没後50年 岸田劉生展

 岸田劉生(1891−1929)は、その38歳の生涯を通じて最も果敢に自己の芸術を追求し、独自の画境を切り拓いた近代日本のすぐれた画家の1人である。岸田劉生の回顧展は彼の没後しばしば開催されてきたが、本年が彼の没後ちょうど50年にあたるのを機に質・量ともに充実した大規模な展覧会を企画し、改めて彼の芸術の真価を問おうというのが本展の趣旨であった。

 岸田劉生は、17歳で葵橋洋画研究所に入り、黒田清輝の下で外光派を学び、2年後の明治43年の第4回文展に入選するなど、はやくからその天分を示した。その後間もなくゴッホやセザンヌなどの後期印象派の影響を受け、また白樺派の人道主義の理想に共鳴し、大正元年には激しい自己表出を望む革新的青年画家たちとフュウザン会を結成し、新傾向の旗主として注目された。しかし、この新しい表現様式に満足出来なくなった岸田劉生は、時流を離れて写実の道に入り、大正4年に同志と草土社を興し、デューラーやファン・アイクなどの北欧ルネサンスの絵画様式を手がかりに精密描写による写実を追求した。画題も風景・人物・静物からさらに愛嬢麗子の連作へと拡げられていく過程で、彼の写実主義は「内なる美」の表現へと深められたが、大正期後半になると宋・元画や初期肉筆浮世絵などの東洋の美にも注目し、これを自己の芸術に生かす新しい境地を目ざした。

 こうした岸田劉生の特異な画業の軌跡は、日本の美術における近代化の問題、すなわち西洋近代絵画の展開を追うに急であった日本の近代絵画の根本的な諸問題を、改めて浮かび上がらせるものであった。京都は岸田劉生がその晩年の一時期を過した故地でもあり、多くの観覧者の中には遺作に岸田劉生を偲ぶ人々も少くなかった。

会期
6月5日(8)−7月15(日)
入場者数
総数 124,928人(1日平均3,470人)
共催
東京国立近代美術館 朝日新聞社
出品目録
題名 制作年 材質 寸法(cm)
草花 1909 油彩・板 22.5×31.5
斜陽 1909 油彩・カンヴァス 44.5×32.5
1909 33.5×45.7
築地居留地 c.1911 32.7×44.7
街道(銀座風景) 33.5×45.5
夕陽 1912 33×41
自画像 33×24
外套着たる自画像 39.7×30.5
婦人服 45.5×33.3
築地居留地風景 23×32
日向 32×41
築地居留地風景 31.7×40.3
築地居留地風景 c.1912 油彩・カンヴァス 33.2×45.5
築地明石町 31.5×40.5
自画像 1913 40×31
Sの肖像(真田氏肖像) 45×36
斎藤与里氏像 32×23.5
斎藤与里氏像 53×40.8
B.L.の肖像(バーナード・リーチ像) 59×44
千家元麿之像 39.7×30.5
千家元麿像 39.5×25.8
トルソー(裸婦) 44×59
木村荘八氏の像 油彩・板 31×23
裸体(裸婦) 油彩・カンヴァス 61×45.5
自画像 1913 油彩・板 54.3×43.4
自画像 油彩・カンヴァス 44.5×36.9
自画像 油彩・板 41.2×30.2
自画像 油彩・カンヴァス 44.5×36.5
自画像 41.2×31.9
初冬の田畑 44×51
自画像 c.1913 40×31
自画像 1914 51×43.5
佐々木附近 38×45.5
自画像 44.5×38.5
義姉之肖像(婦人像) 45×37.5
黒き帽子の自画像 油彩・板 52×40
早春の畑 油彩・カンヴァス 37×44.5
武者小路実篤像 38.5×36.5
自画像 45.0×37.3
芝川照吉氏像 59.5×44.2
自画像 44×36.8
自画像 45.5×38
南瓜を持てる女 80×57.5
画家の妻 58×53.8
水遊びする子供たち インク、紙 23.1×15.7
画家の妻 油彩・カンヴァス 53×45.5
蓁の像 鉛筆・紙 26.7×17.3
画家の妻 油彩・カンヴァス 61×50
エターナル・アイドルの画稿 c.1914 鉛筆、水彩・紙 22.8×13.7
エターナル・アイドル 1914 油彩・板 41.5×32.5
人類の意志(仮題)の画稿 c.1914 インク・紙 20×19
人類の意志(仮題) 油彩・カンヴァス 78.5×60.5
画家の妻 1915 58.5×40.5

題名 制作年 材質 寸法(cm)
高須光治君之肖像 1915 油彩・カンヴァス 45.5×38
椿君の肖像 46.5×37
上水(上水の春日) 37×45
人差し指たてたる自画像 45.5×38
代々木附近(代々木附近の赤土風景) 36×44
道路と土手と屏(切通しの写生) 56×53
男の像 木炭・紙 45.5×31
高須光治氏像(未完成) 油彩・板 45.5×37.8
高須光治君之肖像 45.5×37.7
冬の崖上の道 油彩・カンヴァス 41×41
冬枯れの道路(原宿附近写生・日の当った赤土と草) 1916 60.5×80.2
代々木山谷の路傍 油彩・ボード 22.5×31.5
早春 油彩・板 31.7×40.4
鉛筆・紙 19.5×19
門と草と道 油彩・カンヴァス 38×45
古屋君の肖像(草持てる男の肖像) 45.5×33.5
油彩・板 23.5×18
林檎三個 1917 油彩・カンヴァス 31.8×41
静物(ビンと茶碗と林檎一個) 32.7×32.7
静物(湯呑と茶碗と林檎三つ) 37×44.5
静物(青布と林檎四個) 44×51.5
二階の窓よりの風景 46×55
晩秋の霽日 37.5×45.3
静物(赤き林檎二個とビンと茶碗と湯呑) 32×44.5

題名 制作年 材質 寸法(cm)
義母之肖像 1917 鉛筆・紙 24×18
道に生えたる枯草 油彩・カンヴァス 45.5×37.9
川幡正光氏之肖像 1918 33.5×33.5
画家自画像 木炭、水彩・紙 39.5×30.5
静物(白き花瓶と台皿と林檎四個) 油彩・カンヴァス 44.5×53
雲雀鳴日 44.5×52
晩春の草道 43.5×36
静物(手を描き入れし静物) 50×61
五月の砂道 31.6×41
聖母像 木炭・カンヴァス 53×41
長与夫人像 コンテ・紙 28×23
麗子之像 木炭・コンテ・紙 30.4×23.2
麗子肖像(麗子五歳之像) 油彩・カンヴァス 45.3×38
木炭・チョーク・紙 33.5×24.5
川幡正光氏の像 木炭・コンテ・紙  
長十郎像 コンテ・紙 40.8×29
芝川照吉氏之像 28.7×22.8
村娘 1919 インク・紙 23×17
村娘之図 水彩・テンペラ・紙 34.3×27.8
麗子六歳之像 木炭・水彩・紙 37.7×28
村娘之図 油彩・カンヴァス 50.5×38.3
麗子六歳之像(毛糸の肩掛したる麗子) 水彩・紙 41.4×32
麗子像 木炭・水彩・紙 37×27
村娘之図 コンテ・水彩・紙 38×28.5
椿花図 水彩・紙 16×24.8
村娘之図 木炭・水彩・紙 34.4×25.6
村娘之図 46×35
麗子像 木炭・クレヨン・紙 37×27
村娘之図 1919 木炭・パステル・水彩・紙 40.5×31.8
村娘之図 クレヨン・紙 38×30
村娘之図 木炭・パステル・水彩・紙 37.7×29.8
内藤●土夫人の像 鉛筆・紙 37.5×30.5
京都風景 油彩・板 22.5×31.5
芝川照吉氏之像 木炭・チョーク・紙 39×28
麗子坐像(絞りの着物) 油彩・カンヴァス 72.7×60.6
照子素画 木炭・水彩・紙  
麗子像 パステル・水彩・紙 48.2×34
麗子坐像 1920 水彩・紙 43.8×34
鵠沼風景 [〃] 25.2×33
人形持つ麗子坐像 34×47
麗子坐像 33×45
麗子微笑 木炭・水彩・紙 50.8×34.2
麗子立像 水彩・紙 49.5×33.5
麗子之像 木炭・水彩・紙 37.6×27.6
麗子之像 水彩・紙 39.5×28.5
村娘座像 50.5×34
村娘図 37.7×27.5
麦二三寸 油彩・カンヴァス 37.5×45
静物(赤林檎三個、茶碗、ブリキ罐、匙) 36.5×44
早春之一日 33.2×45.3
初夏の麦畑と石垣 37.5×45
六月風景 30×39.5
村嬢於松之像 45×32
画家三十歳之自像 鉛筆・水彩・紙 33×24
村娘図 水彩・紙 43.8×34
肩掛麗子 木炭・水彩・紙 47×31.8
毛糸肩掛せる麗子肖像 油彩・カンヴァス 45.5×38
村嬢於松之図 水彩・紙 39×29

題名 制作年 材質 寸法(cm)
村嬢於松立像 1921 水彩・紙 50.5×34.5
村娘図 鉛筆・水彩・紙 33×24.5
静物(リーチの茶碗と果物) 油彩・カンヴァス 48.5×59.5
麗子微笑之立像 水彩・紙 50.5×34
麗子八歳之像 油彩・カンヴァス 44.5×37
片瀬江之島灯籠流し施餓鬼之図 31×40.5
画家自画像 44.5×32.2
麗子洋装之像 コンテ・水彩・紙 49.5×33
入沢達吉氏肖像 油彩・カンヴァス 44.5×36.5
信行之像 40.7×31.5
窓外夏景 38×45.5
近藤次繁氏肖像 45.5×38
童児肖像 水彩・紙 34×25.5
麗子洋装之像 クレヨン・水彩・紙 47×32
支那服着たる妹照子之像 油彩・カンヴァス 53×45.5
童女像(麗子花持てる) 52.5×44.8
麗子洋装之図 水彩・紙 51×34
麗子像 コンテ・水彩・紙 44.8×34.4
二階窓外秋景(鵠沼風景) 水彩・紙 25.5×34
麗子微笑(青果持テル) 油彩・カンヴァス 45.5×38
麗子坐像 水彩・紙 51×34
児童遊戯(麗子曼茶羅) [〃] 紙本彩色・軸 134.5×32.7
麗子住吉詣之立像 1922 油彩・カンヴァス 80.3×60.5
河野通勢画兄之像 コンテ・紙 45.3×31.2

題名 制作年 材質 寸法(cm)
二人麗子図(童女飾髪図) 1922 油彩・カンヴァス 100×80.3
麗子 テンペラ・カンヴァス 39.3×30.5
麗子像 水彩・紙 33×25
窓外早春 油彩・カンヴァス 45.5×53
椿花図 45.5×37
村娘図 鉛筆・パステル・紙 40.5×31.5
野童女 油彩・カンヴァス 64×52
笑童女洋装半身 水彩・紙 37.7×28
新富座六月狂言寺小屋図 油彩・ボード 37×44.5
寺小屋舞台図 [〃] 油彩・板 29×41
劇場内写生 [〃] 14×21.5
麗子微笑 32×23
夏の路 油彩・カンヴァス 44×37
芝居図(新富座髪結新三) 油彩・板 15.2×22.8
立秋之霽日(八月風景) 油彩・カンヴァス 39.5×52
小林欽夫之像 鉛筆・紙 35.5×30
麗子之像 (1925補筆) 油彩・カンヴァス 44.5×37
鯰坊主 1922 油彩・板 41×31.8
秋日閑 絹本彩色・軸 64.9×36
早春霽日 1923 油彩・カンヴァス 44×52
竹籠含春 36.5×44
童女図(麗子立像) 53.2×45.5
花籠 32×33.7
新富座幕合之写生 (1924補筆) 31×40.5
静物(びわ) 1923 31.5×32.5
童女像 33.5×31.8
酸漿図 [〃] 紙本彩色・額 33.5×51.5
籠中競甘 紙本彩色・軸 125.1×32.8
白狗図 絹本彩色・額 33.5×42.2
童女捧寿 c.1923 紙本彩色・額 26×23.5
童女舞姿 1924 油彩・カンヴァス 91×53
籠椿 36.5×43.5
牡丹花籠図 53×45.5
冬日小閑 油彩・板 23.5×33
竹林七童 [〃] 紙本彩色・軸 45×31
苺之絵 [〃] 絹本彩色・額 20×25
茄子図 [〃] 紙本彩色・軸 35.9×26.8
四季の花果図(四幅対) [〃] 127×31.5ほか
蕪図 1925 油彩・カンヴァス 31×39
大畑為三郎氏之像 木炭・紙 42.5×31
静物 油彩・板 22.5×32
少年肖像(村上巌氏十七歳) 油彩・カンヴァス 41×33
近藤医学博士之像 44.5×36.5
冬瓜葡萄図 36.5×44.5
梅花図 紙本彩色・軸 43×32
筍図 33×44
二十日大根 67×22
支那皿に果物 絹本彩色・額 45.5×51.7
菊慈童 紙本彩色・軸 68.5×22
冬瓜茄子図 1926 油彩・カンヴァス 36.5×44.5
舞伎図(舞伎里代之像) 油彩・板 27×21.7
蕪図 油彩・カンヴァス 30.5×39.5
京都祇園舞伎之像 c.1926 鉛筆・紙 44.5×33
厨房小寒 1926 紙本彩色・軸 46.4×22.2
春閑麗日 c.1926 139×34
冬瓜茄子図 1926 絹本彩色・軸 32.5×43.5
竹林吹笛 紙本彩色・額 64.1×21.6
歳寒三友図 c.1926 65.5×21.8

題名 制作年 材質 寸法(cm)
冬瓜図 1927 油彩・カンヴァス 37.5×45
田村直臣七十歳記念之像 40.6×31.5
静物 33.5×53
調脂弄粉 紙本彩色・軸 32.5×43
冬近閑々 c.1927 紙本彩色・額 49.5×29.8
岡崎義郎氏之肖像 1928 油彩・カンヴァス 45.5×33.5
自画像 鉛筆・水彩・紙 47.5×31.5
南瓜、冬瓜、茄子図 油彩・カンヴァス 27×41
五福祥集 絹本彩色・二曲半双屏風 169.8×174.8
寒山拾得 紙本彩色・二曲半双屏風 170×175
塘芽庵主人閑居之図 c.1928 紙本彩色・額 24.3×41.8
菊花図 紙本彩色・軸 73.8×37.7
卓上花果 1929 油彩・カンヴァス 45.5×37.9
麗子十六歳之像 45×23
静物(赤絵水指、栗、柿) 36.7×44.2
大連星ケ浦風景 60×74
路傍秋晴 59.5×71.5
満鉄総裁邸の庭 60.5×73
徳山風景 38.3×45.7
38×46

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