実施報告
開館前の時間帯を使い、「円山応挙から近代京都画壇へ」を家族でゆったり鑑賞する一日限りのファミリープログラムを行いました。テーマは「いきものさがし」。当日は、小学生までの子どもとその家族28組が参加し、作品に登場するさまざまな生き物を見つけながら展覧会を楽しみました。
家族向けの鑑賞プログラムは、2016年10月の「キッズ・ナイト・ミュージアム」、2018年2月の「びじゅつかんでゴッホモーニング」に続き3回目。子どもたちには、本物の作品を間近で見る体験をしてもらいたい。そして大人の方には、お子さんと一緒にリラックスして美術館で過ごしてもらいたい――そうした思いから、これまで継続して実施しています。
この日、参加者は「たんけんのしおり」を手に展示会場をめぐりました。しおりには会場マップのほか、主要な4つの作品についての紹介とクイズが載っています。展示室ではインターン生がナビゲーターとなり、虎の姿は毛皮や骨を手掛かりに描いたということや、青色は石を砕いて作った顔料で描かれたことなど、作品についての説明をおこないました。
さらに今回は京都市動物園のご協力で坂本副園長にお越しいただき、「いきものトーク」を実施。円山応挙による墨画の孔雀図の前では、本物の羽を示しながら実際の孔雀の羽根の色についてのお話があったり、鹿が描かれた木島櫻谷の《しぐれ》の前では「オスとメスの違いはどこにあるでしょう?」「何歳くらいだと思う?」と問いかけたり。動物園の方ならではの切り口に、大人も子ども興味津々で聞き入りました。
また、親子で作品についていろいろと話をしながら見てもらえればと、「たんけんのしおり」には「心に残った作品はあったかな?」「家に飾るならどれ?」といった問いかけを載せていました。当日、参加された皆さんの様子を見ていると、むしろ動物園の方やスタッフから話を直接聞く方が鑑賞のポイントがつかみやすかったようでした。特に子どもたちはトークを聞き終えると、知っている動物を指さしながら自分から進んで作品に近づいていこうとする姿がありました。
当館のファミリープログラムでは、各自のペースや順路で展覧会をめぐってもらうことを歓迎しています。ですがその一方で、冒頭にほんの少しの方向づけがあると、その後の鑑賞がより豊かなものになるという可能性も感じました。
早朝からご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
(当館特定研究員 松山沙樹)