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コレクション展平成27年度 第5回コレクション展(計163点)

コレクション・ギャラリー

平成27年度 第5回コレクション展(計163点)

会期
2016(平成28)年1月27日(水)~ 3月21日(月・祝)

概説

 京都国立近代美術館では、2013(平成25)年の開館50周年にあわせて、今年で建設30年目となる美術館建物の整備を行ってきました。そのため、ここ5年間ほど毎冬工事休館を余儀なくされ、来館者のみなさまに多大なるご不便をおかけいたしました。このたびの工事では、3・4階展示室の展示ケース内照明をすべてLEDに変更し、照度や色温度にムラのない、より均一な光による照明を実現しました。作品の細部や質感が視覚的により捉えやすくなった、ケース内での展示をお楽しみ下さい。来年度は、最後の工事として講堂の音響システムの改良を予定していますが、休館はしないため、ようやく通年でコレクション展をお楽しみいただけるようになります。

 今年度最後のコレクション展では、「キュレトリアル・スタディズ10」と3階企画展示室で同時期に開催する「志村ふくみ」展の関連展示などを行っています。
 第10回目となる「キュレトリアル・スタディズ」では、写真技術の先駆者でカロタイプと呼ばれる写真技術を発明し、さらには政治家・考古学者・語源学者でもあったイギリス人ヘンリー・F・トルボットの著書『自然の鉛筆』を紹介しています。写真技術という19世紀半ばに生まれた新たな複製技術が、当時から現代にいたるまで提起してきた論点を、トルボットの言葉と作品を拠り所に、当館所蔵作品と館外からの借用作品によって多角的に検討します。
 3階企画展で、その創作の全貌が紹介されている染織家・志村ふくみは、民藝運動に共鳴していた母から染織の手ほどきを受け制作を始めました。「母衣(ぼろ)への回帰」という副題が明示するように、その出発点は、今もこれからの志村にとっても、極めて重要です。そこで工芸のセクションでは、「〈用の美〉を想う―民藝の作家たち」と題し、志村の創作の原点でもある民藝運動を担った作家たち、黒田辰秋、河井寛次郎、浜田庄司、富本憲吉、芹沢銈介、棟方志功らの代表的作品群を紹介しています。

    芹沢銈介《型絵染鯛文着物》1968年
    芹沢銈介《型絵染鯛文着物》1968年

 また同じく志村ふくみ展に関連して、「特集展示:テキスタイルとアート―ボーダーレスな可能性」を行っています。「あらゆる芸術は(…)テキスタイル・アートから類型や象徴を借用している」「テキスタイルは原芸術(Urkunst)と見なされる」、という19世紀ドイツの建築家ゴットフリート・ゼンパーの言葉を手がかりに、テキスタイルの造形的側面と意味論的側面に注目し、テキスタイル作品をほかのジャンルの作品と並置することで、テキスタイルが包摂するさまざまな論点を明らかにする試みです。

      ピエト・モンドリアン《コンポジション》1916年頃
   ピエト・モンドリアン《コンポジション》1916年頃

 ほかに日本画のセクションでは、「冬の日本画」と題し、身近な冬の情景を描いた作品を展示しています。中でも二曲一隻の屏風4点を組み合わせ1枚の絵画のように仕立てた小松均の大作《雪の最上川》は、雪原をゆったりと川が蛇行するさまが描かれ、その雄大さには圧倒されるばかりです。出品作の多くに雪が描かれていますが、冬の乾いた晴れの日を描いた村上華岳の晩年の代表作《冬ばれの山》や、入江波光の滞欧作《南欧の冬》にもご注目ください。洋画のセクションでは、ともに戦中から前衛的な独自の画風を切り開いてきた京都出身の画家伊藤久三郎と小牧源太郎の作品を紹介しています。

  村上華岳《冬ばれの山》1934年  入江波光《南欧の冬》1923-26年
  村上華岳《冬ばれの山》1934年              入江波光《南欧の冬》1923-26年

 「キュレトリアル・スタディズ10」の最後に展示されているのは、畠山直哉による震災後の陸前高田を写した作品群です。それらは静かに、「自然」を記録し記憶を複製する意味を私たちに語りかけてくれます。今回、コレクション・ギャラリー入口すぐの場所には、第二次世界大戦中のゲルニカ空爆の翌年に描かれたピカソの作品、そして1986(昭和61)年に起こったチェルノブイリ原発事故の衝撃から生み出された鯉江良二の「焼き物」を展示しました。日本画セクションの小松均《雪の最上川》とあわせて、これらの作品群が、発生から今年で5年目になる東日本大震災に思いを馳せ、これからの日本さらには世界の将来を考えるきっかけとなれば幸いです。

主なテーマ
キュレトリアル・スタディズ10
写真の〈原点〉再考――ヘンリー・F・トルボット『自然の鉛筆』から
冬の日本画
特集展示 テキスタイルとアート ――ボーダーレスな可能性
「用の美」を想う―民藝の作家たち
京都の前衛画家 小牧源太郎と伊藤久三郎
常設屋外彫刻

展示作品
平成27年度 第5回コレクション展 展示目録

NHK「日曜美術館」40年記念キャンペーンへの参加について

NHK40 本展会場では、「日曜美術館」の放送開始40年を記念した、NHK「みつけよう、美」キャンペーンの一環として、〈「用の美」を想うー民藝の作家たち〉のコーナーで、流し掛けをする浜田庄司、工房で制作する芹沢銈介、「最上川」シリーズや「大原」シリーズを制作する小松均の映像を上映しています。

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