学習支援活動

近畿高等学校総合文化祭京都大会 美術・工芸部門
 第2回生徒運営委員会 ファシリテーター研修 実施報告


日時
2019年8月2日(金)午後1時〜4時30分

会場
京都国立近代美術館 1階ロビー、4階コレクション・ギャラリー

参加人数
高校1年生・2年生 15名、 引率 8名

活動の流れ
13:00〜 全体説明
13:20〜 導入・教員と研究員による鑑賞デモンストレーション
14:00〜 グループ分け、自己紹介
14:10〜 担当作品について下調べ
14:40〜 グループごとに鑑賞活動
15:30〜 振り返り
16:00〜 まとめの鑑賞…リチャード・ロング《京都の泥の円》(ロビー)
16:30  終了

 この秋、京都で10年ぶりに開催される「近畿高等学校総合文化祭」(近総文)。この近総文で、京都府下の高校の美術部等に所属する高校生たちが生徒運営委員となって、交流会(作品鑑賞会)を開催することになっています。本番では出品作品を前に生徒たち自身がファシリテーターを務めながら鑑賞会を行うということで、その予行演習として美術館での研修会の実施に協力しました。
 コレクション展にてファシリテーションする作品について調べた後に実際に鑑賞活動を行い、対話による鑑賞とはどのようなものか、またそこでのファシリテーターの役割は何であるか、体験を通じてじっくり学ぶ一日になりました。

近畿高等学校総合文化祭京都大会 美術・工芸部門 第2回生徒運営委員会 ファシリテーター研修 実施報告

担当作品について下調べ

 今回は、先生方と研究員が事前下見でピックアップしておいた4作品を鑑賞しました。生徒たちはまず、自分がファシリテーションする担当作品の前に行きその作品について下調べをします。およそ20分間、1つの作品と向き合いながら、作品のどこに着目してほしいか、どんな質問を投げかけると意見が出やすそうかなど、鑑賞のポイントやファシリテーションの進め方について検討しました。

近畿高等学校総合文化祭京都大会 美術・工芸部門 第2回生徒運営委員会 ファシリテーター研修 課題作品1:櫻井忠剛 銅器の花と布袋の置物
課題作品1:櫻井忠剛《銅器の花と布袋の置物》
近畿高等学校総合文化祭京都大会 美術・工芸部門 第2回生徒運営委員会 ファシリテーター研修 課題作品3:インゲル・パーション 花の陶彫
課題作品3:インゲル・パーション《花の陶彫》

グループごとに鑑賞活動

 下調べが終わると、グループごとにファシリテーター役と参加者役になり、いよいよ作品を前にしての鑑賞活動に挑戦です。
 ファシリテーターは、「まずは1分見てみてください。」「どんな感じがしますか?」「この部分についてはどう思いますか?」と本番さながらの様子で問いかけていきます。意見を引き出すだけでなく、ファシリテーターが自分の考えも語りながら新たな視点を示したり、予想していなかった反応に対しても落ち着いて受け入れながら対話を繋げようとしたりと、とても上手に交通整理役を果たせていると感じました。
 また先生方が各グループに付いて、「頷いてあげると意見を言いやすい雰囲気になるよ」「沈黙したら他の話題を振ってみよう」などと、ファシリテーションの具体的なアドバイスを出していたのもとても効果的だったと思います。

近畿高等学校総合文化祭京都大会 美術・工芸部門 第2回生徒運営委員会 ファシリテーター研修 課題作品2:有馬さとえ 愛らしき野の花
課題作品2:有馬さとえ《愛らしき野の花》
近畿高等学校総合文化祭京都大会 美術・工芸部門 第2回生徒運営委員会 ファシリテーター研修 課題作品4:小牧源太郎 花・シグナルNo.2
課題作品4:小牧源太郎《花・シグナルNo.2》

振り返り

 最後に、自分たちの鑑賞活動を客観的に振り返って「うまくできたところ(成果)」、「うまくできなかったところ(課題)」、「どうしたらいいか(解決策)」を書き出し、全員で共有しました。
 成果としては、「進行のイメージがつかめた」「先入観で意見を言うことを避けることができた」「問いを投げかけて考え方を広げられた」など、課題としては「意見をまとめることができなかった」「もっと気軽に意見を言える場にしたい」「意見が出やすいようにヒントを出すことができなかった」などが挙がっていました。

 今回、京都府高等学校文化連盟美術・工芸専門部の活動としては初めて作品鑑賞を重点的に取り上げた取組みだったとのことです。日頃は作品制作を主に行っているということでしたが、生徒の皆さんの様子を見ていると、長時間の研修にも関わらず退屈することなく最後まで楽しみながら、そして真剣に取り組んでいる様子がとても印象的でした。美術館で本物に出会ったときの喜びや驚き、時間をかけて作品と向き合うことで発見が増え理解が深まっていくことを体感してもらえたのではないかと思います。秋の近総文ではこの経験を生かして、ぜひ近畿の高校生たちに、鑑賞の楽しさについて伝えてもらえると嬉しいです。

(当館特定研究員 松山沙樹)



実施を振り返って

 この秋、10年ぶりに京都で開催される近畿高等学校総合文化祭(近総文)。生徒が運営委員として主体的に作り上げていくイベントです。作品展示の期間中予定されている交流会はどのようなものが良いのか検討を重ね、その中心に「鑑賞活動」を据えることにしました。京都ならではの伝統工芸体験など「表現活動」も候補にあがりましたが、近畿10府県を代表してやってくる生徒どうしが作者として自らの作品について語り合えること、迎え入れる京都府の生徒も出会いやコミュニケーションを通して成長できること、作品が展示されている空間だからこそできることを考え、グループでの作品鑑賞を計画しました。

 グループのファシリテーターを京都府下の美術部員に呼びかけたところ17名が手を挙げてくれました。まずは自分たちが鑑賞のおもしろさを知っている必要があります。そこで、京都国立近代美術館に相談したところ、研修の協力を快く引き受けてくださいました。コレクション展の作品を題材として使わせていただくだけでなく、作品の選定やプログラムの設計などの事前準備、当日のデモンストレーションや助言など学芸員の方に多岐に渡ってサポートしていただきました。そのおかげで参加した生徒にとって、また教員にとっても大変実りある体験となりました。普段の美術部は「表現活動」に重きを置いていますが、今回美術館という空間で本物の作品と向き合い、じっくりとその良さを味わうことで様々な気付きがありました。また気付いたこと、感じたことを言葉にして共有する楽しさや、人それぞれ多様な見方があることも学ぶことができました。生徒がこの学びを生かして「鑑賞活動」のおもしろさを伝え広げてくれるものと期待して、本番に向けた準備を進めたいと思います。この度は御協力いただき誠にありがとうございました。

(京都府高等学校文化連盟美術・工芸専門部/京都府立亀岡高等学校 上原悠介)



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