シュルレアリスム展

 シュルレアリスムが抽象主義とともに今世紀における最も重要な芸術思潮であったことはいうまでもない。この思潮は、絵画観念の通俗的連想から、またすべての表現手段から解放し、潜在的な精神と視覚の非合理的指令に従った創造活動を可能にしたわけであるが、それは現代美術の表現領域を拡大するものであった。もちろん、これも1つの芸術思潮であるから今世紀になってはじめて現れたわけではなく、長い芸術的伝統の中に含まれていたものであったが、1924年のアンドレ・ブルトンによるシュルレアリスム宣言によって1つの運動としておしすすめられたのである。しかし、今やそれは運動としての時期を終えて、1つの思潮として現代美術館の中に底流しているといえよう。ブルトンの宣言以来既に50年になる現在、この運動は現代美術の1つの原点としてあらためて検討されるべき時期を迎えたと考えられる。しかしこれまでわが国ではこ思潮や運動の概要を組織的に紹介されたことがなかったので、このたびの展覧会が企画されたわけである。

 この展覧会では、ヨーロッパにおけるシュルレアリスム運動を概観できるように構成され、すべて1940年までに制作された典型的な作品が選ばれた。なお、ヨーロッパの影響を受けた日本におけるシュルレアリスム美術も併せて紹介し、その関連等について視覚的に対照できるように配慮された。また、会場の一部においてルイス・ブニュエル、サルバドール・ダリの「アンダルシアの犬」などのシュルレアリスム映画を上映するなど新しい試みもなされ、多くの人気を呼んだ。

 なお、この展覧会は東京国立近代美術館の本年度の特別展として企画されたものである。

会期
11月26日−51年1月11日
入場者数
総数16,287人(1日平均493人)
出品目録
作者名 題名 制作年 材質 寸法(cm) 備考
アルプ、ジャン(ハンス)1887〜1966 二つの頭 1929 着色した木(レリーフ) 120.0×99.7
星座 1932 29.6×33.1
五つの白い形と二つの黒い形の星座 ヴァリエイション2 70.1×85.1
レリーフ 1938〜39 49.5×49.8
ブルトン、アンドレ1896〜1966 卵形の教会(蛇) 1932 フォト・モンタージュ 18.0×11.0
自画像(自動記述) 1938 14.2×10.0
ブルトン、ジャックリーヌ 帰結のバー 1935 水彩・紙 22.3×16.5
デ・キリコ、ジョルジョ1888〜 福音書的静物 1916 油彩・キャンヴァス 80.5×71.4
ヘクトールとアンドロマケ 1917 90.0×60.0
ダリ、サルヴァドール1904〜 ガラの肖像 1935 32.4×26.7
白いなぎ 油彩・板 41.0×33.0
絶対的無を探究するアンプーダムの化学者 1936 30.0×52.0
象の影を映す白鳥 1937 油彩・キャンヴァス 51.0×77.5
ドミンゲス、オスカー1906〜1957 箱詰にされた女 1939 油彩・キャンヴァス 55.0×33.0
過ぎた手 1942 73.0×100.0
プリズム 1943 61.0×50.0  
デュシャン、マルセル1887〜1968 フレッシュ・ウイドウ 1920 フレンチ・ウインドウのミニチュア、木枠と皮でおおわれた8枚のガラス板 77.0×45.0 1964年のレプリカ
扉:ラリー街11番地 1927 デュシャンが1927〜42年に住んだパリのアパートの扉1964年のカラー写真 22.0×62.7
ジョルジュ・ユニエの詩集「サイコロの第7面」の表紙のための写真による習作 1936 カラー写真 30.0×39.8
デルヴォー風に 1942 錫箔と写真コラージュ・厚紙 34.0×34.0
エルンスト、マックス1891〜1976 女、老人と花 1923〜24 油彩・キャンヴァス 96.5×130.2
森と太陽 1925 フロッタージュ・紙 20.0×29.7
生の歓び 1936 油彩・キャンヴァス 72.7×91.5
妖精のこだま 46.3×55.2
草上の朝食 46.0×55.0
ジャコメッティ、アルベルト1901〜1966 匙の女 1926 ブロンズ 高さ120.0
1928 高さ39.2
ラム、ウィフレド1902〜 トーテムの像 1938 グワッシュ・紙 100.0×70.0
ねらわれた巣 1944 油彩・キャンヴァス 61.0×78.5
マグリット、ルネ1898〜1976 火につつまれた風景 1926 54.7×73.2
新聞をもつ男 1928 115.6×81.3
失われた世界 1929 73.0×60.0
マン、レイ1890〜1976 鳥かご 1919 水彩・紙 70.5×55.5
エクマ・バキア 1926 アサンブラージュ 高さ46.0 1970年のレプリカ
レイヨグラフ 1972 フォトグラム 29.5×23.7
破壊し得ないオブジェ 1933 アサンブラージュ 高さ22.5 1963年のレプリカ
万人の標的 66.0×51.0 1971年のレプリカ
オブジェ 1936 オブジェ 高さ12.0 1970年のレプリカ
魚座 1938 油彩・キャンヴァス 60.1×73.1
ロメオかジュリエット 1943 51.5×40.5
マッソン、アンドレ1896〜 小鳥と魚の戦い 1927 100.0×65.2
絵画と時間 1928 116.0×73.4
ゲーテ(植物の変様) 1940 73.0×116.0
給仕する女 1941 ブロンズ 高さ89.0
マッタ、ロベルト1912〜 1939 油彩・キャンヴァス 90.0×72.0
無題 1946 52.0×70.0
ミロ・ホアン1893〜 カーバイド・ランプ 1922〜23 31.8×45.7
麦の穂 37.8×46.0
赤い目の輝きにめくるめく燕 1925〜60 257.0×195.0
ペンローズ、ローランド1900〜 キャプテン・クック最後の航海 1936〜38 石膏、木、針金 高さ68.6
ヴァレンティーヌの肖像 1937 油彩・キャンヴァス 60.0×44.5
ピカビア、フランシス1879〜1953 女予言者 1924〜27 グワッシュ・紙 104.0×67.0
ヴィリカ・カヤ 1927〜28 油彩・キャンヴァス 150.0×180.0
ピカビア、フランシス スペイン内乱 1936〜37 油彩・キャンヴァス 172.0×140.0
タンギー、イヴ1900〜1955 朽ちた地平線 1928 100.4×73.1
過剰なリボン 1932 油彩・板 34.5×44.5
私はすでに今の歳になっていた 1939 油彩・キャンヴァス 43.2×35.5
日本におけるシュルレアリスム
作者名 題名 制作年 材質 寸法(cm) 備考
阿部展也(芳文)1913〜1971 妖精の距離 1937 詩画集 30.5×24.2
靉  光1907〜1946 眼のある風景 1938 油彩・キャンヴァス 102.0×193.5 第8回独立展
浅原清隆1915〜1945 郷愁 111.1×144.8 第1回創紀美術協会展
瑛  九1911〜1960 フォト・デッサン(その3) 1936 フォト・デッサン 30.0×25.3
フォト・デッサン(その4) 30.0×25.3
フォト・デッサン(その6) 1937 30.0×25.1
フォト・デッサン(その7) 28.5×22.3
作品(C) コラージュ 31.5×24.6
作品(D) 26.8×23.5
福沢一郎1898〜 poissond' Avril 1930 油彩・キャンヴァス 80.3×116.5
よき料理人 81.6×116.0 第1回独立展
恐るべき子供
無敵の力 81.0×116.5
科学美を盲目にする 130.0×162.0
浜田浜雄1915〜 ユパス 1939 52.0×64.0 第2回「絵画」展
飯田操朗1908〜1936 風景 1935 162.5×228.0 第5回独立展
北脇 昇1901〜1951 独活 1937 117.0×74.0 第7回独立展
暁相(観相学シリーズ) 1939 80.5×117.0
古賀春江1895〜1933 1929 117.9×74.0 第16回二科展
小牧源太郎1906〜 民族系譜学 1937 145.6×112.1
三岸好太郎1903〜1934 雲の上を飛ぶ蝶 1934 91.0×61.0
中原 実1893〜 魚の説 1938 88.56×129.5
岡本太郎1911〜 傷ましき腕 1936 111.5×162.3
杉全 直1914〜 1938 96.5×130.0
寺田政明1912〜 魔術の創造 129.5×161.5
矢崎博信1914〜1944 高原の幻影 128.0×160.0

新聞雑誌関係記事
京都 12月13日(藤 慶之)

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