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コレクション展平成28年度 第3回コレクション展(計155点)

コレクション・ギャラリー

平成28年度 第3回コレクション展(計155点)

会期

2016(平成28)年7月27日(水)~ 9月19日(月・祝)

概説

 今年度第3回目のコレクション展では、昨年度の新収蔵作品の紹介や3階の企画展「あの時みんな熱かった!アンフォルメルと日本の美術」に関連した展示、そしてキュレトリアル・スタディズを行っています。

 昨年度当館は「ウィーン世紀末のグラフィック」コレクションを収蔵しました。雑誌や書籍、そのイラストの原画や版画作品など約300件を含む本コレクションは、1890年代から1910年代のウィーンで求められた視覚文化を今に伝える貴重な作品・資料群です。コレクション全体のお披露目は2018年度を予定していますが、今回はその中から、グスタフ・クリムト、オスカー・ココシュカそしてエゴン・シーレの素描・版画をご紹介します。特にクリムトの素描のほとんどは、ウィーン大学大広間の天井画として制作された学科絵《哲学》《医学》《法学》のためのスケッチです。この学科絵は、そこに用いられた図像の特殊性から大学に受け取りを拒否され、大広間に設置されることはありませんでした。作品は、ウィーン分離派展や1900年のパリ万博で展示されて世間の耳目を集めたものの、不幸なことに第二次世界大戦中に焼失しています。そのため、残された数多くのスケッチは、今なお謎めいた図像の意味を研究する上で、極めて貴重な資料となっています。

クリムト《右向きの浮遊する男性裸像(ウィーン大学大広間天井画《哲学》のための習作》1897-99年
クリムト《右向きの浮遊する男性裸像
(ウィーン大学大広間天井画《哲学》のための習作)》
1897-99年

  日本画のセクションでは、特別展「あの時みんな熱かった!」出品作家である日本画家たちの、「熱かった」時代以前そして以後の作品をご紹介しています。例えば、パリでも活躍した堂本尚郎の日本画家としての仕事や、不動茂弥や大野俶嵩、野村耕といったパンリアル美術協会の作家たち 、そして中でも伝統的な四条派から抽象絵画へと大きく変貌を遂げる堂本印象の作品にご注目ください。

 洋画のセクションでは、芸術活動において、そして社会全体としても「熱かった」もうひとつの時代、大正時代の絵画を特集しています。この時代画家たちは、西洋から学んだ油彩画の技術を用いて日本独自の絵画を創造するべく奮闘していました。また同時に、キュビスムやフォーヴィスムといった同時代の西欧における新しい美術の動向も貪欲に取り入れようとしていたことも、石垣栄太郎《鞭うつ》や里見勝蔵《渓谷の春》などの作品からわかります。

石垣栄太郎《鞭うつ》1925年
石垣栄太郎《鞭うつ》1925年

 写真のセクションでは、E・ユージン・スミスの「水俣」シリーズを展示しています。世界的写真家集団マグナム・フォトの一員であったユージン・スミスは、1971年から74年にかけて水俣に住み、チッソが引き起こした廃液による水銀汚染の実態を撮影しました。「真っ暗闇のような黒とまっさらな白」の対比が特徴的なその写真は、1975年に写真集『MINAMATA』として刊行され、世界的な反響を呼び起こします。今回の展示が、水俣を含め今日もなお全面解決には至っていない様々な公害問題について、改めて思いを馳せるきっかけになれば幸いです。

 工芸のセクションでは、「涼をたのしむ」と題して、主題から涼が感じられる染織作品と、見た目も涼やかなガラス作品を展示しています。また、陶芸についても、所蔵作品から青磁そして青白磁の作品を特に選んで紹介しています。一口に青磁と言っても、その爽やかな水色には無限のバリエーションがあります。暑い夏、ひとときの避暑気分を工芸作品とともにお楽しみ下さい。

五代清水六兵衞《青磁柘榴花瓶》1930年
五代 清水六兵衞《青磁柘榴花瓶》1930年

 天窓のある展示室では、「キュレトリアル・スタディズ11:七彩に集まった作家たち」と題して、京都にあるマネキン製作会社「七彩」の初代社長で彫刻家の向井良吉とその周辺に集まった人々によって、「火の芸術の会」と称して展開された「熱い」活動をご紹介しています。向井良吉が1950年に製作した初期のドラマティックなマネキンに始まり、歴代のマネキンを、展示室内だけではなく、館内のパブリックスペースのあちらこちらに設置していますのでコレクション展と併せてご鑑賞下さい。

主なテーマ

  • キュレトリアル・スタディズ11:七彩に集った作家たち
  • クリムト、シーレ、ココシュカ ― 新収蔵品から
  • 「あの時みんな熱かった! アンフォルメルと日本の美術」展の作家たち
  • 《水俣》シリーズ
  • 涼をたのしむ――近現代のガラスと染織
  • 青磁、青白磁の世界
  • 大正期の絵画
  • 常設屋外彫刻

展示作品


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