教育普及「オーダーメイド:それぞれの展覧会」キッズプログラム
ワークショップ『キミも学芸員!? 展覧会を作ってみよう』 実施報告
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「オーダーメイド:それぞれの展覧会」キッズプログラム
ワークショップ『キミも学芸員!? 展覧会を作ってみよう』 実施報告
- 日時
- 2016年4月29日(金・祝)午後2時~4時
5月14日(土)午後2時~4時 - 会場
- 京都国立近代美術館 1階講堂、3階企画展示室
- 参加人数
- 4月29日:10名
5月14日:7名 - ナビゲーター
- 牧口千夏(当館主任研究員)
松山沙樹(当館特定研究員)
今回の企画展は、副題に「Curate Your Own Exhibition」とあるように、鑑賞者自身が作品どうしの関係を見つけながら物語を紡いでいく体験型の展覧会です。このことにちなんで、小学4年生から中学3年生を対象に、「オーダーメイド」展から1点を選び鑑賞した後、作品カードを使って作品どうしの関係を展覧会として表現するワークショップを行いました。
はじめに「オーダーメイド」展の担当研究員が今回の展覧会を例に、展覧会の準備のプロセスを具体的に説明しました。そして、本展では11のキーワードのもとに作品をゆるやかにグループ分けしていること、また、隣にどのような作品を置くかによって作品の見え方が大きく変わることを意識して、作品の並べ順にも工夫を凝らしたことを紹介しました。
そして、ワークショップの最後に展覧会を作ることを伝え、その下準備として、「オーダーメイド」展の出品作品を1枚ずつ印刷したカードとワークシートを用いて、次の活動を行いました。
①作品カードの中から、気になった作品を1点選ぶ
②展覧会会場で実際に作品を鑑賞し、気づいたことや感じたことを書きとめる
③その作品と「つながり」のある作品を探し、どんな「つながり」があるかメモする
作品のさまざまな結び付きを考えてほしいという思いから、ナビゲーターは、作品の関係性を表す際に「似ている」「共通点がある」「正反対のもの」という具体的な表現は避け、「つながり」という言葉を一貫して用いました。参加者は、作品とじっくり向き合って観察を深め、また作品の結びつきを考えながら積極的に歩き回り、次々にメモを取っていきます。
展覧会会場での活動の次は、1階ロビーの白い壁に「つながり」を意識しながら作品カードを貼って自分たちの展覧会を作っていきます。最初は各自がワークシートに記録してきた情報を元に、①で選んだ作品カードの周りに③でメモした作品のカードを貼りました。この作業が済んだら、他の作品の中から結びつくと感じた作品のカードをさらに繋げて貼っていき、展示の幅を広げていきます。さらに見る人に「つながり」が分かりやすく伝わるよう、作品カードどうしを色テープで繋いだり、「体」「部屋」「せいひん(製品)のつながり」など、展示テーマを書きこんだパネルを掲示しました。
最後に各自が立てたテーマとその展示について発表してもらい、それぞれが作り上げた展覧会を鑑賞しました。参加者が見つけた「つながり」は、色や形が同じといった造形的な類似性だけでなく、「意外性のある作品」といった作品から受ける印象が同じものどうしなどさまざまでした。ワークショップで出来上がった「展覧会」の一部を紹介します。
タイトル:「青」
- 作品:
- レオン・バクスト《バレエ・リュス《クレオパトラ》バッカナーレのための衣装:原画》
- アンリ・マティス《鏡の前の青いドレス》
- カレン・ノール《目利きの世界:想像の愉しみ》
- トーマス・シュトゥルート《ルーヴル美術館4、パリ》
- ラウル・デュフィ《静物》
- 都築響一《着倒れ方丈記:ズッカ》
- マルセル・デュシャン《フレッシュ・ウィドウ》
- クシシュトフ・ヴォディチコ《もし不審なものを見かけたら……》
タイトル:「少し違う?」
- 作品:
- ロバート・アーネソン《受け皿に沈んでゆくカップ》
- ロバート・カミング《ブラスト・シークエンス》
- マルセル・デュシャン《罠》
- 八木一夫《距離》
- 森村泰昌《森村千円札》
- 赤瀬川源平《大日本零円札》
- 太田三郎《The 1,000-Yen Definitive Stamp》
- 澤田知子《ID400》
タイトル:「物憂げな女性と空間」
- 作品:
- カレン・ノール《目利きの世界:古くさいシンメトリーの夢を粉砕する》
- 安井曽太郎《婦人像》
- 野島康三《細川ちか子》
- アンリ・マティス《鏡の前の青いドレス》
- 都築響一《着倒れ方丈記:マルタン・マルジェラ》
- 都築響一《着倒れ方丈記:ズッカ》
- やなぎみわ《Fortunetelling》
タイトル:「~箱~ ○○の中は…」
- 作品:
- 八木一夫《白い箱 OPEN OPEN》
- クシシュトフ・ヴォディチコ《もし不審なものを見かけたら……》
- ウィリアム・ウェグマン 《ABC》
- マルセル・デュシャン《ローズ・セラヴィよ、なぜくしゃみをしない》
- マルセル・デュシャン《三つの停止原器》
今回のワークショップを通して、展覧会は、作品を組み合わせ並べてストーリーを伝えるものだということを知ってもらいました。また、自分なりの視点を持って作品を関連づけながら見ることで、1つの展覧会から異なるストーリーが生まれていく面白さも体感してもらえたと思います。今後、展覧会に足を運んだ際には「なぜこの2つが隣同士に展示されているのだろう」、「自分ならこの作品とこの作品を一緒に並べてみたい」などと考えながら、自分なりの鑑賞のスタイルを見つけていってほしいと思います。
なお、完成した展覧会は会期中(5月22日まで)当館1階ロビーで公開しています。
(当館特定研究員 松山沙樹)
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