牛島憲之の芸術 −その静温な風景詩−

 風景画に独自の芸術を築き、今日いよいよその画境を深めつつある牛島憲之は、作家生活に入ってからちょうど50年目を迎えた。今回の展覧会は、これを機会に牛島芸術生成のあとを回顧しようとするものである。

 今回展示された初期から現在までの100余点の作品を通覧すると、彼の作風の変化は実にゆるやかで、その基底においてはほとんど同質のものが一貫している。牛島憲之が、時代の動向と直接には関わらず、自己の内奥の世界を深めていくタイプの芸術家であるからである。彼の描きつづけてきたのは、灯台・水門・浜辺、また畑や並木路・工場・タンク・煙突、さらには、空や雲や月という平凡な風景であるが、ひとたび彼の手にかかると、これらの風景は実に新鮮な表情を付与されてくる。しかも、その作品には心静かな牧歌的な温かさが漂って、美しい一篇の風景詩にまで昇華されている。ここにこそ、余人にみられない牛島芸術の真髄があるといえる。

 牛島憲之は、明治33年(1900)に熊本市に生まれ、東京美術学校に学んだ。同校を卒業した昭和2年(1927)の第8回帝展に初入選して以来、帝展・槐樹社展・東光会展等にも出品したが、11年には同志と主線美術協会を創立した。14年に同会絵画部が解散した後は、創元会に参加し会員となるが、文展にも出品、戦後は第2回日展で特選となった。24年には創元会を退会した同志と立軌会を結成して、現在にいたっている。このほか、日本国際美術展・現代日本美術展・国際具象派美術展・国際形象展等にも作品を発表している。

 本展は、ユニークな牛島芸術を味わうよき機会となるとともに、ひろくわが国の具象絵画の今後の可能性を考えるよすがとして静かな反響を呼んだ。

 なお、本展は、当館で終了後、神奈川県立近代美術館および群馬県立近代美術館において、ひきつづき開催された。

会期
3月15日(水)〜4月9日(日)
入場者数
総数9,745人(1日平均423人)
共催
日本経済新聞社
出品目録
題名 制作年 寸法(cm) 材質
自画像 1925 61.0×45.5 油彩・カンヴァス
芝居(赤坂並木之段) 1927 91.0×65.2
春爛漫 1929 117.0×117.0
パレットを持つ自画像 1932 91.0×73.0
貝焼場の風景 1933 89.5×145.5
秋川 1934 89.5×145.5
貝焼場 1935 130.3×193.9
90.0×145.5
山の駅 65.2×90.9
赤坂見附 1940 60.5×121.5
自画像 1941 65.0×30.3
91.0×65.2
春堤 1942 117.0×117.0
立秋 1942 91.3×117.0 油彩・カンヴァス
自画像 65.0×30.5
60.5×121.5
白日 1943 42.5×127.0
波止場 121.5×61.0
65.0×91.0
野川 91.0×116.7
梨の道 1944 45.5×60.6
車引 1946 15.0×45.5
春林 91.0×65.2
残夏 60.5×121.5
炎昼 121.0×60.5
1947 90.7×117.0
91.0×65.2
樹春 121.0×60.5
遅日 1948 49.0×84.4
しろばえ 65.5×91.0
1949 42.5×127.5
127.0×42.5
運河の交番 1950 65.2×91.0
晴日 65.2×91.0
五月の水門 72.5×91.0
水門 1951 65.5×91.0
煙突 91.5×73.0
江東風景 53.0×72.7
水上消防署 65.2×91.0
麦を刈る 65.5×91.0
牧場 1952 50.3×72.7
水辺(水門) 72.7×90.9
永代橋 30.5×63.3
早春 1952 90.9×60.6 油彩・カンヴァス
花曇り 1953 97.0×145.0
90.9×72.7
夏祭り 1954 31.0×9.5
樽のある街 60.5×121.0
橋の風景 60.8×91.2
61.0×91.0
晩春 64.5×90.5
タンクの風景 1955 60.5×121.5
タンクの道 60.6×90.9
毛剃 15.0×45.5
白い倉庫 60.6×90.9
春温 1956 60.0×120.0
59.5×120.5
まるいタンク 1957 72.7×116.7
冬日 72.5×91.0
麦の丘 1958 61.0×90.8
寒天倉 80.5×116.5
はな 90.9×60.6
油樽 90.9×116.7
タンクと煙突 1959 80.5×116.5
運河 72.7×116.7
切られた岩 112.0×145.5
分譲地 1960 116.7×80.3 〃 
風景 116.5×91.0
朽ちる船 90.0×145.5
並木路 72.7×90.9
1961 97.3×145.3
白い船 65.2×90.9
積わら 1962 72.8×91.0

題名 制作年 寸法(cm) 材質
タンクと船 1962 60.7×120.8 油彩・カンヴァス
埋れる船 72.5×116.5
灯台のある島 1963 61.1×122.0
灯台(日御碕) 1964 116.5×91.0
雲のある日 116.7×72.7
タンクの風景 1955 116.7×72.7
水門 65.0×90.5
勝閧橋 30.5×63.5
牧舎 1966 73.0×116.6
60.5×121.5
1967 80.0×120.0
灯台 1968 60.6×90.9
白い工場の風景 72.7×116.7
白い船 73.2×116.7
温む春 1969 60.0×120.0
91.0×60.6
漁港 1970 61.0×122.0
灯台 73.0×91.0
水郷 1971 72.8×91.0
水辺 1972 53.0×72.7
函舘 60.6×90.9
白い昼 1973 72.7×60.6
郊外 42.5×72.7
白い昼の風景 1974 91.0×65.2
晩春永代橋 53.0×90.5
並木路 1975 60.6×91.0
夕凪 53.0×91.0
夕月 53.0×72.7
残照 53.0×91.0
1976 45.5×91.0
91.0×60.6
橋の風景 91.0×65.2
1977 60.6×91.0
春潮 45.5×91.0
穂麦の頃 60.6×91.0
1945 10.5×32.0
瓦焼 1946 木版手刷
自画像 1947
1948 木版
木樵 1949 37.0×12.0
切通し 1950 16.0×20.0
麦の丘 1952 23.0×54.0 色鉛筆
漁港 1954 24.0×53.0
風景 23.0×32.0
1955 28.0×22.0
切られた岩 1959 38.0×54.0
挽く 38.0×53.0
1962 34.0×52.0
桃園 1963 19.0×30.0
大師橋 1965 29.0×24.0
1968 26.0×37.0
春温 30.0×26.0
水辺 1969
扇子絵 1971 水彩
プログラム表紙絵 26.0×37.0
高秋 1972 24.0×34.0 色鉛筆
26.0×30.0
昼の月 1975 リトグラフ
永代橋 26.0×39.0 色鉛筆
すみだ川 1976 リトグラフ
並木路 27.0×41.0 コンテ

新聞雑誌関係記事
日経/3月15日 3月20日(滝 悌三)
サンケイ/3月17日(友沢裕子)
朝日(夕)/3月18日(池田 弘)
京都/3月25日(藤 慶之)
三彩/No.368(1977年3月号)特集(牛島憲之、須田 寿)
月刊ビジョン/VOL.8 No.3(1978年5月号)特集(島田康寛、須田 寿)

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