金鈴社の画家たち

 金鈴社は、1917年から22年にわたって七回の展覧会をひらいた、当時の中堅日本画家による注目すべきグループで、美術雑誌『中央美術』の経営者であった田口掬汀が幹事となり、文展作家として声価の高かった結城素明、鏑木清方、平福百穂、松岡映丘に、自由な在野作家ともいうべき吉川霊華が参加して成立したものであった。金鈴社は、決して反文展の立場に立つのではなく、個人の自由な芸術の発表の場をもとうとする、良識派の結社であった。

 大和絵から入って深大な古典的素養に立ち、高雅清冽な文人風を熟させた霊華、写生風を開拓して新しい道をつけた素明、リアリズムと文人的感懐の上に鋭い新画体を成す百穂、浮世絵から遡流して粋なすがたの文人画に立至った清方、いわゆる新興大和絵に一世を風靡した映丘−−これらの人々の多彩で意欲的な制作は、大正デモクラシー時代のもっとも良き美術的成果であり、日本の美術界に及ぼした影響はすがすがしい。

 今日、金鈴社展に出品された作品の多くは失われているが、同時代およびその前後の時代の作品をあわせて展示することにより、彼らの活躍のあとをたどり、金鈴社の歴史的意義を再確認するよすがとした。

 金鈴社そのものに照明をあてた展覧会はこれまでになく、美術界ばかりでなく各方面からの注目も受けた。

会期
5月24日(火)〜6月26日(日)
入場者数
総数7,513人(1日平均250人)
出品目録
鏑木清方
題名 制作年 材質・形状 寸法(cm) 備考
一葉女史の墓 1902 絹本彩色・軸装 128.5×70.8 第5回烏合会展
嫁ぐ人 1907 183.3×116.0 東京勧業博覧会
花吹雪・落葉時雨 1908 絹本彩色・軸装(双幅) 155.8×70.4 国画玉成会展
墨田河舟遊 1914 絹本彩色・六曲屏風一双 各168.2×362.2 第8回文展
いでゆの夕 1917 絹本彩色・軸装 35.0×91.3 第2回金鈴社展
早春 1918 絹本彩色・二曲屏風半双 169.0×184.7 第3回金鈴社展
ためさるる日 絹本彩色・軸装(双幅のうち一幅) 182.4×77.2 第12回文展
刺青の女 1919 絹本彩色・軸装 127.0×50.5 第4回郷土会展
水汲 1921 167.4×98.4
衿おしろい 1924 絹本彩色・額装 47.7×40.6
朝涼 1925 217.6×83.8 第6回帝展
註文帳 1927 紙本墨画彩色・台紙張13点 各24.9×33.8 第12回郷土会展
舞子 1930 紙本彩色・軸装 39.8×49.9 聖徳太子奉讃展
三遊亭円朝像 絹本彩色・額装 138.9×76.2 第11回帝展
伽羅 1936 絹本彩色・軸装 70.5×91.0 第7回七絃会展
一葉 1940 143.0×79.3 紀元2600年奉祝展
築地明石町(下絵) 1927 紙本淡彩・軸装 182.3×74.5

吉川霊華
題名 制作年 材質・形状 寸法(cm) 備考
美人弾琴 1904 絹本彩色・軸装 109.0×41.8
太上老君 1917 絹本墨画・軸装 166.8×75.7
1917頃 30.8×91.5
摩利支天 1918 紙本淡彩・軸装 135.8×47.3
浄名居士 1919 絹本彩色・軸装 137.3×51.4
赫耶姫 1920 175.5×72.0 第5回金鈴社展
伝教大師像 1921 168.7×87.0
白衣大師 1922 137.8×50.9
羽衣翔翻 1923 141.5×51.5
維摩経 1924 41.2×56.3
苗龍子 1924頃 127.5×41.1
吉祥天女 1924 紺絹金泥・軸装 130.3×40.9
伊勢物語 紙本墨画淡彩・軸装 32.7×46.3
吉祥樹下 1925 紙本墨画淡彩・軸装(双幅) 40.8×57.7
太平楽 紙本墨画淡彩・軸装 44.7×58.3
南極寿星 紺絹墨画淡彩・軸装 140.7×42.3
歌聖 絹本墨画淡彩・軸装 143.5×46.9
離騒 1926 紙本墨画淡彩・軸装(双幅) 各93.5×136.0 第7回帝展
近松翁像 紙本墨画淡彩・軸装 38.5×51.2
人麿像 45.4×62.0
新粧 38.0×52.2
繍孔雀 1927 絹本彩色・軸装 141.3×51.0
納曽利・観自在菩薩・羅陵王 紙本墨画彩色・軸装(三幅対) 各135.4×38.4
ちりちらす歌意 紙本墨画淡彩・軸装 132.5×30.4
謌神 45.3×62.1
清香妙音 50.2×70.4
由布仙境 紙本墨画・軸装 52.8×67.8
山水 52.3×87.3
舞姫 1928 紙本墨画淡彩・軸装 38.9×52.0
卯の花くだし 44.0×59.5
伊勢物語 1928頃 131.1×35.0

平福百穂
題名 制作年 材質・形状 寸法(cm) 備考
田舎の嫁入 1899 絹本彩色・軸装 111.0×65.6 東京美術学校卒業制作
アイヌ 1909 紙本彩色・額装 149.8×72.5 第3回文展
七面鳥 1914 紙本墨画淡彩・六曲屏風一双 各166.0×358.2 第8回文展
朝露 1915 絹本彩色・六曲屏風一双 各168.0×363.5 第9回文展
群鴉 1917 紙本金地墨画・二曲屏風一双 各172.1×170.0 第1回金鈴社展
高麗献馬 絹本彩色・軸装(双幅) 右126.2×42.4左125.6×42.4
秋草図 絹本彩色・六曲屏風一双 各125.2×280.3
双松 紙本墨画淡彩・軸装 184.0×63.0
相模の海・日本武尊・白鳥の陵 1918 紙本彩色・軸装(三幅対) 155.3×40.3 155.4×47.1 155.3×40.3 第3回金鈴社展
松林帰牧 1919 紙本彩色・軸装 178.2×75.0 第4回金鈴社展
法然上人 1922 106.7×52.3 第7回金鈴社展
竹林幽棲 1923 紙本墨画・軸装 60.2×71.4
荒磯 1926 紙本彩色・二曲屏風一双 各150.8×141.8 第7回帝展
湖上烟靄 紙本墨画淡彩・軸装 39.6×49.8
湖上新秋 1927 52.2×70.4
堅田の一休 1929 86.3×83.7 第10回帝展
刈草 1931 紙本彩色・軸装 61.8×99.0 第12回帝展
小松山 1932 157.8×74.7 第3回七絃会展
一本松 絹本彩色・軸装 148.7×50.7

松岡映丘
題名 制作年 材質・形状 寸法(cm) 備考
紅葉の秋 1913 絹本彩色・額装 53.8×67.3
春光春衣 1916 絹本彩色・軸装 160.0×70.3 第1回金鈴社展
春光 124.8×40.8
道成寺 1917 絹本彩色・六曲屏風一双 各172.1×381.0 第11回文展
山科の宿 1918 絹本彩色・巻子 62.5×1,268.0 第12回文展
稚児観音 1919 絹本彩色・軸装 160.9×55.9
高雄灌頂 1921 56.5×87.6
池田の宿 213.8×98.8 第3回帝展
蓮池 1922 140.2×50.6
伊香保の沼 1925 201.8×131.5 第6回帝展
千草の丘 1926 219.0×98.4 第7回帝展
みぐしあげ 40.5×71.9
小野の雪 40.3×72.0
真鶴 昭和初期 絹本彩色・額装 23.0×32.5
海路 絹本彩色・軸装 127.3×30.8
芦刈 1928 紙本彩色・軸装 30.0×87.0
さつきまつ濱村 絹本彩色・六曲屏風半双 101.0×191.0 第9回帝展
屋嶋の義経 1929 絹本彩色・額装 188.6×98.7 ローマ日本美術展
後少将義孝 紙本彩色・軸装 36.0×66.0
右大臣実朝 1932 紙本彩色・額装 123.7×154.9 第13回帝展
矢表 1937 紙本彩色・六曲屏風一双 各163.5×368.6 第1回国画院展
後鳥羽院と神崎の遊女たち 紙本彩色・軸装 60.3×75.4

結城素明
題名 制作年 材質・形状 寸法(cm) 備考
蝦蟇仙人 1907 紙本彩色・軸装 158.0×90.3 東京博覧会
無花果 158.7×90.8 第1回文展
1911 紙本彩色・額装 143.5×77.7 第5回文展
老松図 紙本彩色・扇子
戒壇建立 1921 紙本彩色・軸装 56.9×87.2
殷其雷(詩経図のうち) 1922 絹本彩色・軸装 50.8×56.6 第4回帝展
山銜夕暉 1927 紙本彩色・額装 102.5×111.0 第8回帝展
絹本彩色・軸装 48.4×56.8
躑躅・百合 126.2×40.5
風景 1930 紙本彩色・額装 60.0×90.8
秋●清音 絹本彩色・軸装 146.6×51.0
春秋花鳥 紙本彩色・襖四面 各183.6×105.5
紫珠花鶏 1931 紙本彩色・額装 69.4×93.6 米国トレドー展
百花図巻 紙本彩色・巻子装 42.9×1,410.2
炭窯 1934 紙本彩色・額装 147.7×101.2 第15回帝展
紅白梅 43.4×51.4
1944 69.6×84.6
69.8×84.9

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みづゑ/No.870(1977年9月号)(佐々木静一)

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