コレクション・ギャラリー

平成19年度 第5回コレクション・ギャラリー(計123点)

期間
平成19年9月21日(金)〜11月11日(日)
※最終日を変更いたしました

主なテーマ
【小企画】 ヨーロッパ、アメリカの工芸
【特集展示】ギャラリー・ラボ2007―鑑賞空間の合意に向けて
【日本画】 秋
【写 真】 ポール・ストランド特集/写真の中の動物
【洋 画】 現代絵画

展示作品
平成19年度 第5回コレクション・ギャラリー 展示目録

1F会場
イチハラヒロコ+箭内新一「プレイルーム。」

写真 「ポール・ストランド特集/写真の中の動物」

ポール・ストランド特集

ポール・ストランド(Paul Strand 1890-1976)について語るとき、二人の写真家との出会いを抜きにすることは出来ないでしょう。ニューヨークに生まれたストランドは14歳で倫理文化学校(エシカル・カルチャー・スクール)に入学、ここで理科教師を務めていた社会学者ルイス・W.ハイン(Lewis W. Hine 1874-1940)から写真を学びました。ハインは当時からニューヨーク郊外に流れ込んでくる移民や工場で働く子供など、社会的な問題を告発する写真を撮り続け、後にドキュメンタリー写真(特にフォト・ストーリー)の先駆者として名を残すことになります。一方この頃、ストランドはハインの紹介でアルフレッド・スティーグリッツ(Alfred Stieglitz 1864-1946)が主宰していた「ギャラリー291」を訪れ、そこで開かれていたフォト・セセッション(写真分離派)の展覧を見たことをきっかけに写真家を志します。フォト・セセッションは1902年にスティーグリッツが中心になり結成された団体で、当時、絵画的傾向の強かった写真に対して写真独自の芸術性をすすめる動きをしていました。ギャラリー291やスティーグリッツが主宰していた写真季刊誌『カメラ・ワーク』の活動の方向性は、やがて20世紀のアメリカ近代写真の基盤となっていきます。1912年に商業写真家として自立したストランドは写真の激動の時代を肌に感じながら、大胆な構図とリアリズムに満ちた眼差しで、ニューヨークの街並みや人々を写真に収めました。これらの写真は『カメラ・ワーク』の最終号に特集され、ストランドの写真は一躍脚光を浴びることになります。『カメラ・ワーク』は1903年から1917年まで刊行されたフォト・セセッションの機関誌であり、フォトグラビアによる美しい図版と辛辣な評論によって構成されています。その後ストランドは、1930年から32年にかけてメキシコを撮影旅行した写真をまとめ『メキシカン・ポートフォリオ』として発表しました。続いてスペイン、ニューイングランド、フランス、イタリア、エジプト、ガーナなどを取材し、写真集を出版。1951年以降はフランスに移住、晩年まで農村の風景や生活を撮影しました。

写真の中の動物

約170年近くの写真史上を振り返ると、既にありとあらゆる被写体が撮影され、その方法や扱い、さらには解釈の仕方も多種多様です。ウィリアム・ウェッグマン(William Wegman 1943-)は被写体の犬を役者のように写真の中で演じさせ、ユーモアに満ちた作品を成り立たせています。オリヴィエ・リション(Olivier Richon 1965-)の場合、複数の写真を合成し、現実には有り得ない情景を創り出し、美術史や「視覚」の歴史について、含蓄に富んだ物語を紡ぎ出します。ウェグマンとリションは、1980年以降の、「近代写真以後の写真」(いわゆるポストモダン・フォトグラフィーの動向の中に位置付けられる写真家です)。動物を撮った写真が世の中に溢れるほどある中でこのような扱いをした写真は意外に珍しく、滑稽な印象と同時に、人間への風刺や美術への批評をはらむ強いメッセージを感じさせます。

一般的に美術館では、大人の目線の高さ(145−150cm)で作品を展示しますが、今回この空間では、一部を子供の目線(100cm)で展示しています。大人の目線、子供の目線をお楽しみ下さい。

(学芸課客員研究員・林 直)


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