アメリカ西海岸の写真家たち

期間
2012年8月29日(水)〜10月28日(日)
展示作品
アメリカ西海岸の写真家たち 展示目録

 今回の特集展示では、1932年にサンフランシスコに発足した写真集団「グループf.64」とその周辺、またそれ以降に活躍したアメリカ西海岸の写真家たちを紹介します。

グループの中心人物であるエドワード・ウェストン(Edward WESTON 1886-1958)は、当時の多くの写真家がそうであったように、初期は甘いソフトフォーカス表現を得意とする絵画主義傾向の強い職業写真家としてその名を馳せていました。しかし一方で、カメラ本来の性能を活かした写真表現に目覚め、次第に対象の実在感と造形美に眼を向けるようになります。ウェストンは、近景から遠景までを一度に見渡すことができるようレンズの絞り値を最小値(f.64)に設定し、自然の風景や人物、静物をシャープなピントで正確に捉え、カメラによるリアリズムを追求してゆきます。グループf.64の名前はウェストンが撮影の際に選んだレンズの絞り値(f.64)に由来します。

 グループf.64は発足時、ウェストンと共に、イモジェン・カニンガム(Imogen CUNNINGHAM 1883-1976)、アンセル・アダムス(Ansel ADAMS 1902-1984)、ソニア・ノスコゥヤック(Sonya NOSKOWIAK 1900-1975)、ウィラード・ヴァン・ダイク(Willard VAN DYKE 1906-1986)、ジョン・ポール・エドワーズ(John Paul EDWARDS 1884-1968)、コンスエロ・カネガ(Consuelo KANAGA(1894-1978)、ヘンリー・スイフト(Henry SWIFT 1891-1962)の8名、のちにプレストン・ホルダー(Preston HOLDER 1907-1980)、アルマ・レビンソン(Alma LAVENSON 1897- 1989)、ブレット・ウェストン(Brett WESTON 1911-1993)3名が名を連ねました。

とりわけイモジェン・カニンガムの、モチーフがもつ形態の特徴を鋭く捉えて表現する技術は、グループの中でも群を抜いていました。またアンセル・アダムスは、対象の魅力を引き出す卓越した技術と感性を備え、後進世代の指導にも積極的に携わり影響力をもった点において特筆すべき存在と言えるでしょう。

 奇しくもこの3人には興味深い共通点があります。写真家たちの回想によると、近代写真の生みの親として名高いアルフレッド・スティーグリッツ(Alfred STIEGLITZ 1864-1946)やポール・ストランド(Paul STRAND 1890-1976)との出会いが、それぞれの写真論や作画手法の形成において重要な意味をもったといいます。グループf.64の活動期間は1935年までの4年弱と非常に短かったものの、スティーグリッツらが確立した「ストレート・フォトグラフィ」という近代写真の方向性を引き継ぎ発展させた点で、彼らが以後の写真界に与えた影響力の大きさは計り知れないものがあります。

西海岸の写真家たちの作風に共通点を挙げるとするならば、被写体の存在そのものを写真に表すことを目的としたが故に、それらが持つ意味や概念を超えて、すべてが等価であることを浮き彫りにするということでしょう。ふと思い浮かぶのはアルフレッド・スティーグリッツが雲を撮ったシリーズを『等価(Equivalent)』と名付けていたこと。等価という意味において彼らの写真論は根底で繋がっていたのではないかと思えます。

林 直(当館客員研究員)


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