コレクション・ギャラリー

平成18年度 第1回コレクション・ギャラリー(計167点)

期間
平成18年4月7日(金)〜5月21日(日)
テーマ
1920年代・日本の美術
展示作品
平成18年度 第1回コレクション・ギャラリー 展示目録

 平成18年度第1回のコレクション・ギャラリーでは、当館が所蔵する洋画・日本画・写真・版画・工芸の各ジャンルから、特にわが国「1920年代」の美術動向を特徴づけると思われる作品を選んでご紹介します。今後も、このコレクション・ギャラリーでは、作品のジャンルを横断した総合的なテーマを設定し、新たな展示を探りたいと思います。

 今回の特集展示では、大きく次の3つのコーナーに分かれます。
 「I. 京都の1920年代洋画」、日本画・洋画・写真など作品を集めた「II. 日本の1920年代」、当館のコレクションで大きな柱を形成する「III. 工芸」など、3つのコーナーによる構成です。限られた作品・資料による展示ですが、これら当館のコレクションによって、わが国「1920年代モダニズム」の時代の一端を紹介いたします。
 また同時に、日本画や長谷川潔・川西英の版画のほか、わが国の美術館で唯一のピエト・モンドリアンのコレクションをはじめ、海外の近代美術などもあわせて展示しています。

I. 京都の1920年代洋画
 よく知られているように京都の洋画界は、1860年代に登場した田村宗立(1846–1918)による写実への追求からその第一歩が記されました。その後、1900年のパリ万国博覧会を視察し、このフランス留学時に西欧の「洋画」表現の真髄を吸収して、油彩のみならず水彩画にもすぐれた才能を発揮した浅井忠の京都への移住によって、京都の洋画界の動きが本格化します。浅井は、すでにフランス滞在でアール・ヌーヴォーの影響を受け、図案作品にもすぐれた手腕を示していましたが、いわばこの「モダン」な感覚が、その後、大正時代を迎えて結成された二科会の新たな表現を求める動向にも連なり、やがて独立美術協会などとともに、わが国の「前衛」表現が芽生える温床となっていたことも見逃せません。それが大正から昭和初期にかけての 「1920年代」モダニズムの大きなうねりの形成となりました。
 京都の洋画界でも、二科会の安井曾太郎や黒田重太郎、川端弥之助、向井潤吉をはじめ、数多くの洋画家たちが、セザンヌなどの影響を受けながら、個性豊かな作品を残しています。さらに、独立美術協会の里見勝蔵らによるキュビスムやフォーヴィスムの表現の摂取や、主題内容においても、プロレタリア運動など、当時の思想的側面を強調した津田清楓らによって、「モダニズム」という独特の時代気分の漂う独自の造形表現が試みられてゆきました。

II. 日本の1920年代
 このコーナーでは、さらにわが国の「1920年代」の動向に照準を合わせ、館所蔵品や寄託品などによって、「1920年代」の時代気分の一端を再現いたします。
 すでに「I. 京都の1920年代洋画」でも紹介したように、二科や独立美術といった在野の新たな美術団体が、わが国の「モダニズム」表現を追求する大きな原動力となっていました。たとえば近年当館に、総本山知恩院から寄託された古賀春江の《埋葬》(1922年)は、第9回二科展に初入選し二科賞を受賞した記念すべきデビュー作であり、古賀はやがて中川紀元などとともに前衛集団「アクション」に参加し、わが国「1920年代モダニズム」のもっとも典型的な表現様式である「前衛」の代表作家となりました。
 当館では、こうしたわが国「前衛」動向を代表する村山知義(1901–1977)の代表作《サデスティッシュな空間》(1921–22)や普門 暁(1896–1972)の作品なども収蔵し、これら両者の作品は、当館のコレクション・ギャラリーで多くの機会をとらえて展示しています。現在、東京の森美術館で開催の「東京−ベルリン ベルリン−東京」展(5月7日まで開催、その後ベルリンに巡回)に出品されているため、これらの作品は、今回のコレクション・ギャラリーには加えていませんが、当館は「近代美術館」として、戦前の「前衛」動向にも強い関心を寄せています。同時に、村山が主宰した雑誌『マヴォ』(1924年)ほか、1920年代から30年代にかけての「前衛」関係の資料などについても、積極的に収集しています。さらに、関西という地域性をふまえ、たとえば、戦後「具体美術協会」のリーダーとして国際的な評価を得ている吉原治良の貴重な初期作品をはじめ、その他恩地孝四郎の版画や雑誌『柳屋』など、「1920年代」を特徴づける資料類の収集にも力を入れています。
 また、戦前からアメリカで活躍した石垣栄太郎(5月23日より公開)の《鞭打つ》(1925年)は、未亡人の石垣綾子氏からご寄贈いただいた作品で、当館にとっても、洋画収蔵の第1号となる記念すべき作品です。《鞭打つ》は、背景の工場の描写など、「1920年代」を特徴づける「都市」的表現の典型といえますが、一方、わが国近代都市成立の原点ともいうべき阪神間モダニズムの、その「都市」的気分の体現者のひとりが、小出楢重にほかなりません。小出は数多くの随筆を残したことでも知られ、谷崎潤一郎の小説の挿し絵も描きましたが、小出らが中心となって編集した雑誌『マロニヱ』(1925年)には、村山知義をはじめ、萬鐵五郎らの「前衛」画家たちも寄稿し、作品図版が掲載されていることも見逃せないでしょう。その意味で、雑誌『マロニヱ』をとおした作家同士の交流にも、「1920年代」の時代気分が投影されています。さらに今回は、大正の時代気分を端的に示す数多くの当館の日本画コレクションからも、5点の作品を選びました。

 このほか、当館の写真コレクションの核をなす野島康三の肖像を中心とする作品群を加え、「III.工芸」では、その野島とも交流した富本憲吉ら、1920年から30年にかけての、多様な技法による作品群も合わせて展示するなど、今回の特集展示では、「1920年代モダニズム」のジャンルを超えた表現世界を紹介しています。



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