子供のいる養鶏場 1892 水彩・紙 27.9×49.7
娘たち(壁紙のための意匠) 1893 鉛筆・グワッシュ・紙(カルトンに貼付け) 80×51
黄色い船(壁紙のための意匠) 1893 グワッシュ・紙(カルトンに貼付け) 80×51
雌牛のいる風景 1894 水彩・紙 28×48
船(ステンドグラスのための構想) 1894 グワッシュ・紙(カンヴァスで裏打ち) 132×81
小川のほとりの女たち(ステンドグラスのための構想) 1894 グワッシュ・紙 134×73
入浴する娘 1895 木炭・パステル・紙 51×35
自画像 1896 木炭・鉛筆・白チョークによるハイライト・紙 26×22
後向きの裸婦 1897 木炭・パステルによるハイライト 66×48
マルトの肖像 1898 木炭・紙 54×36
神聖な森(「羽根つき」のための習作) 1899 木炭・水彩・紙(カンヴァスで裏打ち) 124×295
アレゴリー 1899 鉛筆・パステル・紙 37×47
天使と香炉を持つ子供(ヴェジネのコレージュ・サント・クロワの礼拝堂壁画のための習作) 1899 赤チョーク・紙(カンヴァスで裏打ち) 185×150
天使と花びらを撒く子供(ヴェジネのコレージュ・サント・クロワの礼拝堂壁画のための習作) 1899 赤チョーク・紙(カンヴァスで裏打ち) 177×150
ヴュイヤールの肖像 1899 鉛筆・紙 35×26
ベルナデッド(生後五カ月) 1899 赤チョーク・紙 82×57
ベルナデッド(生後七カ月) 1899 水彩・紙 25×19
アンドレ・メルリオ(「セザンヌは礼讃」のための習作) 1900 褐色チョーク・透写紙 32×22
ポール・ランソン(「セザンヌ礼讃」のための習作) 1900 木炭・紙 31×24
アンブロワーズ・ヴォラール(「セザンヌ礼讃」のための習作) 1900 鉛筆・赤チョーク・透写紙 26×21
ドニとポール・セリュジエ(「セザンヌ礼讃」のための習作) 1900 鉛筆・褐色チョーク・木炭・透写紙 31×38
ピエール・ボナールとマルト・ドニ(「セザンヌ礼讃」のための習作) 1900 木炭・透写紙 29×42
エドゥアール・ヴュイヤール(「セザンヌ礼讃」のための習作) 1900 木炭・透写紙 32×39
ケル=グザヴィエ・ルーセル(「セザンヌ礼讃」のための習作) 1900 木炭・墨・黒チョーク・透写紙 30×25
オディロン・ルドン(「セザンヌ礼讃」のための習作) 1900 木炭・紙 39×33
自画像(「幼な子を我がもとに来させよ」のための習作) 1900 赤チョーク・紙 37×25
ベルナデットと母 1901 鉛筆・黒チョーク パステル・紙 37×41
十字架降下 1901 テンペラ・紙(カンヴァス裏打ち) 130×150
預言者イザヤ(ドガの肖像) 1901 木炭・赤チョーク・紙 66×54
マイヨールの肖像 1902 鉛筆・透写紙 22×15
裸の子供 1902 木炭・白チョークのハイライト・紙 32×49
聖トマス(セリュジエの肖像) 1903 赤チョーク・鉛筆 白チョークのハイライト・紙 70×65
聖マタイ(ルドンの肖像) 1903 木炭・透写紙 66×79
墓に運ばれるキリスト 1903 テンペラ・紙(カンヴァスで裏打ち) 115×133
二人の女優 1907 木炭・パステル・紙 32×25
祭服の女(「フィエーゾレの受胎告知」のための習作) 1907 木炭・パステル・紙 48×62
三つの顔(「フィレンツェの宵」のための習作) 1910 コンテ・油彩・紙 45×64.5
音楽劇(シャンゼリゼ劇場天井画のための習作) 1912 油彩・木炭・紙(カンヴァスで裏打ち) 51×150
第九交響曲(シャンゼリゼ劇場天井画のための習作) 1912 木炭・パステル・紙 75×51.5
後向きの裸婦(シャンゼリゼ劇場天井画のための習作) 1912 木炭・パステル・紙 5.9×50
裸の女たち(シャンゼリゼ劇場天井画のための習作) 1912 木炭・パステル・紙 84.5×49
ギリシャの立像 1912 木炭・パステル・紙 75.5×50
女性像習作(「エロア」のための習作) 1917 木炭・パステル・紙 50.5×81.2

題名 制作年 技法 寸法(cm)
女性像習作(「エロア」のための習作) 1917 木炭・パステル・紙 50.5×84
ある日本人の肖像 1920 木炭・パステル・紙 34×26
聖ジャンヌ・ド・シャンタル(サン・ボール聖堂ステンドグラスのための習作) 1923 木炭・パステル・紙 65×41
婦人の肖像 木炭・パステル・紙 58×37.5
グリマルディの泉 1920 鉛筆・パステル・紙 13×21

版画
題名 制作年 技法 寸法(cm)
ブルターニュの洗濯女 1890 亜鉛板リトグラフ 34.5×55.8
ブェルレーヌ「叡智」のための挿絵 1890 a)木版 9.9×4
b)木版 5.8×3.9
c)木版 8.5×3
ヴェルレーヌ「叡智」のための挿絵 1890 a)木版 4.4×5.6
b)木版 5×10.2
ヴェルレーヌ「叡智」のための挿絵 1890 a)木版 7.3×6.1
b)木版 8×6.9
選ばれし乙女(楽譜表紙) 1892 リトグラフ 2.5×11.3
海から来た女(プログラム表紙) 1892 リトグラフ 17×10
ばら色の船の壁紙 1893 リトグラフ 9.5×6.5
ペレアスとメリザンド(プログラム表紙) 1893 リトグラフ 15×8.7
慈しみ 1893 リトグラフ 29.8×25
叡智(楽譜表紙) 1893 リトグラフ 24×18
御訪問 1894 リトグラフ 16.2×12.8
あらわれ(楽譜表紙) 1894 リトグラフ 28.7×19
誕生通知状 1895 リトグラフ 8.7×14
「ウーヴル座」のプログラム 1895 リトグラフ 24.8×32.6
水差しを持つ若い女 1895 リトグラフ 32×21.8
化粧する娘 1895 リトグラフ 52.7×32.5
エマオの巡礼者 1895 リトグラフ 30.6×45.5
ノエル・ドニの誕生通知状 1896 リトグラフ 13.5×7.7
甘き幻影(楽譜表紙) 1896 リトグラフ 34×26.5
湖畔の浴女 1896 リトグラフ 38×28.2
泉に映る影 1897 リトグラフ 39×25
愛:物腰は寛ぎながら、慎み深く 1899 リトグラフ 39.5×25.7
愛:朝の花束、涙 1899 リトグラフ 39.8×28.5
愛:それは宗教的神秘であった 1899 リトグラフ 42×29
愛:騎士は十字軍で死なず 1899 リトグラフ 40×27.7
愛:彼女は夢よりも美しかった 1899 リトグラフ 41.5×29.3
愛:淡い銀色のソファーで 1899 リトグラフ 42.5×28.5
幼い兄と妹の演奏会(楽譜表紙) 1903 リトグラフ 34×26.5
初聖体拝領 1913 リトグラフ 17.1×8.8
フランシス・トンプソン「詩集」のための挿絵 1939 リトグラフ 29.1×22.8

題名 制作年 技法 寸法(cm)
アンドレ・ジッド「ユリアンの旅」 1893年出版 リトグラフ
ダンテ・アリギエリ「新生」 1907年出版 アンリ・コッシャン訳 ベルトラン兄弟による木版
ポール・ヴェルーヌ「叡智」 1899-90 1911年出版 ジャック・ベルトランによる木版
アルフレッド・ド・ヴィニー「エロア」 1917年出版 ジャック・ベルトランによる木版
モーリス・バレス「ヴェネツィアの死」 1930年出版 ベルトラン兄弟による木版
フランシス・ジャム「我が娘ベルナデッド」 1931年出版 ジャック・ベルトランによる木版
アンドレ・シュアレス「黄昏の海」 1933年出版 ベルトラン兄弟による木版

新聞雑誌関係記事
日経/9月22日(滝 悌三)
毎日/10月30日
朝日/11月3日、12月2日(夕)(池田 弘)
京都/11月4日
サンケイ/11月13日、11月16日
読売/11月5日(夕)(本江邦夫)
女性とくらし 11月1日
三彩 No.409、410(稲賀繁美)
文化庁月報 No.157
美術手帳 No.487(八重樫春樹)No.488

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