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実施報告 「生誕110年 東山魁夷展」日本画ワークショップ 『開いてびっくり!魁夷の世界』

 日本画の画材にふれて、東山魁夷の作品の世界をたっぷりと味わってみませんか?
このワークショップでは、日本画で使う画材(筆、岩絵の具、絵皿、紙や絹)について学んだあと、デカルコマニー(紙を折って絵具を転写させる技法)を駆使し、日本画材を用いた作品の制作にチャレンジします!画材の秘密を知ると、日本画の印象や見え方がガラッと変わるかも。子どもから大人まで、どなたでもお気軽にご参加いただけるプログラムです。

「生誕110年 東山魁夷展」日本画ワークショップ 『開いてびっくり!魁夷の世界』

日時 2018年9月15日(土) ①午前10時~12時、②午後2時~4時
※ いずれの回も、定員に達しましたので受付を終了しました。
対象 小学生以上、どなたでも
定員 ①、②ともに20名(事前申込制・先着順)
会場 京都国立近代美術館1階講堂
参加費 おひとり 1,000円
講師 三橋 卓氏(京都市立芸術大学講師、景聴園メンバー)
材料協力 株式会社吉祥、株式会社名村大成堂
申し込み方法 メールで
2018年8月29日(水)午前10時より受付を開始します。
※ おひとり1通のメールでお申し込みください
※ 参加の可否につきましては、後日ご連絡をいたします。
※ @ma7.momak.go.jpからのメールを受信できるように設定してください。
 (迷惑メール等の設定をされている方は、ご注意ください。)

申込メールアドレス:learning*ma7.momak.go.jp(*を@に変えてください)
申込メール件名:ワークショップ申し込み
記載事項:下記をコピーし、必要事項を書き加えてお申込みください。
—-ここから—-
氏名(ふりがな):
年齢:
性別:【男・女】
①と②どちらに参加希望か:【①午前の部・②午後の部】
連絡用メールアドレス:
携帯電話番号:
—-ここまで—-
申し込み締切 定員に達し次第終了とさせていただきます。※ 定員に達したため受付を終了しました。
【景聴園とは?】

景聴園(けいちょうえん)は、京都市立芸術大学で学んだ日本画グループです。五者五様の日本画との関わりを継いでいくことで「日本画とは何か」という問いへのアプローチを試みます。

【メンバーの主なプロフィール】
作家
三橋卓
1987年京都府生まれ。「日本的な表現」をテーマに,古事記や能,日本語の仕組みなどからも着想し,その日本的な作法を絵画として制作。個展「focus」(2017),「創画展」(2011年以降出品)。「京都市芸術新人賞」(2018),「創画展」創画会賞(2016),「第5回京都日本画新展」大賞(2013)。

上坂秀明
1988年大阪府生まれ。動植物の生態や、身近なもの、土地の物語などの関係性を見つめることで、「人が何を思うのか」を知るために制作。個展「time out」(2017),星野眞吾大賞展(2017),グループ展多数。「第4回続日本画新展」大賞。

服部しほり
1988年京都府生まれ。自らに内在する靄を紐解き、生活に育まれた日本美や人の洒脱な有様を『オッサン』に乗せ展開する。古典技法を活かした墨線の映える日本画を目指す。「日本画の逆襲」岐阜県美術館(2017),「琳派コードを巡って」京都市美術館(2016),蔵丘洞画廊・田口美術・秋華洞にて個展多数。

合田徹郎
1988年大阪府生まれ。写生の際に生じる「眼ーーこの土地に蓄積され、身体化された歴史ーー場所」の関係をテーマに作品を制作。主に山中や座る人を描く。「第4回続京都日本画新展」(2017),「シェル美術賞展」(2016)。「京都市立芸術大学作品展」同窓会賞(2014)。

松平莉奈
1989年兵庫県生まれ。「他者について想像すること」をテーマに、人物画を中心に絵画を制作。エピックレコードジャパンとエージェント契約。東山魁夷記念日経日本画大賞展(2018),個展「insider-out」第一生命ギャラリー (2017)。「京都市芸術新人賞」(2017), 「VOCA展」佳作賞(2015)。

アートディレクション/デザイン
乃村拓郎
1986年大阪府生まれ。大学院の彫刻専攻を修了。文化財保存事業に係る傍ら作家活動を行う。日本における近世以前の文化形態を検証し現代に接続、思考を展開する。「other side」GALLERY 301 (2017) ,「ART1 2016」 ARTCOURT Gallery (2016),「On」the three konohana(2015)など。

アーカイブ/テキスト
古田理子
1991年京都府生まれ。大学院の芸術学専攻を修了。在籍中に明治後期を中心とした京都画壇の研究に取組む。京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA学芸補佐(2013),京都国立近代美術館キュレトリアルインターン(2014)。京都市立芸術大学作品展 学内企画展「明治期の卒業制作を読み解く─知られざる日本画奮闘記─」(2016)企画。京都市立芸術大学作品展大学院市長賞(2016)。

実施報告


 日本画の画材に親しみながら、東山魁夷の作品への理解を深めるワークショップを開催しました。今回は、日本画家の三橋卓さんと景聴園(けいちょうえん)の作家の皆さんに講師としてご協力いただき、参加者はデカルコマニーの技法を用いて作品を製作しました。

 まずは、日本画の簡単な歴史と画材についてのレクチャーからスタートです。東山魁夷が多用した「あお」の原料である孔雀石や、白色の原料となる貝殻などを特別にご用意いただき、参加者は手にとって、顔料の色の微妙な違いなどを体験しました。

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 お話の後は、絵皿の中で顔料と膠を混ぜて指で練りながら、実際に絵具を作っていきます。顔料のざらざらした触感や、だんだんと柔らかくなっていく感覚に、皆さん興味深々。続いて、できあがった絵具に水を含ませてデカルコマニーを行いました。半分に折った紙の片側に自由に色を置いていき、パタンと折って広げます。水の量や紙を広げる時の角度や早さによって現れる色や模様がさまざまで、皆さん枚数を重ねるごとに工夫を凝らしていました。

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 ここで一旦手を止めて、ふたたび三橋さんのお話に耳を傾けます。前には、水面に映り込んだ風景が印象的な、東山魁夷の《緑響く》がスライドで映されました。そして、「皆さんの作品と東山魁夷の作品に、なにか共通点はありませんか…?」と問いかけが。

風景

 自分の作品と東山魁夷の風景画をじっくりと見比べます。すると、不思議な色や形が集まった「何だかよく分からない抽象絵画のよう」と思っていた絵が、まるで水面に映った”魁夷の世界”のように見えてきました。実は、ここが今回のワークショップの肝。ほんの少しのきっかけで自分の作品の見え方がガラッと変わるとともに、魁夷の作品への親近感が一気に湧いた瞬間でした。

 ここからの活動は、「見立てる」をテーマに進みました。参加者は、デカルコマニーの作品をじっくり鑑賞し、何かしらの場面や風景になぞらえてみます。そして東山魁夷の作品に倣って、「馬」など思い思いのモチーフを描き込んでいきました。

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 当館では、展覧会の内容を分かりやすく紹介したり、違う視点から作品を味わうために、ギャラリーツアーやワークショップなど様々な形態で教育普及プログラムを実施しています。「東山魁夷展」には、色の微妙なグラデーションや絵具の塗り重ねなど、間近で鑑賞してこそ味わえる魅力がある作品が多く展示していました。そのため、今回のように画材や顔料を実際に体験することは、表現の幅を広げること以上に、豊かな作品鑑賞を行う上での大きな手助けになったことと思います。ねらいに応じた「切り口」を検討することの重要性が明らかになったワークショップでした。

(当館特定研究員 松山沙樹)

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